【エピローグ】
◇エピローグ 『あの空の向こうに』
温かい日差しと心地よいそよ風が眠気を誘う。
ふと、空を見上げると雲がひとつ浮かんでいた。
不思議そうに私は草原の真ん中でその雲をじっと見つめていた。
「ばぁば!見て!みて!」
一人の幼女が私の方へ向かって手を振っている。
私は不思議に思ったが深く疑問にとらず手を振り返した。
「はいはい、今行きますよぅ」
私が手を振り返した直後背後からそう温かい声がした。
私よりずっと身長の低い老婆は杖を突きながら幼女の方へゆっくりと歩いている。
私もつられるように二人の後をおった。
「ねぇ、今日もばぁばの昔話聞きたい!」
老婆はゆっくりと微笑んで一言「そうだねぇ」と呟いた。
「じゃあ、この本の話でもしようかねぇ」
そういうと老婆は自分の懐からふるい付箋だらけの手帳を取り出した。
「それって本なの?」
「本だよぅ、これも立派な本。それと今からばぁばが話すことはママには秘密だよ。いい?約束できる?」
「できる!」
老婆は草原の草むらの上にゆっくりとしゃがみ、その横にぴったりとくっついて幼女も座った。
そして老婆は本を開けず語りだした。
『昔むかし、一人の神様がいました。
その神様はとても誠実で悪が絶対に許せませんでした。
そんな神様もずっと一人は寂しいので自分の話相手になってくれる「人間」を作り出しました。
しかし、神はとても賢かったため人間の話はつまらないと感じ、自分の魂を少しだけ人間に与え知恵をつけさせました。しかし人間が一人ではかわいそうだと思った神はもうひとつ人間を作り出しました。
そして同様に自分の魂を少しだけ与え知恵をつけさせました。
ある日その二人から人間が生まれました。
そして神は彼らにとって自分はもう用がないのではないのかと思った神は人間から自分と神界の記憶を消し、まだ未開発だった地球に彼らを送りました。
そして人間は増え続けました。
ある日神が久しぶりに人間の様子を見ようと地球を覗いた時、人間はけんかをしていました。
神はそれを悪だと思い、聖水をかけて悪の人間を流してしまいました。
そして神はこれからは地球を見守ろうと思いずっと人間を見ていましたとさ。
おしまい』
老婆は話終えると幼女はあまりわかっていないような感じだった。
「ばぁば、人間って何?」
「そうだねぇ、ほとんどママやパパたちと変わらない人のことじゃない」
「メアリ~?どこにいるのもうお昼ごはんよ」
「あ!ママがよんでるばぁば、先に行くね」
そう言って幼女は草原の先に走って行ってしまった。
「さてと、先ほどからそこにいらっしゃるあなたはいったいどこのどなたで?」
そういって老婆は目を細めて私の方へ歩み寄ってきた。
「え、いや・・・・その。私もわからなくて。
それより私の事見えているんですか?」
「あたしには見えていたよ。でも、メアリには見えてなかったみたいだね」
そういって老婆は近くにあった木製の横長ベンチに腰を下ろした。
「まぁ、あんたもそこにたってないでまずは座りなさい」
私は言われた通り老婆の横に座った。
「今日は空がきれいだね」
「そうですね、こんなに近くに雲があるなんて珍しいですね。
まるで空の上にいるようですもんね」
「ああ、そうだね、だってあたしたちは本当に空の上にいるんだからねぇ」
私は思考が固まった。
「え?今なんて?」
「え?聞こえなかったのかい。その年なのに耳が遠いんだねぇ。
今あたしたちは本当に空の上にいるんだから。」
「え?もしそれが本当ならここはいったいどこなんですか?」
「無限浮遊都市国家メトロポリス、その最果ての地ベガンザ。
そうあたし(私たち)は呼んでいる」
老婆が私にそう言った瞬間、私は誰もいない学校の屋上で横になって空を見上げていた。