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26話 続く攻撃

26話続く攻撃、101のエピソードと同じです。「シトエン、動くな!」


 窓枠や馬車の把手辺りは完全に破壊されていたが、馬車自体はまだ持ちこたえている。車輪に壊れもない。


 シトエンの状況を確認したいが、馬車を止めたらそこまでだ。


「止めるな! 速度を上げろ! ここを抜けろ!」


 馭者に命じると、馭者はしっかりと座り直した。馬を励まし、釣り竿のように長い鞭を振るうのが見える。馬車は勢いを上げた。


 途端に、後方で豪雨のような音が鳴り響く。


 ひやりとして振り返るが、ぎりぎり馬車の後ろをクロスボウの矢が軌跡のように射抜いていた。


 くそっ。連射してきやがった! あと何射準備している⁉


「クロスボウですか⁉」

「火薬の臭いはしない! 屋根の上に金属の光を見たっ。クロスボウだろう! 次、準備されていたらまずい!」


 追いついてきたラウルに言ったとき、三射目があった。

 悲鳴は後方から。


 三台目の馬車だ。

 首をねじって確認する。


 一部、馬車は破損したようだが馭者が馬をなだめすかして走らせようとしているが見える。俺は怒鳴った。


「来い! 速度を落とすな!」


 聞こえているかどうかはわからない。身振りとハンドサインを送る。馭者は大きくしなやかに鞭を振るった。止める気はないらしくてホッとする。


 そして耳を澄まし、目を光らせる。

 だが次の攻撃はない。


 クロスボウは強力な破壊力を持つゆえに、巻き上げに機械が必要になる。人力では無理。だからこそ一射、一射に時間がかかるし、設置場所に準備がいる。


 一射必中。それでこそクロスボウの意味がある。

 その必中を逃げるためには高速でこの場を移動するしかない。


「ラウル、先頭に行け! もっと速度を上げさせろ!」

「承知!」


 ラウルが馬に鞭を入れ、前傾姿勢を取って加速したのを見送り、少しずつ少しずつ手綱を引いて馬車へと近づける。愛馬と違い、黒馬は慎重だ。特に自分の主が先に行ってしまったいま、俺の指示を聞くよりラウルを追おうとはみを噛んで唸る。


「大丈夫だ、あとでお前の大好きなラウルが来る」


 なんとかなだめすかし、馬車へと誘導しようとするが……。


 うまくいかない。

 仕方なく、だいぶん距離がありつつも大声を張った。


「シトエン! 返事だけしてくれ!」

 下手に俺に合図を送って狙われてはかなわない。


「だ……大丈夫ですっ。メイル嬢も!」


 意図が伝わったのか、馬車からは声が聞こえてきた。


 目を凝らすと、向かい合う席の空きスペースにふたりして身を寄せ合っているようだ。いや、シトエンがメイルに覆いかぶさるようにしている。メイルは怯えているのか泣き声だけ聞こえていた。


「じっとしていろ! このまま突っ切る!」

「わかりました! サリュ王子もお気をつけて!」


 後ろも気になるが、と首をねじると、沿道に待機していたアリオス王太子の護衛たちが騎乗して保護しているようだ。


「サリュ王子! ラウルさんに指示されて来たよ!」

「これは何事⁉ 大丈夫なの!」


 聞きなれた声が前方からした。


 見やると、ロゼとモネだ。

 それぞれ見事に馬を操りながらやって来る。


「シトエンの馬車を守れ!」


 即座に命じる。説明なんてあとだ。この際守り手は一人でも多い方がいい。

 やれやれ、と額の汗を拭うと。


 ぐい、と手綱を引かれた。


 おお⁉ と姿勢を立て直す。てっきりモネとロゼの騎馬に黒馬が警戒したのかと思った。


 だが違う。

 黒馬が警告のようないななきを上げ、馬車から離れようと斜めに向かって走ろうとする。


 どうした。なににおびえた⁉


 手綱を繰り、なんとか指示を伝えようとする俺の上空を。

 黒い、影が飛んだ。


 顔を上げる。


 人だ。

 ひとり、ふたり。

 いや、三人か⁉


 別荘の屋根から駆け下り、疾走する馬車の屋根にひとり、しがみついた。


 馬車が大きく揺れ、車輪が片輪で疾走する。

 馬車から悲鳴が上がるが、残りのふたりは馭者へと取りついた反動で、両車輪が地を噛む。


「な……っ!」

 馭者の悲鳴が上がった。


 しまった! 馬車を止められる!


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