酸素にならない恋がしたい
酸素にならない恋がしたい。
私はいつも、優しい人に依存してしまうから。
あなたでしか息ができなくなったら、
あなたを失った時に、私は死んでしまうから。
もらった言葉を湿気させる、水っぽい空気。
脳味噌と耳をぐちゃぐちゃとかき混ぜる、豪雨の音。
数えきれないほど脳内で反芻させた、大好きなあなたの声。
青白い光を放つ四角形には、今日も疎外と孤独と絶望が映っている。
どうして、だろう。
私の居場所は、確かにそこにあったのに。
今はもう、存在価値なんて一ミリもないみたい。
酸素にならない恋がしたい。
もう、優しい人に依存したくないから。
生物が酸素を失ったら生きていけなくなるように、
あなたを失ったら、生きていけなくなる自分が嫌いだから。
狭い四角形たちに詰め込んだ、たくさんの可愛い服。
お菓子の空き缶の中できらめく、欲望の残滓。
冷たいぬくもりの下に隠した、お菓子のごみとぬいぐるみ。
青白い光を放つ四角形には、今は私だけの脳内麻薬が映っている。
どうして、だろう。
人の居場所は、人でないといけないと思っていたのに。
今はなぜか、かりそめの桃源郷に私の居場所があるみたい。
酸素にならない恋をした。
脳内麻薬は消えたら追加すればいいし、足りなければ増やしてもいい。
禁断症状もつらくない。
中毒症状もこわくない。
失っても息はできるし、きっと失うこともない。
何も言わずに私の元を去ってしまうあなたより、
辛いときいつもそばにいてくれないあなたより、
私の欲しい言葉をくれたことのないあなたより、
身勝手で不安定で消極的で大好きで大嫌いなあなたより、
きっとずっと、ましだよね?
そうだよね?
これでよかったんだよね?
…ねえ、何か言ってよ。




