プロローグ
俺の名前はトーマ。28歳の無職童貞、中肉中背、そこらへんにいそうな顔の男だ。
つい昨日までは街のギルド職員として働いていた。
「あぁ、やっとあのブラックギルドを辞めてやったぜ!これからは自由だ!」
そう。俺は昨日クソギルドマスターに辞表を叩きつけてきて晴れて無職になった。
16歳になって故郷の田舎を出てからずっと働いてきたギルドを辞めた理由は至極単純だ。あのギルドはひどい。あまりにもひどい。職員を人とは思っていない。朝のクエスト発注の段取りのため6時から働き、ギルドに併設されている酒場が閉まる深夜の1時まで働かされ、休みは月に1日程。ギルドマスターや上司達は一番忙しい時間が終わってから出勤し、冒険者達がクエスト達成報告に来る前の15時には帰っていく。受付嬢もイケメン冒険者とディナーにいくために受付の仕事が終われば我先にと帰ってしまうし、他の職員は忙しすぎて続かずにコロコロ変わってしまう。超絶ブラックギルドだ。
唯一の心の支えであった入ってからずっと俺のことを可愛がってくれて仕事のフォローまでしてくれていた先輩は先月ついに激務の末体調を崩し、それを理由にクビになった。
俺はあまり賢くない。これが社会のルールだと思って今まで文句も言わずに頑張ってきた。だけど先月先輩がクビになった理由を知ってついに気づいてしまった。
俺はこのままだと、童貞のまま死ぬまで働かされて、体力がなくなった頃に切り捨てられるのだと。(童貞は本人の問題では?)
辞めること決断してからは次に入ってくるだろう可哀想な職員のため大量のマニュアルを作成し、王都にあるギルドの総本山に内情があまりもひどいこと匿名で送っておいた。これで改善されればいいのだが・・・俺にはもうあそこで働く気力はないし次に来るであろう後輩君には悪いが他人の人生だ。なんとか頑張ってくれよ後輩君・・・・
「明日から何をしようかなぁ〜。もうこの街にいてもやることがないし・・・幸いお金を使う暇すらなかったし、貯金はかなりある。一度故郷にでも帰ってしばらくゆっくり過ごすかぁ」
両親は俺が成人となった16歳の年に流行り病で死んでしまったので帰っても誰かが待ってくれているわけでもないが、とにかく今はゆっくりしたいという気持ちとこの街から出たいという思いでいっぱいだった。
「よし!故郷に帰ろう!そしてのんびりスローライフを満喫しよう!」
トーマの故郷はここから陸路を1週間程、そこから船で海を5日程移動したところにある漁業と農業が盛んな小さな島国だ。
「両親もいなくなってしまったことだし、大きい街で可愛い女の子達と遊んで楽しく暮らそうなんて考えなければよかったなぁ・・・」
「帰るにしても、俺は家事ができない。幸い金もあるし家事ができる奴隷でも買って帰ろう!できればうんと可愛い子を。そして・・・あわよくばついに童貞を卒業して・・・むふふふ」
トーマは色々な妄想をしながら奴隷商館へ足を運ぶのだった。




