これからの計画を立てる
「おはよう。ミーアさん」
「おはようございます。トーマ様」
トーマが起きた頃にはミーアはもう起きており朝食の支度を開始していた。
ちなみにトーマは今まで通り寝室、ミーアはリビングで寝ている。
あぁ・・・なんだろうこの状況。朝起きたら可愛い女の子が出迎えてくれてさらに朝ごはんまで作ってくれるなんて・・・。控えめに言って最高じゃないか?
トーマは朝から幸せを噛み締めた。
朝食を食べ終わった後にトーマはミーアに切り出した。
「今日はこれからの予定を決めようと思う。昨日伝えたと思うけど恥ずかしながら俺は今無職なんだ。そして故郷に帰って暮らそうと思ってる。ミーアさんには悪いけどそれに付き合ってもらうことになる。昨日寝る前に考えたんだけど、一番最初にやるべきことはまずミーアさんの長旅に耐えられる分の服や生活用品を揃えることだと思うから今日は差し当たって買い物に行こうと思うけどどうかな?」
「昨日おっしゃっていた故郷に帰る話ですね。もちろん私は奴隷ですのでお供させていただきます。服や生活用品に関しては以前のご主人様からいただいたものがありますので少し買い足していただければ足りると思います」
「わかった。じゃあ食器の片付けが終わったら買い物に行こう。買い物が終わったら今後のことについて話し合おう」
こうして買い物に行くことが決まった。
トーマとミーアは片付けが終わって家から歩いて数十分の場所にある街中の商店街にやってきた。
「ミーアさん。欲しいものは色々あると思うから遠慮なく買って欲しい。正直お恥ずかしながら俺は今まで女性と付き合ったことすらなくてね。何が必要かわからないんだ。だからこの買い物はミーアさん主導と言うことでお願いするよ」
トーマはここで女性と付き合ったことがないことをカミングアウトしつつミーアに買い物のお願いをした。なんとも頼りない男である。
「かしこまりました。ではまず洋服屋に行ってよろしいでしょうか?長旅となるとスカートでは心もとないのでズボンを購入したいと思います」
「あぁ。わかったよ。あと雨に打たれる可能性もあるから雨具も買おうね。洋服屋はあっちの方にあるから行ってみよう」
こういった感じで買い物は昼食を挟んで夕方まで続いた。
ちなみにトーマはこれがデートの感覚なのかなぁと今回の体験を噛み締めると同時に女性の買い物は長くて荷物が多いことを思い知るのだった。
「申し訳ありませんトーマ様。こんな時間まで買い物をしてしまって」
「いや、必要なものを買う大事な時間だったから気にすることなんてないよ。もうこんな時間だから一休みしてから夕飯にしよう」
トーマは見栄を張って荷物を全て持ったため腕と脚がパンパンだったがそれをミーアに悟らせないように話すのだった。
夕飯が終わりひと段落した頃、食後のお茶を飲みながら今後の計画について話し合いを開始した。
「俺の故郷に帰るには長旅と言ったけど、場所はここから南にあって陸路を馬車で1週間程、そこから船で海を5日程移動したところにある漁業と農業が盛んな小さな島にあるんだ。移動の準備が整って馬車の手配がついたら早速出発しようと思う」
「かしこまりました。今日の買い物で私の必要なものは全て揃ったと思いますので、荷造りなどやることがあれば申し付けください。私が思っていたよりトーマ様の故郷は遠いところにあるのですね。てっきり馬車だけの移動かと思っておりました」
「そうなんだよ俺の故郷は遠くてねぇ。島を出てきた頃はどこに何があるのかよくわからなくて、大きい街はどこにあるのかと旅をしながらこの街に辿り着いたんだ」
トーマはこの街に来た経緯を語り出した。
「この街に来た時に、あぁこんな大きい街で働いてみようって思ってね。その時に今まで働いていたギルドで事務職を募集していてね。【読み書きさえできれば誰でもOK!初心者大歓迎!休みもたくさんあります。先輩からの手厚い指導がありますので気軽にお声かけください!】って書いてあるもんだから、応募してみたんだ。そうしたらとんとん拍子で働くことになってね、16歳から今の28歳になるまで12年間働いたんだ」
「そうなんですか。12年間も勤められたのになぜ辞めることになったのですか?」
「それが募集内容と全然違う職場環境でねぇ。休みは年に1日程度。早朝から深夜まで働かされて。体力はあったからなんとかやっていけてたんだけど俺によくしてくれていた先輩が体力の限界で体調を崩してしまったとたんクビになってしまったんだ。それを見ていたら自分もそのうち同じようにされるんだろうなぁと気がついて辞めることにしたんだ。正直ミーアさんの身の上の話を聞いたあとじゃ大した話じゃないんだけどね」
トーマは苦笑いしながらギルド職員を辞めた理由を説明した。
「奴隷の私が言うのもあれなんですが、そんな職場が存在するのですね・・・」
「しかもギルド職員がそんなだなんて誰も思わないよねえ、でも忙しいおかげでお金だけは溜まっていたからミーアさんを買うことができたんだ」
「なるほど。貴族以外の方が奴隷の買うのは珍しいと店の人が言っていたのですがトーマさんにお金があったのはそう言った理由があったんですね」
「そうそう、まあでも今は恥ずかしながら無職になってしまったから収入は無いんだけどね!故郷に帰ったら二人が食べていける分は主人の義務として働いて稼ぐから安心して欲しいな」
トーマは少し照れながら主人としての義務を約束した。
「はい、ありがとうございます」
「明日も出かける予定があるから今日はもう寝よう」
恥ずかしくなってきたトーマは会話をやめて寝ることにした。
「はい、おやすみなさいトーマ様」