表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/73

025 二週間たちました。トォメィトゥの実がなりました。

【第3章あらすじ】


・ウーヌス村の現状を確認。農業生産力がピンチ。

・同じ顔の農夫五人組。タロ、ジロ、サブロ、シロ、ゴロ。

・土壌調査。表層の土壌は最悪だけど、三メートル掘ったら良質な黒土が出てきた。あと、ジャイアントワームも。

・農業改革計画

 (1)ジロの【怪力】で耕す。

 (2)シロの【鑑定(鉱物)】で土を分析。

 (3)タロの【土壌改良】で土を良くする。

 (4)ゴロの【植物栽培】で世話をする。

 (5)ジャイアントワーム養殖場で魔石とワーム肉をゲット。

・【助祭】のキリエに村人に文字を教えることを依頼。キリエはドジっ子。

・【兵士】の少年ニクスと模擬戦。

・リシアがトリートメントシャンプー開発、ご褒美にシャンプーしてあげる。


 ――アレクセイがウーヌス村に来てから二週間。


 朝食前の時間、村人たちは新しく拓かれた畑に集合していた。


「リシア、君の番だよ」


 アレクセイの言葉にリシアは我に返る。

 見とれていたのだ。目の前に広がる信じられない光景に。


 つい先日まではなにもなかった荒れ地。

 昔は畑があったそうだが、村人だけでは手が足らず長年、放置されていた場所。

 固く、痩せた土地。


 それがたったの二週間で――。


 遠くの方は耕されたばかりの、黒く、柔らかく、豊かな土。

 近づくに連れて、緑が濃くなっていく。

 黒から緑へと変わるグラデーション。

 その一番手前では朝日に照らされた緑葉のトォメィトゥが、鮮やかな赤い実をいくつもつけている。


 リシアは手を伸ばし、みずみずしい果実をひとつ、つかみ取った――。


「みんな、ちゃんと行き渡ったかな?」


 アレクセイの問いかけに、村人たちは赤く熟した実を高く掲げる。

 それを満足そうに確認してから、アレクセイも実をもぎ取る。


「僕がこの村に来て二週間。みんなよく頑張ってくれたね」


 放置されていた広い土地の八割方が畑になった。

 体力がつき、今までの農作業を半分以下の時間でこなせるようになった村人たち。

 彼らの総力をかけて開墾をした結果だ。

 畑の広さは今までの三倍以上に拡張された。

 最近植えたばかりの場所もあるが、一ヶ月後には美しい緑のカーペットになるだろう。


「とくに頑張ってくれた者を表彰したい。まずはジロだ」


 皆の視線がジロに集まる。


「ジロは【怪力】で固い土を耕してくれた。ジロがいなかったら、そもそも、短期間での開墾は不可能だった。皆、ジロに拍手を」


 大きな拍手。

 アレクセイは続ける。


「そして、ゴロ。野菜がすくすくと育ち、わずか二週間で実をつけたのはゴロの【植物栽培】のおかげだ」


 続いて――。


「それに土を育ててくれた三人にも感謝したい。タロの【土壌改良】、シロの【鑑定(鉱物)】、リシアの【調合師】。三人は協力して、最高の肥料を作ってくれた」


 人だけではない――。


「ドゥランテも耕すのを手伝ってくれた。彼女も大切な村の仲間だ」


 馬のドゥランテがヒヒンと高く鳴く。

 そして、最後に――。


「皆、あらためて彼らに拍手を」


 しばらく続いた拍手が鳴り止み、アレクセイが話そうとしたところで、アントンが手を挙げた。


「ご領主様、これもすべてご領主様のお導きがあったからこそです。我らに力を授けてくださり、ありがとうございました。皆の者、我らの新しき領主アレクセイ様に感謝の礼を」

「「「「「ご領主様、ありがとうございます!!!」」」」」


 何倍もの大きな拍手が沸き起こる。

 放っておいたら、いつまでも続きそうなので、アレクセイは手を挙げて止めさせる。


「このトォメィトゥは、開拓の最初の成果だ。みんなで分かち合おう」


 アレクセイはトォメィトゥにかぶりつくと、村人たちもそれに続いた。


「美味しい!」

「美味いっ!」

「あまいっ!」


 口元からこぼれる果汁を気にせず、村人たちは喜びを噛みしめる。


「このまま食べても美味しいけど、ナニーの手にかかればもっと美味しくなる。ナニー、もうアイディアが浮かんでるでしょ?」

「はい~。スープに、ピザに、ソースにしても美味しいですね~。皆さん、楽しみにしてくださいね~」

「ナニーちゃん、いつも美味しいご飯ありがと~!」

「ナニーちゃんのおかげですごい元気になったよ~!」

「ナニーちゃんの料理で、毎日いっぱい働けるよ~」

「「「「「ありがと~!!!」」」」」


 この二週間でナニーは村の人気者になった。

 ちっちゃい身体にコロコロ笑う愛くるしい姿。

 マスコットキャラ的なポジションだ。

 いつも元気で、笑顔を浮かべ、さらには美味しい料理を作ってくれるのだ。

 皆に愛されるのも当然であった。


「お野菜はいろんなバフ効果が強いんです~。だから、好き嫌いせずにちゃんと食べてくださいね~」

「ボク、がんばる~」「わたしも~」

「「「「「は~~い!!!」」」」」

「どんどん皆さんを健康にしていきますからね~。身体が強くなって、そのうち、魔法も使えるようになりますよ~」

「おお」


 ナニーのギフト【管理栄養士】によって判明したのだが、穀物だけでなく、いろいろな野菜とモンスター肉をバランス食べるのが、一番バフ効果が高い。

 だから、アレクセイは麦などの穀物ではなく、野菜栽培を優先させたのだ。


「空き地の開拓は、あと数日で終わる。これからは森の木を伐採しながら、農地を広げていく。今までよりも大変だが、みんなの力を貸してくれ」

「「「「「は~~~い!!!」」」」」

「さて、みんな、胃も動き出しただろう。広場に戻って朝食だ。今日も、頑張って開拓していこう」

「「「「「は~~~い!!!」」」」」


 アレクセイは皆の笑顔を見て思う。

 とりあえず、ひとつ開拓の成果を上げることができた。

 小さい一歩かもしれないが、それでも、間違いなく一歩目を踏み出した。。


 ――この一歩が『ベーシックインカム』へと続いている。


 遠い道のりだけど、一歩ずつ進んでいく。

 アレクセイは決意を新たにした。

次回――『キリエ先生は子どもたち文字を教えます。大きな生徒も二人います。』


楽しんでいただけましたら、ブックマーク、評価★★★★★お願いしますm(_ _)m

一人でも多くの人に本作を読んでいただき、ベーシックインカムを広めたいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ