■File.1 「シグレのノート 1」
トバリからもらったノートに自分が必要だと思う情報をまとめることにした。ぼくの身の回りで起こった出来事を記録していくことにも使おうと思う。ペンをにぎることが久しぶりで、うまく文字が書けないことが悔しい。だけどあきらめずに続けたいと思う。
今日は一番に知りたい「燦然世代」について勉強をした。ぼくはこの組織名ですら、資料をもらうまでどういう風に書けばいいのかすら知らなかった。セントラルエリアに入らなければ、存在すら知らなかった都市が抱える秘密であり、お父さんとお母さんが死んだのもこいつらのせいだ。みんながずっと追っていた敵であり、ヨシミツさんを殺した犯人でもある。ぼくにとっての最大の敵としてやつらを見ることができるように、やつらを知ることから始めたいと思った。
五年前にあのテロを起こした燦然世代は、当時すでに多くの信者がたいほされたらしい。ぼくたちが追っているのは残ったやつらであり、その中に燦然世代を作ったという「教主」もいる。資料には「信者ですら素性が分からない、謎が多い人物」と書かれていた。この情報を話した信者の人も、「普通の信者では姿を見ることもできなかった」と言っていたようだ。分からないことが多くても、こんなカルト教団を作ってたくさんの人を殺したあげく、当時現場にでることなく隠れていた時点でどんな人間かなんて想像がつく。しかし、八咫烏が五年かけても見つけることができなかったことから、やっかいなことに隠れる才能はあるみたいだ。これからの任務で教主の行方をさがすことはできるだろうか。
教主より先にぼくたちはヨシミツさんをおそった「司教」、「カガミ」を見つけなくてはならない。ミミとしてぼくらに接触してきたときは、普通の人間にしか見えなかった。あいつの目が赤くなかったのはなぜだろう?他の司教や悪魔祓いも、同じように普通の人間にとけこむことができるのか?カスミが怖がっていた理由が今ならわかる。そしてトバリが言うように、ぼくたちは追いつめられているということもよくわかった。だが、ヨシミツさんというすぐれた九命猫の人間を失った今、ぼくたちは大丈夫なのだろうか。これからの任務でどうなっていくのか少し不安だ。
資料によると、燦然世代の司教は五人いるらしい。今回カガミの存在が明らかになったことで、ほかの四人もたしかに存在している可能性が高くなった。ミミをみのがしてしまったときのような失敗はもうしたくない。少しでもやつらに気づく可能性をあげるために、ここに司教の呼び名を書いておく。
カガミ
クルス
ソウギ
メイヤ
モズ
絶対に見つけ出してやる。
今日本庁で出会ったミナミさんは「対最優先事項部二課」もとい「カルト教団燦然世代残骸回収処理部隊(cult"Radiance World"corpse recovery and disposal units)」に所属している人だった。長いのでいつも「R.W.C.U.」と呼ばれているようだ。セントラルエリアに入ることがみとめられているのは、ぼくたちとこの組織だけだという。主な仕事は一課がたおした悪魔祓いの死体を回収し、その調査を行うこと。ミナミさんの名前は「回収班第一班班長」の真横に書かれていた。今度会った時に失礼がないように、もっとしっかり勉強したほうがいいかもしれない。
今日はトバリの過去についてのヒントをたくさん得ることができた。ミナミさんとの出会いに、トバリが自分で話していた「仲間を失った過去」。ミナミさんはぼくに友好的だからそれなりに話ができるとおもっているけど、トバリ本人につらい過去について聞くのは少し迷う。このまえみたいにずけずけと聞いていい話ではないと思うからだ。だけど、いつかはやらなくてはならない。ぼくの使命のためだけじゃなく、トバリについて、仲間についてもっと知るべきだと今日の出来事から思った。こうやってノートをつけはじめたんだ。ぼくは少しずつ変わっていけるはずだ。




