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060 SS03 女子会です。

第36話、女の子たちが暴走した日の夜の話です。


 夜も更けた頃、村の若い女性たちは教会の礼拝堂に集まっていた。

 年頃でパートナーのいない女性が勢ぞろいだ。


「集まりましたね」


 スージーが真剣な面持ちで皆に語りかける。


「今までは口を出しませんでしたが、昼間のアレはやり過ぎです」


 ――昼間の一件。


 ナニーから始まり、みんなでアレクセイに群がった件についてだ。


「分かってますね、ナニーさん」

「はい……ごめんなさい」


 名指しで言われたナニーはいつもの元気で軽い調子は鳴りを潜め、しゅんと小さくなっている。

 そして、他の子たちも便乗してしまったことを思い出し、静かに反省する。

 スージーには逆らってはならないという共通認識が広まった瞬間だった。


「とはいえ、基本的に皆様がアレク様にアプローチすることに関しては、私は咎め立ていたしません」


 スージーがアレクセイと特別な関係であることは誰もが知っている。

 その間に割って入るのを、スージーは快く思っていないのでは――それが彼女たちの心配事だった。

 しかし、本人の口から否定され、安堵の空気が広がる。


「ただ、最低限のルールというものがあります。今回集まってもらったのは、それを明文化し、知っておいてもらうためです。いいですか?」


 スージーの問いかけに静かに頷く。


「では、アレクセイ様三原則をお伝えしますっ!」


 シーンと静まり、皆の視線がスージーに集まる。


「第一原則。アレクセイ様に誠心誠意尽くしなさい」


 ズバリっと、スージーは人差し指を立てる。


「下心を持ってはいけません。領主様のめかけになれば便宜を図ってもらえる――そのような邪心は捨て去りなさい。己の愛情を、身体を、人生を、すべてをアレクセイ様に捧げるのです。その覚悟がない者は、今すぐここから去りなさい」


 軽い気持ちで来ていた数名が立ち上がり、そそくさとこの場を後にする。

 残った面々の覚悟ある表情に、スージーは満足気に頷く。


「皆さんの覚悟、受け取りました」


 スージーは満足げに頷く。


「第二原則。アレクセイ様の妨げになってはならない」


 続いて、中指も立てる。


「私たちの役目はアレクセイ様をサポートすることです。暴走して、邪魔することがあってはなりません」


 スージーは一同を見回す。

 皆、理解したようだ。


「第三原則。他の子の邪魔をしたり、足を引っ張ったりしてはならない」


 最後に薬指。


「誰かを貶めて、自分の立場を上げる――普通の男性相手ならばそれは有効な手段かもしれません。ですが、アレクセイ様の場合、むしろ、逆効果です」


 数人の女性の心臓がドキリと鳴る。

 見に覚えがあるのだろう。


「ご安心ください。アレクセイ様の愛情は限りがありません。誰かを愛したからと言って、あなたへの愛情が減るわけではないのです。それはもう、皆さん、知っているのでは?」


 たしかにそうだ――。

 アレクセイから好意を向けられた皆が、それを理解する。


「アレクセイ様は天です。どれかの星を光らせるために、他の星をないがしろにしたりはしません。どの星も等しく照らし出す――それがアレクセイ様なのです」


 聴衆の間に自信が生まれる。


 ――あの子の方が私より可愛い。

 ――私はもう若くないから。

 ――内気な私は他の子に先を越されちゃう。


 みなのネガティヴな感情が消え去った。


「私たちは競争相手ではありません。同士なのです。ともにアレクセイ様を支えていきましょう」


 スージーの言葉に、誰からともなく拍手が沸き起こる。

 それを見て、スージーも満足したようだ。


 この晩、ウーヌス村の女性たちの間に連帯が生まれたのだった――。

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