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飼われ猫

「フーーーッ!!シャァァァァッ!!」

「なぁモーナ、なんで俺こんな嫌われてるんだ」

「暗殺の対象に入っているからだと思われます」

「ンニャ、んーーっにゃっまななびっ」

「なぁモーナ、もう1個聞いていいか?」

「はいなんなりと。ほーら“蜘蛛猫”、マタタビだよ〜、ほら、ほーらほら」

「ニャッ!」

「なんでお前そんな“蜘蛛猫”と仲良ししてんの?」

「マタタビの成せる友情の御業(みわざ)です、ほーら“蜘蛛猫”、マタタビ〜マタタビつんつーん」

「お前は誰だ、俺の知ってるモーナじゃないよもう」


まななび、もといマタタビを嗅がされた“蜘蛛猫”はモーナによってぐっでんぐでんに甘やかされながらそのしなやかな体を最大限ぐんにょんぐんにょんさせてじゃれついていた

1人と1匹が仲良くしている光景は大変微笑ましいのだが、“蜘蛛猫”を保護するためにも彼について資料ではなく自身で調べまとめた報告書を作らなければならないアンドリューからすれば微笑んでもいられない


「あ、あのな〜“蜘蛛猫”〜?ちょっと話聞いて欲しくて…

「シャァァァァッ!!しゃっ…シャァァァァッ!!!」

…ごめんごめんごめん!ホントごめんってイテっ?!」

「こら“蜘蛛猫”っ!マタタビ投げるんじゃありません!」

第一王子()に向かって物投げた事を怒ってくれないか!?」

「ニャアアアアアアッ!!」


やいのやいのと騒ぐ2人と1匹、保護したあの日からたったの5日でモーナは“蜘蛛猫”の癒し力にすっかり堕とされ護衛対象でもあるアンドリューにマタタビを投げつけた事を叱らずに次のマタタビを探してポケットを探るほどに懐柔されてしまった


「うるさい殿下ですね…ねぇ“蜘蛛猫”?私たちはあなたを正式に保護するために害意が無い事や悪意が無い事を国王様に報告しないといけないの、ここまでは理解できる?」

「がいー…あいー……???」

「殿下、もう可愛いのでOKにしませんか?」

「できるか!!」

「デンカ!モーナいじめないで!」

「お前もお前で懐きすぎじゃないか?!」


マタタビパワーは凄いらしい

だがそう悠長に構えてもいられないのだ…“蜘蛛猫”には事情があって環境に多大な問題と原因があったが命を奪ったのは本人の意思である、また子供だという点を重要視するのは国を守る観点から考えるとあまり好ましく無いという意見が強まっている

この意見にはアンドリューも第一王子という立場になって考えるとあまり否定はできない、情報を外へ漏らすつもりなど毛頭ないが秘密が決して漏れないと思うのは傲慢でありそうなれば人の口に戸は立てられない…“蜘蛛猫”の存在を幼さや同情から安易に許せばそのやり口に有用性を証明する事にもなり悪戯に第2、第3の“蜘蛛猫”を産む結果を招くだろう


「荒療治になるな」

「……っ!?お、おやめください殿下!少々戯れが過ぎた事は謝罪致します!」


その呟きにモーナが慌てて姿勢を正してアンドリューへと詰め寄る、急に雰囲気が変わったことだけは察した“蜘蛛猫”がモーナを見上げながらキョトンとしていたがそんな“蜘蛛猫”に突然手が差し出された


「“蜘蛛猫”、望む通りにしよう」


モーナが「殿下!!」と声を荒げるがアンドリューはそれを手で制する、ハッキリと言葉にされても未だよく分かっていない様子の“蜘蛛猫”は果たして言葉が難しくて理解できていないのか、それとも理解した上でその提案をしてくる意図が分からず困惑しているのかは分からない


「お前の望みは俺を殺すことだろう?」

「…!!そう!デンカころす!“パパ”よろこぶ!」

「あぁ分かってる、だから庭に出て戦おう。俺は訓練用の剣を——おっと」


言葉が遮られる、アンドリューの前髪が僅かに舞う…言葉の終わりも庭に出るのも待たずして襲いかかった“蜘蛛猫”の爪がアンドリューの前髪を切り飛ばしたのだ

眼前を通り過ぎていった爪は保護したタイミングで安全のために深爪なくらいな程丸く切り整えたはずだがすでに毛髪を切り裂くほどにキャット種特有の鋭い爪へと再生していた


「だがまだ甘い…なっ!」

「っ?!うぅぅんなぁぁぁぁう!!」


躱した右手を掴んだアンドリューは換気のために開いていた窓へと“蜘蛛猫”を放り投げる、床と並行に飛んだ“蜘蛛猫”はそのまま当初の予定通り庭へと投げ出され3階にあった部屋からキャット種らしい身軽さを発揮して無傷で庭へと着地した

“蜘蛛猫”が無事に着地したのを確認したアンドリューは窓枠に足をかけながらモーナへと振り返る


「モーナ、俺は別に怒っていないぞ、お前が“蜘蛛猫”に絆されなくても実はこうするつもりだった」


そう言ってイタズラ好きそうなニッとした笑みを残して庭へと飛び降りていった

アンドリューは地面に着地する寸前に風魔法のクッションを作って落下の勢いを相殺する、それと同時に“蜘蛛猫”が飛びかかってくるがそれを軽く躱して彼はまるで散歩でも始めるかのようにゆったりと歩き出した


「お前は立体的な戦い方が出来る方が良いだろう」

「ニャァァァッ!」

「なるほど身軽だな、キャット種特有の身のこなしではあるがきっと次に濃いらしいスパイダー種の影響もあるんだろう」

「ニャァッ!!」


飛びかかる、飛びかかる、ただ愚直に飛びかかる…しかしその全てをアンドリューは難なく受け流し、その度にぽーんと“蜘蛛猫”は空中へと跳ね上げられる


「教えてやる“蜘蛛猫”、お前の“パパ”は最低の男だった」

「“パパ”!わるくっ!言わないでっ!!」

「お前を利用して…人生を壊して…生き物として壊して…」

「それでいいって!“パパ”たち言ってた!!」

「…そして今はあの屋敷の地下牢で喚く元気すら尽きて全てお前がやった事だと繰り返し主張している」

「ニャァァァッ!!!」


渾身の飛び蹴り…しかしそれすらもアンドリューは片手で足を掴んで止めてしまう。“蜘蛛猫”は掴まれた足を外そうと暴れ、すぐに力では敵わないと理解して逃げるためにもがき始める…だがしかし足を掴む腕はビクともしない


「ハッキリ言って反吐が出る。怒りをどう表していいものか困るくらいに。」

「ニャッ…!うっ…!あぅぅぅ!!」


逃げられないと理解した“蜘蛛猫”は思考を攻撃に切り替えて腕に爪を突き立てる…しかし手応えがおかしい、肉を裂いた感触にしてはいくらなんでも()()()()


「お前は善悪の判断がつかない、それはそう育てられてしまったからだ」


何度も爪を振り下ろす、爪は通るし血も出ている…だが伝わってくる感触は今まで切り裂いてきた肉とはあまりにも違う


「お前はお前の“パパ”達とやらに命令されるままに命を奪ってきた、それだってそう育てられたんだから仕方がないと俺は思う」


鉄ほど硬くはない、だが人の柔らかさでもない、この感覚はそう——


「だが国はお前を許さない」


——大樹のそれだ

傷は付くがこれを壊せる感覚がしない…勝てないのだと理解してしまった


「国とは法のもとで動いている、それは民の命だけじゃなく権利を守るためだ

力だけでは守りきれず、守るだけではいつか滅びる…自国だけではなく他国の命を守るために法を遵守しているし、上に立つ者であるほど感情で動いてはならないんだ」


突き立てた爪を上から殴りつけ無理やり肉の奥へと食い込ませる、何度も殴りつけてアンドリューの腕と共に“蜘蛛猫”の手からも血が滲んだ

おもむろにアンドリューが足を放した、しかし今度は逆に“蜘蛛猫”が放さない。足を絡めて全身でアンドリューの腕に絡みつくと再度爪に向かって腕を振り下ろした


「ニャッ!ニャァッ!ハッ…!!アァッ!!」

「…だがそんな事知ったこっちゃない」

「ニッ?!」


“蜘蛛猫”の爪ではなく己の手を叩く腕を掴んで引き寄せる、自然と2人の顔は近づいて視線がぶつかり合う…


「お前は危険だ、罪もある…だから俺がお前を躾ける」

「オー…ジ?」

「デンカでも、オージでもない、おまえと今話しているのは“アンドリュー”という一つの命だ」

「あん、ろるー…?」

「はははっ…アンドリュー、だ

名前はゆっくりでいいさ、俺はお前ととことん向き合うからな、その中で何もかも覚えていけばいい」


幼い“蜘蛛猫”にアンドリューの言葉の意味はあまり理解はできていない、ただ“蜘蛛猫”は幼いだけであって馬鹿ではない。アンドリューが自分に敵意を向けていない事くらいは理解できた


「決して見捨てはしない、無茶もさせない、無垢故に利用されただけの小さな命を放り投げるだけなら誰だって出来る」


紺碧の瞳と金色の瞳がまっすぐに見つめ合う…アンドリューの腕からやっと血が滴り始め、それに気づいた“蜘蛛猫”は見慣れたはずの血に対して今まで感じたことの無い感情に晒された


「俺は第一王子、いずれこの国の王になる。ならばこそ俺は誰だって出来る程度の事をして満足している訳にはいかない…茨の道で血に塗れながらこの国に生きる全ての命に責任を持つ。」


流れていく血とアンドリューの瞳を交互に見る…そして“蜘蛛猫”は静かに腕から爪を抜いて傷口を控えめに舐める、これが彼の知る唯一の痛みへの対処だった

僅かにざらついた舌に撫ぜられるくすぐったさに微笑みながらアンドリューは“蜘蛛猫”の頭を優しく撫でる


「…よくやった、お前は今やっと目の前にある“命”をちゃんと見たんだ“蜘蛛猫”」

「あんろるー…いたい?」

「痛いさ、誰だって痛いんだ」

「……みんな、いたいだった?」


傷口を舐めながら“蜘蛛猫”は不安げにアンドリューへ問いかける、今まで自分が傷つけて壊してきた命たちを今初めて“蜘蛛猫”は直視した


「もちろん。みんな痛かった、そして死んでしまった…お前が殺した、壊したんじゃない。命は壊すんじゃない、奪うものなんだ」


月並みな言葉をかけるのならばここで罪を許すのだろう、これまでの反省をしたのならばそれで良しとして今後の人生で償っていくのが世に出回る英雄譚を彩る物語だ


「いいか“蜘蛛猫”、お前は誰かの命を奪った、だからお前を許せない人がたくさんこの国には居る」

「うばった…いのち…」

「そうだ、お前が奪った。そして奪った命は帰ってこない…お前は“パパ”が大事だろう?」

「だ、だいじ…だと、おもう…」

「俺はお前の“パパ”を死刑にしなきゃいけない、俺はお前の大事な人の命をもうすぐで奪う事になる」

「あんろるー…やだ、とらないで」

「あぁ、嫌だろう?悲しいだろう?あんなのでもお前にとっては大事な一つの“命”だったんだ…でもお前の“パパ”はたくさんの人が許せない事をした、そしてお前も本当なら許せないうちの1人になるはずだったがお前の“パパ”はお前からその“嫌だ”って感じる心を奪った」

「“パパ”が…?」

「命はいつかは終わる、だからこそ誰かが理不尽に終わらせる事を『奪う』と言うんだ」


常に何かを警戒して、常に痛みに震えて、常に未知に晒されていて落ち着く暇もなかった“蜘蛛猫”の頭は今穏やかな水面のように凪いでいた。言葉がするりと頭に入ってきて、難しくてよく分からない言葉も拒絶するのではなく何かを汲み取ろうと静かに咀嚼をしていた


「命に価値の差は無い…だがその魂には差がある、誰かが決めてそれをみんなが守っているルールの中でどう生きたかという行いで魂の価値が決まる

その価値を見て生き物は誰かを裁いたり、時には拒絶の言葉と共に石を投げる…

でもこれは仕方のない事の一つなんだ。誰だって感情がある、そこにはルールとは違う魂の中で育んできた罪の物差しがあって生き物はそれを無視できないように生まれてきた」

「…………」

「誰かはお前に拒絶と石を投げつけるだろう…」

「いたいほうがいい…?」

「いいや、全ての痛いを受け止める必要はないさ…ただ罪から逃げちゃいけないだけだ」

「にげちゃだめ…?」

「そうだ、お前が握った罪だ、勝手に捨てて良い訳がない。お前の罪はお前にしか償えないんだ」

「それの、つみ…」


それは今初めて命を見て、罪を知り、世界に足をつけた

ただ“それ”としか呼ばれなかった(それ)は今やっと命を始めた


「あともう一つ、お前は“それ”なんかじゃない、命はそんな物みたいに呼ぶもんじゃないんだ」

「じゃあ、なんて…?」

「うーーーん……それは後で考えよう、腹が減った!」

「ごはん?」

「そうだごはんだ」

「やったー!」


訓練用の木剣を持ってきた兵がアンドリューの腕の傷を見て目の色を変えて腰の剣に手をかけたのを“蜘蛛猫”から見えない位置で手で制しながら「よいしょ」と抱え直す

剣を構えたままの兵にモーナが耳打ちをすると渋々と言った様子で彼は下がり、そして困った表情で駆け寄ってきたモーナがアンドリューと“蜘蛛猫”の腕に回復の魔法をかけた


「…荒療治はうまく行きましたか殿下」

「さぁな、でも一歩大きく前進したさ」

「あんろるー、て、ごめんなさい…」


しょんぼりとした顔で相手の怪我を心配する“蜘蛛猫”の様子にアンドリューは大きな前進を感じた、やはり“蜘蛛猫”は賢い、まともに教育されていないのにゲドゥー達からある程度の言語を学び盗んで会話をしていた事からわかっていたが無知で無垢だからこそ正しい知識を与えてそれを理解して納得すれば素直に学習する素養が充分にある


「大丈夫さ、“蜘蛛猫”もこれからは自分のも相手のも命を大事に出来るだろう?」

「する…がんばる…」

「そうしょぼくれるな、俺はお前に色々と知って欲しかっただけなんだ、お前を守ってやるにしても順序は大事だからな」

「随分な事言ってましたけれど…アレ本気なんですか?」

「本気も本気さ、路地裏から玉座の間まで全部の命に責任を持つ王を俺は目指している。当然お前にも王宮騎士団にも付いてきてもらうぞ」

「そんな勝手な——」

「あるろる、ごはんー」

「おっとそうだったな、さ!行くぞモーナ、マダムに飯を頼みに行こう」

「ちょ、ちょっと!!」


蚊帳の外にされた仕返しという私情を僅かばかり挟みながらアンドリューはモーナをうっすらと無視して抱えた“蜘蛛猫”と共に屋敷へと戻っていく、模擬戦を始めてからまだ数分しか経っていないはずだがマダムはすでに軽食の用意を済ませているようで屋敷の入り口でフードワゴンにティーセットとクローシュを乗せて待ち構えていた


「流石マダムだな」

「お褒めに預かり光栄でございます」

「まだむー!ごはんー!」

「はいはい、サンドイッチは逃げませんよ?先に手を洗いましょう」

「あいー!」


こうやって見ていると“蜘蛛猫”の喋り方というか知性的な部分には明確に波があるとアンドリューは気づく、普通に会話をしている事もあれば発音の仕方が分からず舌っ足らずな幼児のような言葉も発している、それの原因は当たり前だが教育不足だろう


「(盗み学んだ部分だけであれだけ知性的な会話ができるんだ、教えればきっと化けるぞ…)

なぁ“蜘蛛猫”、モーナのことは好きか?」

「殿下?」

「モーナまななびくれるだからすき」

「そうかそうか、じゃあモーナとマダムからだったらお勉強できるか?」

「おべんきょ?」

「いろんな事を教えてもらう事だ、ちょっと難しいし退屈なんだが“蜘蛛猫”がお勉強をして賢くなったらみんな喜んでくれるぞ?」

「かしこくになったら“パパ”もよろこぶ?」

「……あぁきっとな、パパっていうのは子供が賢くなったら嬉しいもんだからな」


まだ“蜘蛛猫”には“パパ”とそれ以外という世界しか無い、彼本人の純粋さのおかげで一応和解は出来たがゲドゥーが自分にとって害のある存在だったと思うのはまだ難しいようだ。賢い彼は“パパ”が悪事を働いていた事自体は理解している、だが悪い事をするとみんなが怒る程度の認識しかまだ出来ないでいるからこそ自分の中にある“パパ”を切り離せない

そしてそれはゲドゥー達の歪みきった接し方によって発生した正しく導けば国が懸念している『“蜘蛛猫”の危険性』は矯正できると考えた


「サンドイッチ美味しいか〜?」

「おいしー!」

「だってさマダム」

「あらあら、嬉しゅうございますねぇ」


数分前の真面目な空気はなんとやら、すっかり和んだ空気でほんわかとサンドイッチを頬張る“蜘蛛猫”とそれを見て微笑むアンドリューとマダム…

それをさらに見ているのが2人の護衛を連れた美しい少女とモーナだ


「——と、いうわけでございますお嬢様」

「なるほど、てぇてぇですわよ」

「てぇ…??」

「いえこっちの話ですわ」


部屋を覗く少女…もとい(わたくし)ヒメカ・エルセルディティアは転生者である。…これは言いたかっただけですの、やっと言えて満足ですわ

そんな事はどうでもよくて、何あの光景どちゃくそてぇてぇですわ?前世でありとあらゆるてぇてぇを漁ってた萌え豚雑食オタクの私を屠殺しにかかっているとしか思えませんですことよキャッキャウフフのデュフフグヘヘですわ

おっとごめんなすって、そのお腹モフりたすぎぃ、私そのギャンかわ空間お啜り申し上げてよろしくて〜??


「で、お前は何をやってるんだヒメカ…」

「ハッ…!いつの間にか…!」

「やぁーだぁー!はなーしてー!」


お兄様に声をかけられて我に帰る、気づけば私は部屋にするりと飛び込んでちいさきいのちをもふもふしておりグヘヘかわいいねお嬢ちゃんかな?お坊ちゃんかな?どっちにしろめんこいねぇねこちゃんねぇデュフフじゅるるるズビビッ


「全てはこのばちぼこてぇてぇ空間が悪いのですわお兄様!」

「ばち……てぇて……えっ??」

「おっといけない、お口が少々混乱しておりましたわ」

「少々と呼ぶには随分と大波乱だぞ、嫌がってるから“蜘蛛猫”から離れなさいヒメカ」

「そんな可愛くない名前似合いませんわ、この子はキャサリンちゃんと呼ぶべきです」

「“蜘蛛猫”に性別は無いからキャサリンはおかしい…というかそれはどう考えても浮くだろ、見た目と名前のギャップが」

「じゃあぬばたまちゃん…」

「ヌバタマ…?」


前世で見たあの黒くて光沢のあるなんかこう…なんかの種子みたいなやつ、アレの名前がたしかヌバタマでしたわ

あぁでも若干不安ぶっこいてきましたわ…!あれホントにヌバタマ?!ねぇ私の思ってるヌバタマって本当にヌバタマ!?かくなる上は!!


「あっでもタマちゃんでも可…ッ!!」

「…タマは、まぁ…いいかもな?」

「ッッシャアッ!!」

「お前も誰なんだ、なんでみんな“蜘蛛猫”とじゃれると人格が変わるんだ、俺頭がおかしくなりそうだよ」


頭を抱え始めたお兄様の頭をポンポンと撫でて慰めて差し上げる

えっ?お前がキモいのが原因だって?聞かないねえっ!オタだから。(※個人の蛮行です)

あぁ〜タマちゃんのお腹モフモフするんじゃあ〜!


「おっほ!()()()()()()()()()()()()()ぇ〜()()()()ぇ〜!」

「コイツつまみだしてくれマダム、多分新種の魔物だ」

「残念ながら貴方様の残念な妹君でございます殿下」

「あんろる!あんろるたすけてっ!にゃっ!!ふぎっ!!」

「タマたそたぁまんねぇ〜!!くんかくんかスーハースーハー…おほぉ〜!保護保護しようねぇタマちゃんねぇ!」

「あんろるぅ〜!!」


最悪の5・7・5を刻み始めたヒメカを指さしてアンドリューはマダムの方を真剣な眼差しで見るが残念ながら救いはない、アンドリューはもはや組みつき絡みつかれているタマをヒメカからヒョイと取り上げて肩に乗せるとタマは完全に怯えて萎えてしまったようでアンドリューの頭にひっしとしがみついている


「ヒメカ、やりすぎだ」

「だって可愛いんですもの」

「タマが可愛いのはわかるがやりすぎはやりすぎだ、おーよしよし怖かったな〜」

「あんろるぅ…」


アンドリュー本人は気づいていないが彼もちゃっかりタマに絆されておかしくなっているのは言うまでもない

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