15.【九命猫】人事部へ
車で移動を始めてから約一時間がたち、僕達は「八咫烏」の本庁に到着した。敷地内にまで道川が続いているなんて、とんでもなく大きな施設のようだ。セキュリティゲートを通過した後も車はしばらく水の上を走っていた。車体が揺れて車が陸上走行に形態を変えると、そのまま巨大な地下駐車場へと入っていった。そこは何も知らない人間が迷い込んだら、出られなくなってしまいそうなほど入り組んだ造りをしている。僕たちは駐車場のより奥まった場所で降ろされ、そこからエレベーターに乗ってビル内に向かう。エレベーターの中でトバリが僕に教えてくれた。
「このエレベーターは八咫烏の中でもあまり顔を知られたくない人間が使用するんだ。ボクたち『R.W.M.U.』のように、セントラルエリア関連の組織に所属する者が主になる。本来『九命猫』の本部がある棟に行くには、ビルの連絡通路を経由しないといけないのだけれど、このエレベーターは九命猫本部に直通しているから、ボクたちが本部に用事があるときはいつもここを使っているんだ」
到着知らせるチャイムが鳴り、エレベーターが開いた。八咫烏本庁は一般企業のオフィスとそう変わらない内装をしている。
(父さんの会社と少し似てるかも)
僕達は護衛の人を先頭に、「【九命猫】人事部」と記されたフロアへと向かう。生体認証の後、厳重に閉ざされている自動扉が開く。
(僕は部外者だけど、本当に入っていいのかな…)
変にきょろきょろする僕に気づいたのか、ホムラが声をかけてくれた。
「この自動ドアは来客がいる際に使用されるものだ。本庁に登録がない者でも、八咫烏の人間を連れていれば入室が認められる。だから安心してほしい」
僕は彼の言葉にうなづき、いよいよ職員がいる事務作業室に足を踏み入れた。
僕たちが人事部のフロアに到着すると職員の数名がざわついた。彼らの視線は主にトバリとホムラに注がれている。しかし当人達は気にもとめず、広い部屋の一番奥にあるデスクへ向かった。高級感が漂う木製の立派なデスクの上に、山のように書類が積まれている。そしてそこに座っている男がやけにくたびれた様子で、なんだかちぐはぐな印象を受けた。デスクの隅に「【九命猫】人事部長 今橋正義」と記されたプレートが置かれている。トバリは男に向かって気さくな挨拶をした。
「やあ!会いたかったよ、マサヨシ人事部長!」
にこにこのトバリと対照的に、男は険しい顔でトバリを睨んでいる。
「俺はお前らとはなるべく顔を合わせたくないんだがな…!」
マサヨシと呼ばれた男は怒りを抑えるように、机の上で組んだ手に力を込めている。トバリは彼の様子を気にすることなく尋ねた。
「そんな寂しいこと言わないでくれよ。それで、ボクはこの場で色々話を進めてしまっていいのかな?」
「……場所を変える。ただでさえお前らの訪問でうちはピリついてるんだ。変な話聞かせて、これ以上うちの連中にいらないストレスをかけたくない」
「いい上司さんだ。でもキミがボクたちはそんなたいそうな人間じゃないって、皆に言ってくれてもいいんだよ?ボクは人事の皆さんとは個人的に仲良くしたいと思っているのだけれど」
「…国に直接スカウトされたお前らを、色眼鏡無しに見るのは難しいと思ってくれ。悪いが、俺は自分の職場のほうが大事な薄情者なんでな」
「常に部下のことを気に掛けるキミのどこが薄情なのだか」
「っち、仕事に手をつけられる人間が減ると怒られるのは俺なんだよ…ただそれだけだ」
マサヨシは席を立ち、僕達を「会議室2」という部屋に連れて行った。彼は護衛の人を扉の前に立たせ、部屋に立ち入るものが来ないよう見張りをさせた。マサヨシが部屋に鍵をかけると、完全なる秘密の空間が出来上がった。どうやらここは少人数で利用する会議室のようで、せいぜい6名が定員だと思われるサイズ感の長机が部屋の中央に設置されている。マサヨシに着席するよう促されたので、それに従う。僕は緊張して落ち着かなかったので、手前に座ったホムラの隣の席に着席した。なんとなく初対面のマサヨシとは距離を取りたかった。
「それで、お前らが預かっている侵入者はそいつで間違いないな?」
マサヨシは僕を指さしつつ睨みつけた。僕は思わず体を強張らせてしまう。
「こら。少年はほかの不届きものとはわけが違うと言っただろう。『侵入者』と呼ぶには判断が早いよ、マサヨシ人事部長」
トバリが僕の前にかばうようにして立ってくれた。
「まずはキミに少年がセントラルエリアに飛び込まなくてはいけなかったわけを説明する。少年が本部にどのように扱われるかは、それを聞いてから決める…いいね?」
マサヨシは何か言いたげにしていたが、やがて腕を組み近くにあった椅子に腰かけた。
「われらが人事部長殿が聡明で助かるよ。さてまず少年の事情について」
トバリはマサヨシに僕が見えるように移動し、僕に注目を集めた。
「キミも予想がついていると思うけど、少年は.............あれ?」
トバリは僕を見て違和感を覚えたのか、突然僕を凝視してきた。上から下まで観察されたのち、トバリは「失礼!」と言って僕の靴をはぎ取った。
「わわわっ!?」
予想できなかったトバリの行動に驚いていると、彼女は流れるように僕の足に巻かれた包帯も外していく。あっという間に裸足にされた僕は、なんだかいたたまれない気持ちになった。トバリはひとりでに恥ずかしがる僕を気にも留めず、僕の足裏を確認した。彼女は目を見開き、僕もまさかと思った。
「……少年、キミは鹿の子でもあったのか?」
「し、シカ…?」
車の中で気づいた通り、本当に僕の身体中の傷が綺麗に無くなっているようだ。重症であった足裏も、叔父につけられて痕となったものも、すべて。
「…?おい、なんだ…」
マサヨシが突然動きを止めたトバリを訝しんだ。トバリはしばらく考え込んだ後、咳払いをしてマサヨシの方を向いた。
「いいや、なんでもないよ。……少年は一緒に暮らしていた者から、苛烈な虐待を受けていてね。その者から逃げ出し、もう二度と見つからない場所へ逃げる必要があった…。サウスウエストエリアから規制線まで彷徨って、ようやく誰にも見つからない絶好の隠れ場所を見つけて飛び込んでしまったのさ」
トバリは僕がセントラルエリアに立ち入った理由を簡潔に述べた。僕が「トバリに会いに来た」という、混乱を招く部分は省いて。
「…なぜ警察を頼らなかった」
マサヨシが僕に尋ねた。僕は緊張して上手く答えられなかった。
(そもそも、セントラルエリアに行くことが目的だったから、警察を頼るなんて考えもしなかったし)
挙動不審な僕を見てホムラが助け舟をだしてくれた。
「彼はまともに食事をとっておらず、危険な状態だった。さらに彼が外出した日は猛暑で、熱中症になっていた可能性が高い。そんな彼がまともな判断ができなかったのも頷ける」
ホムラの答えにマサヨシは無言だった。トバリがすかさず付け加える。
「少年は怖かったんだよ。警察は身元がはっきりしている家出少年を、そのまま住んでいた場所へ送り返してしまうんじゃないかって。親と喧嘩した、それがヒートアップしてしまった。それくらいなら仲裁すればすぐ元通りになるだろう…ってね」
マサヨシはトバリに反論する。
「まともな判断ができなかったんじゃなかったのか?」
「判断できなかったから、本能に従うしかなかったんだよ。少年の保護者は外面を大事にする人間だった。おそらく警察の前でも、簡単に演技ができてしまう人間だ。子供というものはキミの想像よりずっと大人の観察をし、行動パターンを予測して日々過ごしている。……わかるんだよ。『あ、これは大人の能力で事実を捻じ曲げられてしまう』とね」
そしてトバリは意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「それに…キミはさっきまともな判断と言ったね?『警察に頼ることはできない』と判断することがまともであると。キミも心のどこかでは、家出少年が警察を頼っても根本的な解決に繋がらないと思っているんじゃないかい?」
トバリの言葉にマサヨシは眉間のしわを深くした。トバリはにやにやと彼を見つめている。マサヨシはそんなトバリを見ていかにも癇に障ったような顔をして、深くため息をついた。
「お前の揚げ足取りに付き合う気はない。............まあ、こいつがやむを得ん事情で規制線を越えたのは承知した。だが、大勢の目に触れるところでやられたのは、俺たちにとってとんでもなく都合が悪い。理由は伏せるが、あんたにはしばらくトバリ達のところで生活してもらう。期間は決まっていない。許可が出るまでセントラルエリアからは出られないと思ってくれ」
マサヨシは僕にそう忠告した。僕は少し困惑した。
(マサヨシ…さんは、僕が何も知らないと勘違いしてる?)
「とりあえず、保護対象が本部に到着したと報告する必要がある。あんたの個人情報を記録するから、まずは名前を........」
僕は彼にトバリからセントラルエリアについて、ことごとく教えてもらったことを伝えるべきかと思った。このままじゃマサヨシを騙すような形になってしまうと危惧したからだ。
「ところでマサヨシ人事部長、この間の相談について確認したいことがあるのだけれど」
トバリが突然全く別の話を切り出した。マサヨシが再び険しい顔になる。
「おい、なん…」
「昨日仲間たちと考えてみたんだ。まずボクたちにこの事件の資料を送ってきたこと、そして生体認識カメラの分布図と、行方不明者の最後の足取りが添付してあったこと。この二点を与すると、あるひとつの可能性が浮かんでくる」
「おい、待て…!」
マサヨシが慌ててトバリを止めようとするが、彼女は従わなかった。
「上はこの事件に『燦然世代』が関わっていると睨んでいるんだね。だからセントラルエリアの番人であるボクらに情報を共有した」
「トバリ!!」
マサヨシが怒鳴るようにトバリを制止した。彼は急に大きな声を出したためか、疲労をにじませる呼吸を繰り返している。
「血迷ったのか…!?部外者がいる場で、何をぺらぺらと............!」
「部外者?少年のことかい?あいにくだけど、もう彼は部外者と呼べる立場にいないんだ」
トバリは僕の背後に回り、肩に手を置いて僕に顔を寄せた。そしてうれしそうな声色でマサヨシに向けてこう言った。
「少年はボクが直々にスカウトした、新しい一班の隊員なのだから!」
「.....................................は??」
僕はマサヨシの怒りが頂点に達したことがわかった。彼は額にいくつも青筋を立て、鬼の形相でこっちを見ている。トバリは怒りをあらわにするマサヨシに対していたずらが成功した子供のような顔を向けている。さらに彼の様子を見たホムラが「あれは『電話では預かるだけという話をしていただろうが!!』の顔だな」と空気の読めない実況をし始めた。どう考えても火に油だ。僕は考えうる中で最悪な事態が起こっていると悟った。マサヨシはそのまま爆発するんじゃないかと思うぐらい体を震わせて、突然全て諦めたかのように椅子に沈んでいった。
「.............とりあえず、全部、説明しろ…」
彼はもはや怒る気力もないと言わんばかりに呆れていた。直接怒らせたのは僕ではないけれど、彼の心労を思うと申し訳なくなった。
「だめだ。絶対に認められない」
マサヨシはトバリの説得を聞いても、断固として僕の入隊を認めようとしなかった。トバリたちが所属する組織の人手不足問題、長引く燦然世代の掃討作戦。これらが一向に解決に進まないことを咎められて、マサヨシは耳が痛そうだった。しかし、マサヨシは拒否の姿勢を保ったままだ。
「…ボクとホムラが一班に異動してから、一度も人は増やされなかった。幸い一班の隊員が殉職することは今日までなかったけれど、セントラルエリアの掃討を率いている一班の人員が足りていないことは、九命猫にとって致命的なのはキミもわかるだろう?それにボクは人員補充だけでなく、新しい班編成についても本部に申請してきた。だが何回やってもいい返事はもらえなかった。ボクは正直我慢の限界だ。だからボクは一班班長としてキミに、本部に抗議する。九命猫の存在意義をもう一度胸に刻むべきだと」
トバリは最後の一押しと言わんばかりに、強い意志をもって抗議した。マサヨシはそんな彼女を見て、どこか辛そうな顔をしたあと、もう一度「だめだ」と言い切った。
「お前の気持ちもわかるが、俺もそこまで偉い人間じゃないんだ。今俺がこの件を持ち帰ったところで、上は相手しちゃくれない。それどころか『なぜ却下しなかった』とかなんとか言って、俺が処分を受けることになる。............俺はここ以外働く場所がないんだ。大規模テロのせいで、もともと勤めてた署は今や立ち入り禁止区域の一部だ。俺も自分が生きてくために、このポジションを守りたいんだよ。許してくれ」
マサヨシは僕のほうを見て、また「すまない」と言った。
「あんたがテロ被害者で、燦然世代を恨む気持ちもわかる。だが、あんたが思っている以上に『R.W.M.U.』は危険な任務を受け持つ組織だ。戦闘員ではない癒月隊員も、R.W.M.U.所属前に訓練を受けている。一般人を簡単に放り込んでいい組織じゃないんだ。それに一年前、臨時被災者施設から人員確保することは禁止された。一度廃止された制度を復活させる先例はない」
マサヨシは目を伏せて、極めて現実的な話を続ける。
「秘密漏洩を防ぐために、あんたをセントラルエリアに閉じ込めておくことまでは上も許可するだろう。リスクを防ぐためのイレギュラーだからな。だが組織に入れる提案は確実に蹴られる。今の八咫烏はメリットが見込めないことは受け入れない姿勢を貫いているんだ。............俺が上に報告せずにあんたを九命猫に組織登録をすることはできなくもない。上は九命猫の人事をうちに一任しているからな。だがあんたに何かあれば、責任の所在がどこに行くのかわかったもんじゃない。殉職者が出たらどんな組織であれ上に情報がいく。俺一人では上に知られることを防ぐことは不可能なんだ。不当に隊員を雇っていたとばれたら、相当な処分が下るだろうな」
マサヨシはまるで罪の告白をしているかのような深刻な面持ちで告げた。
「悪いが俺はそこまで思い切ったことをする勇気はないんだ。自分が一番大事な人間なんでな............だから、すまない。あんたがセントラルエリアから解放された後の生活はなるべくいいものにできるよう努力するよ」
「マサヨシさん…」
僕は彼が組織と自分の気持ちに板挟みにされていると感づいた。彼は現実的だが、僕たちをぞんざいに扱おうとは考えていないと思う。マサヨシの葛藤を思うと僕は心苦しかった。それと同時に焦燥に襲われる。僕はトバリと同じ組織にいたい。いなければならない。交渉が決裂したなら、僕は違法だとしても無許可で彼らのそばにいるしかないのか。
僕がまっとうなルートをあきらめようとしたとき、トバリがやけに上機嫌に笑った。
「ふふ、やっぱりわれらが人事部長さんは信頼に値する。キミの本音が聞けて良かった。ボクたちの要求に答えたいけれど、危ない手段を使って自分が断罪されることが怖い。そして保身のために自分の信条に反してしまう自分がどうしようもなく嫌いだ…こんな感じだろう?」
「............何を企んでいる?」
マサヨシは眉間に深いしわを作って、トバリを睨んだ。僕もトバリが何を言い出したのかわからない。
「いやだな。キミを陥れようとしているわけじゃないよ。まあ今までの説得は断られること前提にしていたものだけれど。大方予想通りだ。今の条件じゃ少年を組織に入れられないことも、キミがボクたちに協力的な姿勢でいたいことも」
「えっ?」
僕は思わず驚いてしまった。トバリが僕を振り返って華麗なウインクを披露した。僕は思わず茫然としてしまった。
(もしかして、さっきまでのは演技だった…?)
マサヨシは苦虫を嚙み潰したような顔をした。まるで「またはめられた」とでも言わんばかりだ。
「上の人間が障害となるならば、彼らを納得させることができればいい。上の人間が少年を組織に入れることに納得する要素が彼にあるといったら?キミはボクたちに協力してくれるよね!」
トバリはさっきまでの真剣な顔から、急にわくわく顔になってマサヨシに詰め寄った。マサヨシはげんなりしてうなだれてしまった。
「またか............」
彼はもう何回もトバリの手の上で転がされているのかもしれない、と僕はマサヨシのことが少し気の毒になった。というかトバリの言う「納得する要素」とはいったい何なのだろうか。僕は一般人で、しかも2年間監禁されていたせいで世の中に疎いという欠点付きだ。改めて思うと、僕が九命猫に入るメリットは組織から見て何もない。トバリはなぜ僕を組織に入れることにこだわるんだろう。何もかもが僕にとって都合がいいように見える。
「少年!」
「!?はいっ」
僕がごちゃごちゃと考えていると、突然トバリさんに呼ばれた。
「マサヨシ人事部長にキミの名前を教えてあげて。記録が必要なんだ」
「なんだ?突然。さっきは遮ってきたくせに…」
「いいから!」
僕はトバリにいいようにされるマサヨシに名乗った。
「えっと、鷹崎時雨です…」
マサヨシは疑問を抱きつつも、僕の名前をメモ帳に書き込んだ。
「あ~…タカサキシグレ、だな?これであっているか?」
僕は彼が書き込んだメモを覗き込んだ。そこには走り書きで「高崎時雨」と書いてあった。
「あ…」
「なんだ?漢字が間違っているか?どういう字か教えてくれ」
「は、はい。苗字が…崎の字はあってるんですけど、たかは高いじゃなくて鳥のほうで..........」
マサヨシは再びペンを走らせる。そして出来上がったメモを眺めて、驚愕したように立ち上がった。
「あ?!『鷹崎』ぃ??!」
僕はこの光景を見てデジャヴを感じた。トバリは愕然とするマサヨシを見て、企みが成功したと言わんばかりに誇らしげだ。
「どうだいマサヨシ人事部長!ボクの目利きは素晴らしいものだろう?」
部屋の中にトバリの笑い声と、死にそうなマサヨシのうめき声がこだまする。さっきまでの張りつめた空気が嘘みたいに、カオスな空間へと変化してしまった。僕の苗字が八咫烏に何かメリットをもたらすのだろうか。僕が首をかしげていると、もはや空気に溶け込むように存在感を消して本を読んでいたホムラが声をかけてきた。
「まだ話は続きそうだ。シグレも自由に過ごしてくれ。…俺の本であれば何冊か貸せる」
ホムラはどこからともなく数冊の本を取り出した。こんなに自由にしていていいのかと思ったが、話し合いの場を設けた二人があんな様子だから、問題ないのだろうか。僕はホムラの厚意を受け取り、水色の表紙をした本を手に取った。開いた瞬間濃厚な恋愛描写が書かれている小説で、僕は思わず本を閉じてしまった。隣で「ふふ」と聞こえた。常に無表情なホムラに心の内で笑われたのは気のせいではないだろう。




