奴隷商館へ行く
トーマは街の外れにある大きい屋敷のような奴隷商館に訪れオドオドした様子で挨拶をした。
「こ、こんにちは〜」
「いらっしゃいませ。奴隷をお探しですか?」
執事のようなメガネをかけた白髪混じりの50代程に見える男性が現れ、慣れた様子で対応する。
奴隷は高価であるし、買うのは基本金持ちの貴族だ。そのため奴隷商は丁寧に接客をしてくれる。
「あ、あのっ家事ができる女性の奴隷が欲しくて伺いました」
「ふむ。家事のできる女性の奴隷ですか。年齢はどのくらいがよろしいでしょうか?」
「で、できれば20歳前後が良いです」
「20歳前後となると・・・かなり高価になってしまうのですが、予算はどのくらいでしょう?」
「金貨5枚程です。如何でしょうか?」
トーマや一般家庭の年収は金貨2枚ほどだ。金貨5枚となるとそれなりの金額になる。
「金貨5枚なら購入していただくことが可能な奴隷が数人おります。今から連れてきますのでこちらのお部屋でお待ちください」
奴隷商は、トーマを別室への案内してから部屋を出ていった。
それから30分くらいがたっただろうか。思ったより待たされてトーマはドキドキしながら待ちぼうけていた。
「俺が奴隷を買うなんて・・・女の人と話すのは緊張するなぁ」
ガチャっと音が聞こえたため奴隷商が消えたドアへ目をやると奴隷商が3人の女性を引き連れてやってきた。
「大変お待たせしました。今私どもの商館で売ることができる奴隷を連れて参りました。人数は見ての通り3人で手前の者から金貨4枚、金貨5枚、金貨8枚となっております。少しお高い者もおりますが念の為お連れいたしました」
奴隷商はトーマに話しかけ、奴隷達に挨拶を促す。
「お前達を購入してくれるかもしれないお客様だ。手前の者から順番に自己紹介をして差し上げなさい」
3人がそれぞれ挨拶をしてくれたが最初の二人は終始俯いていてなんだか暗そうで、これから一緒に過ごしていきたいとは思えなかったが…。
トーマが目を引かせられたのは3人目の子だった。
「私はミーアと言います。家事が得意です。精一杯頑張りますっ!」
少しほわっとした愛嬌のある顔、綺麗な金髪のポニーテール、出るとこはそれなりに出てなおかつすらっとした体型。
あぁ・・・どストライクだ・・・。可愛いしスタイルも俺好み。精一杯頑張ってくれるだなんて健気で素敵だ。
俺の決断は今まで生きてきた人生で最も迅速だっただろう。精一杯頑張るだなんてこういった場面なら当たり前なの売り言葉のはずなのだが・・・
「ミ、ミーアさんが良いです。金貨8枚なら支払えるので、お、お願いします!」
トーマは愛の告白でもしているかのような胸の鼓動をなんとか抑えながら希望を伝えた。
「かしこまりました。お買い上げありがとうございます。申し訳ありませんが引き渡しの準備がございますので、ここにサインをしていただき明日もう一度同じ時間にお越しになって頂けますでしょうか。それと前金として半分の金貨4枚をいただくことになっているのですが今お支払いは可能でしょうか?」
「は、はい。大丈夫です。お願いします。ミーアさんもよろしくお願いします!」
なんだかとても緊張してトーマは震える手でそそくさと紙にサイン書き、金貨4枚を置いて奴隷商館を早足で出ていく。
「緊張して勢いで決めてしまったけど普通は数日考えてから決めるもんだよなぁ。ミーアさんの素性も聞かないで決めてしまったし・・・まぁ決めてしまったものはしょうがない。きっとミーアさんは良い子に違いない!」
勢いで決めてしまったことに対して反省しながらトーマは帰路につき自分の所持金について考える。
「予算は金貨5枚だったのに勢いで8枚も使ってしまった・・・俺の貯金は残り金貨2枚。それなりにあるけど帰りの路銀を考えるとかなり余裕がなくなっちゃったなぁ・・・」