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カノジョとカレシ

お酒とかわいいカノジョ

作者: Wana-wana

「お前の恋人、美人だよな」

「え、この流れで急にそんな話になるの?」


宴席の終盤で、あまりにも脈絡のないコイバナが始まった。しかも、やり玉にあがるのは自分。


「しゃーねえだろ。他の連中がぶっつぶれて、俺とお前だけが残ってから、二時間たってるんだから」

「いやまあ、話題がなくなったのは確かだけど」

「だろ?で、あのレベルの美人が側にいるってのはどんな気分なんだ?」


日頃の俺ならめんどくさがって答えない質問なのだけれど、今は酒精で口が軽くなっていたらしい。


「美人って思うことが、ほとんどないからなぁ」

「おっ、それは見慣れたということか?」

「いや、美人というよりも、かわいいの方が強い」

「なるほどね」


友人はジョッキに残っていた酒をグイっと一気に煽る。俺もそれに習った。

そして、友人はいやらしい笑みを浮かべた。すげえいやな予感がする。


「何をたくらんでいる」

「いや、何も?それよりやっぱり酒精の力はすげえよな。お前が背後に気づかないんだもんな」

「え」

「どうも、いつもあなたの背後に。かわいいカノジョです」


うっそ……。


「なんでいるの?」

「俺が呼んだ」

「なんでさ」


しかし、色々と納得する。この友人があんなタイミングでコイバナを始めたのも、タイミングを見計らった上だったのだろう。死ねば良いのに。


「ひどいな君は。せっかくかわいいカノジョが、困っているだろう恋人のために駆けつけてやったというのに」

「いや、まあ、顔が見れて嬉しいんですがね。それより、困ってるって何に?」


少なくとも、俺は潰れていないので、わざわざ彼女を呼び出す必要はないはずだ。


「俺らだけで、こいつらを片付けるつもりか?」

「それに今回は、女性陣が全滅したらしいじゃないか」

「あー、確かにね」


野郎共は、最悪道端に転がしておけば問題ないが、女性陣はさすがに危険だろう。


「というわけで、私も飲むぞ」

「論理性皆無ぅー?」

「大丈夫だ。代金はあのハゲもちだ」

「一応、最上級生をハゲ呼ばわりはやめとこうね……」

「ついでに俺らのぶんもハゲもちにするぞ。あいつらのゲロの始末代だ」


友人もしれっと一番店で高い酒を注文し出した。俺もせっかくなので、一番高い肉を頼む。割りといつものことだ。まあ、20人の野郎共の汚ねえゲロ処理代と思えば妥当だろう。


「ところで」

「ん?」

「私のことをかわいいと言うのは、祖母かお前くらいだぞ」


恋人が急にそんなことを言い出して、思わず酒を吹き出した。忘れてたのに、蒸し返さないで欲しい。あ、鼻にはいった。


「ここで急にそんなこと言うのやめません?友人も見てるし」

「おう、俺は空気だからお構いなしに」

「いや、無理だからね!そんな手帳開きながら言われても、ネタにされる未来しか見えないからね!」

「まあまあ」

「まあまあじゃねえ!」

「それでだな」

「耳真っ赤にしながら、無理矢理進めないようにしようねぇ!」


だめだ、突っ込みが追い付かん。


「まあ、聞け。私はうれしい、ぞ?」

「あー、うん」


はにかむように、そう告げる恋人は、本当に可愛かった。俺はむず痒くなって、頬をポリポリかく。そして、二人の顔が近づいていき--。


「おう、バカップルども。肉と酒が届いたぞ。家でやれ」


みっ。


「ぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」

「~~~~~~~っっっっ!!!」

「ったく。ホントにお前らは」


友人はやれやれと首をふっている。止めてくれてありがとうというべきかと一瞬血迷ったが、冷静になる。


「というか、お前が煽ったんだろうが!」

「煽りはしたが、実際に我を忘れたのはお前らだろうが」

「ぐっ」

「納得(言いくるめられて)してくれて何より。それより、お前の'かわいい'カノジョを正気に戻せ」


そう言われて、やけに静かになっているとなりの彼女に目をやると。


「ナグルケルミセゴトハカイスルハカイハカイハカイハカイ!」

「あ、これやばいやつだ」


恥ずかしさのあまり、破壊衝動の化身になってしまっていた。

友人(自業自得)を肉壁に、彼女をなだめることに成功したときには、店は若干破壊されていた。

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