番外編② 三発ゲーム
レイズとバージル。
彼らは、レイグランズ付近の草原まで足を伸ばし、特訓をしていた。
珍しくリゼルも一緒だ。
城から一歩も出ない(出ることができない用事がある)ため、二人に同行することになっているのだ。
一応任務外なため、皆動きやすい服装で外に出ている。
リゼルは顔が割れていそうだが、レイズとバージルはド新人。
ここで遊んで(?)いてもガヤガヤ言われる可能性は低いと判断している。
レイズとバージルは二人で特訓しているが、リゼルは一人だ。
特訓の合間にチラ見して、彼が何をしているかチェックしているが、龍魂初心者であるレイズには、どういう特訓かは分からなかった。
剣を振っている時もあれば、座り込んで目を閉じているだけの時もある。
そんな最中。
「「はぁ……はぁ……」」
二人の息が上がってきた。
「ふぅ、少し休もうぜ」
「あぁ」
レイズとバージルは剣を置き、草原に座り込んだ。
「…………」
ここからなら、レイグランズがよく見える。
(本当にデカいよな。ま、王都だから当然か)
これだけ発展しているから、往来する人も多い。
特訓中も、何人もの人々が往来しているのを見かけた。
ぼんやりと王都について考えている時だ。
リゼルも剣を納め、少し離れた場所に腰かけた。
サラサラの前髪が風に煽られ、踊っている。
そんな姿を、レイズは黙って横目で見ていた。
「…………」
同性からでも思う。
……どの角度から見ても、絵になる男だ。
「おいレイズ」
「んだよ」
「三発ゲームしようぜ」
「三発ゲーム?」
まず、攻撃と防御に分かれる。そして、防御側には目隠しがされる。
攻撃側は棒上の何か、防御側は盾上の何かを持つ。
リズムに合わせ、三回連続で上段(顔)、中段(体)、下段(股間)に向かって攻撃を仕掛ける。この際、どこを狙うかは完全任意で、同じ場所もアリである。
当然、防御側は攻撃がどこにくるか予測し、守るというものだ。
「攻撃側有利過ぎんか」
攻撃側は三分のニで攻撃が通る。
しかし、防御側は三分の一でしか守ることができない。
「いいんだよ。勝ち負けってよりは、ワイワイ系だし」
「ふ~ん。まぁ良いぜ」
「おいリゼル。お前もやろうぜ」
「断る」
即答。
彼の剣技同様、恐ろしく速い回答。
聞き逃す人間も多そうだ。
「やんねぇのか」
分かっていたことだ。レイズはこれ以上口を開く気はなかった。
だが、バージルは違う。
「なんでだよ」
「下らん遊びにつき合う義理はない」
「……負けるのが怖いって素直に言えよ」
「「!」」
勝ち負けのゲームではないが、防御を外しまくれば、「弱すぎ」と言われるのがオチ。
ゲームの敗北ではないが、負けと同義である。
「……いいだろう。叩き潰す」
久しぶりに見た、リゼルのマジ顔。
『叩き潰す』のは、いったいどこを……
(股間を!?)
キュ、と無意識に内股になるレイズ。
「当然、僕が攻撃側だ」
その辺に落ちていた木の棒を握り、近付いてくるリゼル。
バージルは慌てて盾の代わりになりそうな板を拾い、防御に備える。
「……レイズ。掛け声を」
「よし、行くぞ……1、2、3!!」
「「!!」」
男たちの下らないゲームが始まった。
笑うのは、泣くのは誰か……