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作家と殺し屋(台本)  作者: りんかさん
1/3

お互いの思考が分かるまで

ちょいと長編の台本を書いてみました。3部構成となっております。是非読んでいただけると嬉しいです。

女「………ここ、どこよ。」


男「ああ、やっとお目覚めか。まさかここまで薬の効きがいいとは思っていなかった。」


女「………あなた、誰よ。」


男「ただのお前のファンだ。」


女「私の?……かなり過激なタイプのファンなのね。さらって椅子に縛り付けてまで私に会いたかったのかしら。」


男「ただ会うだけじゃつまらないと思ったんでね、せっかくだから俺の元に来てもらった。」


女「それで?私は帰してもらえるの?来週までの仕事が二本も残っているのだけれど。」


男「悪いが俺の気がすむまで帰すつもりはない。天才作家のお前がどんな思考をしているのか、それを知り尽くすまではな。」


女「あなた、さっきから言っていることがかなり気持ち悪いわよ。正直ゾッとしてるんだけど。」


男「なんとでも言え。俺も自分が今している行動の異常さは理解している。ただ、もう俺には時間が無い。このまま終わりを迎えるなんて御免だ。」


女「時間?はぁ、まったく話が見えないわ。……そんなことよりこの縄、ほどいてくれない?」


男「ほどいたら逃げるだろう。お前をさらおうとした時はかなり暴れられたからな。俺が仕事してきた中で顔にアザをつけられたのはお前が初めてだ。」


女「そりゃ、街を歩いていて後ろからいきなり布を被せられたら、誰だって抵抗するに決まってるじゃない。と言うかあなた、こういう人を誘拐するようなこと、初めてじゃないのね。」


男「さぁな、あまり俺の事を詳しく話す気はない。」


女「へえ……まあどうでもいいわ。そんなことよりこの縄、ほどいて。」


男「お前、さっきの話聞いてたか?」


女「私の思考が知りたいんでしょう?私がどういう考えを持って、どういう行動をするのか知りたいんでしょう?それなら、縄をほどいて自由にさせていた方がより深く、知ることが出来るんじゃないかしら。」


男「………なるほど。」


女「それにあなた、私を帰す気がないんでしょう?そこを無理やり逃げ出そうとしたところで、か弱い私じゃすぐ捕まるのがオチよ。こうなった以上私は逃げも隠れもしないわ。」


男「自分をか弱いと称する女は神経が図太いんだ。……まあいい、分かった。お前の言い分を聞いてやろう。但し、逃げ出そうとするなら容赦はしない。」


女「分かったわよ。さぁ、早くほどいて。」


男「……はぁ、これで満足か。」


女「ええ、後は原稿用紙と鉛筆があれば完璧ね。」


男「どういう…ことだ?」


女「さっき私、来週までの仕事が二本あるって言わなかったかしら。どうせ帰して貰えないならここで仕事をするしかないじゃない。」


男「お前、この状況がどういうことか分かってるのか?」


女「ええ、分かった上で言っているのよ。別に誘拐されているからって執筆作業が出来ないわけじゃないわ。それに、とてもいいネタを貰ったから、今書かないと気が済まないの。早く用意してくれないかしら。」


男「この状況で誘拐犯に指図できるお前の思考が理解できない…。まさかこんな図太い女だったとは。」


女「それを理解するためにあなたは私をここに連れてきたのでしょう?それに、好きな作家の執筆作業が見られるなんてファンとしてはすごく有難いことなんじゃない?見逃さない手はないわよ。」


男「ぐっ…ああ分かった!原稿用紙も鉛筆もなんでも持ってきてやる!少し待ってろ!」




男「……ほら、持ってきてやったぞ。原稿用紙と筆記用具一式。」


女「あら、ありがとう。…その手に持っているお盆は何かしら。」


男「ああ、飯だ。もうここに来て6時間は経っている。窓のカーテンは締め切っているし、この部屋には時計もないから分からなかっただろうが、今はもう夜の7時だ。」


女「それを、私に?」


男「その為に持ってきた。お前、生活習慣がかなり乱れているだろ。痩せて頬がこけているし、肌もボロボロ、髪も傷みまくってるじゃないか。ここに連れてきた以上、執筆活動に影響が出ないように食生活も睡眠も何もかもキッチリ見てやる。」


女「私、本当に誘拐されているのよね?」


男「そうだ、誘拐されているんだ。」


女「意外と常識的だったからつまらないとは思っていたのだけれど、やっぱり変ね、あなた。」


男「ん?何を言っているんだ?俺は至って普通のことしか言っていない。ここの机に置いておく。俺は風呂を沸かしてくるから、その間に食べておけ。」


女「……お風呂まで用意してくれるの?至れり尽くせりとは正にこのことね……。あっ、まさかあなた、私を油断させておいて、あわよくばノゾキをするつもりね?そう易々とは騙されないわよ。」


男「馬鹿か。俺はお前の裸体を見たところで何とも思わないし、そもそも女には興味が無い。興味があるのはお前の思考だ。それ以外はどうでもいい。」


女「それはそれでまた微妙に腹立つわね……。」


男「分かったらさっさと飯を食え。あと、味噌汁は出来た直後に持ってきたからかなり熱いぞ、気をつけろ。」


女「面倒みが良すぎる…しかもこの料理、手作りなのね…。お味噌汁にご飯、白身魚の南蛮漬け、ほうれん草のおひたし……バランスもしっかり考えられている……。」


女「あの人、私の思考が理解できないと言ったけれど、私にはあなたの方が理解できないわ。」

読んだよ!使ったよ!とか、感想とか、コメントにくれたりすると飛び跳ねて喜んだり、それを肴にビールを飲んだりします。動画にしたよ!配信するよ!とか言われたらどんな配信アプリでもどんな動画サイトでも見に行きます!

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