番外編① 緑の悪魔
とある休日の昼間。
リゼルはとある飲食店内で、一人固まっていた。
(クソ……なぜこんなことに……!)
時は少し遡る。
彼は空腹を満たすため、王都をぶらついていた。
やることは山積しているが、いつまでも肩に力を入れていては身体が持たない。それに、今日は休日。
騎士団の服に似たデザインの私服で、剣も持たずに外出している。
(肉、か)
正直、食べ物の好き嫌いは多い。食わず嫌いもあるが、口にするものは大体決まっている。
だから、専門店(?)なら問題ないだろうと、焼き肉店に入っていた。
自分で肉を焼き、食酢というもの。別に初めてでもないし、一人で行動することに慣れているために特に気にしたことはない。
が、問題は別にあった。
昼時故に、ランチタイムのメニューしかない。
セット内に、『野菜』としか書かれていなかったのが気にはなったが、引っ付いている以上、除外はできない。
一抹の不安を抱えながらも焼肉セットを頼んだリゼル。
運ばれてきたセットを見て、冒頭の固まっているシーンへと繋がる。
(ピーマン、だと……!?)
野菜の中に、緑の悪魔ピーマンがあった。そして、同じくらい苦手なカボチャも。
唯一食べられるのは、キャベツだけ。
そして、ここには一人。
いつもはシレッとバカどもに押し付けていたが、その手も使えない。
(くッ……!)
両手を強く握りしめるリゼル。
残すなど、あり得ない。覚悟を決めろ。
リゼルは普段の何倍も目を見開き、箸を手に取る。
「行くぞ……!」
その一時間後、某アイスショップに入り浸る闇色の髪の美少年の姿が。
目撃情報がレイズたちの耳に入るのに、そう時間はかからない。
当時のリゼルは、とにかく、全身全霊で口直しに勤しんでいた故に、(彼らにからかわれるという)その後にダメージまで頭が回らないのであった。