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旅立ち

 ついに旅立ちの日がやってきた。


「長年暮らしたこの家ともついにお別れかぁ〜なんだか感慨深いなぁ」


 年中働いていたため家では寝るくらいだったが流石に長年住んできた家に愛着はあった。

 疲れ果てて寝て・・・帰ってきて寝て・・・またまた疲れ果てて寝て・・・


「全然いい思い出が無いじゃないかっ・・・!」


「ま、まぁトーマさん。家に罪はありませんよ」


「そうだよね。悪いのは俺だよね・・・」


「そ、そういう訳では無いですっ!」


 ミーアはさらに落ち込んでしまったトーマを前にあたふたする。


「でもこれからは超絶忙しい仕事をすることなく自由気ままに生活するんだ!よし出発しよう!」


 トーマはなんとか自分を奮い立たせて旅立つのだった。



 二人の旅は順調に進み7日かかってようやく船が出る港町までやってきた。


「はぁ〜、ずっと馬車に乗っていたから体がカチコチだ!」


「は、はいカチコチです・・・」


「船が出るのは5日後らしいから少しいい宿をとってゆっくり休もう!」


「柔らかいベットで眠れるのは正直嬉しいです」


「では早速宿を探そう!」


 トーマたちはそれから少しいい宿に入り1階に併設されているレストランで港町特有の魚介料理に舌鼓を打つのであった。


「いい宿だから部屋にお風呂があるのはいいねぇ〜。ミーアさん先に入ってきてよ」


「そ、そんな!奴隷の私が主人より先に入ることなんてできません」


「いやいや、淑女にこんな旅で汚れた男が入った後のお風呂に入らせることなんてできません。先に入ってくださいこれは命令です」


「むむむ・・・ありがとうございます。そこまで言っていただけるなら先に入らせていただきますね」


「そう、それでいいのです。俺は荷物の整理でもしてるよ」


 そう言いながらトーマの内心は冷静ではなかった。

 

 「ど、どどどどどうしようっ、ベットが二つあるとはいえ健全な男女が一つの部屋に寝泊まり!し、ししししかもお風呂に交互に入るなんてっ!なんてパラダイスなんだ胸のドキドキが止まらないし、しかも手汗がすごいっ!!あぁどうしよう俺どうにかなっちゃいそうだあああ」


 トーマはミーアがお風呂に入りにってからベットの上で悶えていた。馬車の旅では基本的にボロ宿に泊まり体の汚れは濡れた布で拭くだけだったこともあり現状はトーマにとって刺激が強すぎた。


 ガチャっと音がして振り向くとそこから頬を上気させて濡れた髪で服が濡れないように肩に布を置いたミーアが満足げな顔で出てきた。


「あっ・・・」


 ミーアに見惚れたトーマは思わず声を出してしまった。


「?どうかされましたかトーマさん」


「な、なんでもないよ!湯加減はどうだった?」


「はい。とっても良かったです。先に入らせていただいてありがとうございました。お次はトーマさんがどうぞ」


「あぁ、入ってくるよ」


 トーマは内心のドキドキが表情や態度に出ないようにすまし顔で風呂場へ去っていった。


「淑女が入った後のお風呂・・・ゴクリ」

 完全に変態おじさんである。




「の・・・のぼせた・・・」


 トーマは湧き上がってくる妄想をなんとか落ち着かせようと瞑想をしていたらのぼせてしまった。


「随分長いこと入られてましたもんね。大丈夫ですか?」


「す、少し休めば大丈夫だと思うから気にしないでいいよ!」


「わかりました。私は荷物の整理をしておきますね」


「あぁ、ありがとうミーアさん」


 

 チュンチュンチュンチュン。小鳥のさえずりが窓から聞こえてくる。


「ううん・・・朝か・・・朝・・・か?朝かっ!?」


 トーマがはっとしながら横を向くと隣のベットでミーアはすやすや寝ていた。

 そう、トーマはミーアに初めては大切にするべきだと言いながらもむふふあははなことを少し期待していたのだがのぼせてしまって休んでいたせいでそのまま寝落ちしてしまったのである。


「あぁ・・・なんとも言えない朝だ。どうせ何もなかっただろうけどなんだかもったいない・・・」

 トーマは独りごちた。


 それからしばらくてミーアが起きてから二人は街の観光をすることにした。


「実は私、海は初めてなんです。なんだか不思議な香りがするんですね」


「海は初めてだったんだね。まあ近隣に住んでいなきゃそんなに来ることなんてないよね。海の匂いもしばらくすると慣れると思うよ。これから数日時間はあるし初めての海なら釣りでもして過ごすのはどう?」


「釣りですか。やったことないですが興味はあります。昨日レストランで食べた魚は川魚と比べられない程おいしかったので」

 さすが家事が得意なミーアである。



 それから数日、トーマとミーアは釣りや観光、海鮮料理を堪能し、ついに船が出港する日がやってきた。

 港町にきてから毎晩ヘタレなトーマは悶々としていたとか。


 港に着いた大きい船に乗る二人。ミーアは船が初めてなのでもの珍しそうに見ていた。


「船ってこんなに大きいんですねえ」


「そうそう、ここ数日は天気が良いけど風が強い日なんかは波が高くなるから大きい船じゃないと長距離移動はできないんだ。船が揺れると船酔いになりやすいからそういう時は遠くを見ると良いよ」


「なるほど。勉強になります」


「おっ、そろそろ出港だね。寝る場所なんかを見にいこう」


 そう言って船旅が開始したのだった。


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