ともくんのふるーいカメラ
ともくんは小学3年生です。お姉さんは6年生です。
ともくんは、お正月に家族で、おじいさんおばあさんの家に行きました。
戸だなに、いろいろなカメラが10台かざってありました。ともくんは、おじいさんに聞きました。
「おじいちゃん、これ、どうしたの」
「もう、おじいちゃんが使わないカメラを、ならべてみたんだ」
おじいさんは、ともくんがカメラにきょうみをもってくれたのが、うれしいようでした。
10台もあると、けっこうあたらしいのや、だいぶふるいのがあります。
「おじいちゃん、これ、ぜんぶ動くの?」
「手入れしてあるから、動くよ」
「おじいちゃん、ぼく、どれか使ってみたい」
「じゃあ、おじいちゃんが最近まで使っていたデジタルカメラをかしてあげる。5年前のもの」
「そういうのは、うちにもある。ぼくは、せっかくだから、ふるくてふるくてふるーいカメラを使ってみたい」
「じゃあ、ふるーいカメラをかしてあげる。60年前のもの。でも、ふるーいカメラで写真をとると、おじいちゃんでも、よくしっぱいしたんだよ」
おじいさんは、しんぱいそうな顔をしました。
ともくんは、かしてもらえないのかな、という顔をしました。
「わかったよ、ともくん、こうしよう。デジタルカメラもかしてあげる。2台でかわりばんこに、写真をとればいいよ。そうすれば、ふるーいカメラでしっぱいしても、だいじょうぶ」
おじいさんは、あたらしいのとふるーいのと、カメラを2台かしてくれました。
ともくんは家にかえりました。すぐにふるーいカメラをためしてみたくて、でかけようとしました。
「おうい、とも。ふるーいカメラは、フィルムを入れて使うんだよ」
「お父さん、うちにフィルムある?」
「ああ、お父さんが前に買って、使わないでおいたのがあるはず」
お父さんは、部屋にもどりました。
どたばた、音がします。
そうとう、さがしているようです。
「あった、あったよ」
お父さんがもってきたフィルムは、小さいつつに入っています。お父さんはそのつつを、じょうずにカメラに入れてくれました。
「これでだいじょうぶ」
「ありがとう、お父さん」
「とも、使いかたは、わかっているのかい?」
「このはじっこのガラスまどからのぞいて、シャッターをおすんでしょ?」
「まあ、そうだけど」
ともくんは「もう、あれこれ言われたくないや」とばかりに、家をとびだして行きました。
もう1台のデジタルカメラをもって、お姉さんがついて行きました。
ともくんは、うつすものをさがしました。
公園でともくんは、かずくんに会いました。
「やあ、ともくん。ぼくの、ようち園の弟が、自転車にのれるようになったんだよ。何それ、カメラ? ねえねえ、ぜひとってあげてよ」
かずくんの弟くんは、ついさっき自転車にのれるようになったばかりのようです。
これは、きねん写真のとりがいがありますね。
ともくんは、かずくんの弟くんに、自転車を走らせてもらいました。
しゃーっ。おお、なかなか、さまになっている。さっき、のれるようになったばかりなのに。
ともくんはふるーいカメラで、お姉さんは5年前のデジタルカメラで、写真をとりました。
ともくんが「いいのがとれたんじゃないかな」と思って、もうやめようとすると、お姉さんが、ともくんとカメラをとりかえました。お姉さんはかずくんの弟くんに「もう一回走って」と、たのみました。
しゃーっ。おお、こんども、さまになっている。もうすっかり、のれるようになったね。
ともくんがデジタルカメラで、お姉さんがふるーいカメラで、写真をとりました。
「ともくん、どうもありがとう。写真ができたら、おしえてね」
ともくんとお姉さんは、かずくんたちとわかれました。
「ねえ、お姉ちゃん。はやく写真を、かずくんと弟くんに見せてあげたいよ」
「フィルムというのはね、24枚くらいとらないと、おわらないのよ。たしか」
ともくんは、早くフィルムをおわらせたくて、お姉さんにジャングルジムにのぼるよう、たのみました。
かしゃかしゃかしゃ。
ともくんは、お姉さんにカメラをむけて、やたらにシャッターをきりました。
「こら、とも。フィルムが、もったいないでしょ」
「いいねー、いいよー。重心を、もう少しこっちに」
「カメラマンのひとのまね? どこでそんなの、おぼえたのよ」
ともくんは写真のなかみはともかく、フィルムをつかいつくしました。
ともくんはお姉さんといっしょに、駅の近くのお店に行きました。文ぼう具のお店ですが、フィルムを30分で現像(フィルムから写真をつくるのに、ひつような処理)してくれるのです。
いまは、こういうお店も少なくなりました。
ともくんは写真ができるのを、いまかいまかと、まちました。
「はい、おまちどう。デジタルカメラのほうが2枚。ふるーいカメラのほうは、1枚もうつってないよ」
お店のおじさんが、いいました。
「えーっ! なんでだろう。こわれてるの?」
お店のおじさんは、ともくんのふるーいカメラをみて、気のどくそうな顔をしました。
「なんでうつらないか、わかったよ。そういうかたちのふるーいカメラは、レンズのふたをとらないとだめなんだ」
「えーっ! ガラスののぞきまどからは、むこうが見えるのに!」
「おじさんもむかしは、おなじしっぱいをしたものさ」
ともくんはとぼとぼと、お店をあとにしました。お姉さんもついて行きました。
ともくんは公園にもどりました。まだ、かずくんと弟くんがいました。
「写真できたの、うわあ、じょうず! 弟、かっこよくうつってる! すごい、きねんになるよ! ありがとう、ともくんとお姉さん!」
かずくんは、おおよろこびです。
ともくんの写真も、ほめてくれました。
めでたしめでたし、となるかと思いきや、ともくんは
「何かがちがう・・・」
と思ったのです。
「ふるーいカメラでとった写真でほめられないと、ほめられたことにならない」
ともくんは、ふるーいカメラで、ちゃんと写真をとりたいのです。
とっても、やる気に火がついたのです。
お姉さんが、さっきのお店で買ったフィルムを、じょうずに、ふるーいカメラに入れてくれました。
ともくんは、また、うつすものをさがしました。
お姉さんといっしょに歩いていくと、こんどはコンビニの前で、えいくんに会いました。
「ともくん、これ見てよ! コンビニくじで1とうが、あたったんだよ! ぼく、はじめてだよ! もう、ないかもしれないよ!」
「えいくん、ぼくはいま、カメラをもっているんだ」
「だったら、とってとって! いいからとって!」
ともくんはゆっくりと、ふるーいカメラのレンズから、ふたをはずしました。
そのそぶりが、お姉さんの笑いのつぼに入ったらしく、お姉さんは笑いだしました。
ともくんは、ふるーいカメラで、写真をとりました。
おねえさんは、デジタルカメラでとりました。
ふたりはカメラをとりかえました。コンビニくじの1とう賞品をだいじそうにかかえた、えいくんの写真をとりつづけました。
「ありがとう! ともくんとお姉さん! いやー、このかんどうよ、えいえんに」
ともくんは、えいくんとわかれて、まちを歩きました。
いつもの年とおなじような、いつもの年とちがうような、風景でした。
ともくんとお姉さんは、海の近くまで来ました。
波のうちよせるさま、海鳥が宙をまうさま、海岸にうちよせられた木。
ともくんとお姉さんは、カメラをとりかえながら、写真をとりました。
ともくんがお姉さんといっしょに、お店にフィルムをもって行ったのは、次の日でした。
お店のおじさんは、写真ができるとすぐに、ともくんに見せてくれました。
こんどは、ふるーいカメラの写真も、うつっていました。
「あ、やったあ、うつってる! ねえ、お姉ちゃん」
「とも、この海の写真、よくとれてる」
「うわあい!」
ともくんは、大よろこび。
ともくんは、もともと、なんの写真をたのまれていたか、わすれかけていました。
ともかく、ふるーいカメラで写真がとれました。ともくんは、やりとげたのです。
めでたしめでたし、となるところだったのですが。
ともくんは思いだしたように、えいくんの写真に目をやりました。
「ええー?」
ともくんは、がっかりしました。
えいくんの写真はぼけぼけ。えいくんはかろうじて、だれだかわかりますが、1とう賞品は何が何やらわかりません。
ともくんは、何があったのだろう、と思いました。
お店のおじさんが言いました。
「ふるーいカメラは、遠くをうつすときと近くをうつすときで、レンズを調節しないといけないんだ。ピントっていうんだけど」
「じゃあ、海がちゃんととれて、えいくんがぼけぼけなのは」
「ピントが遠くに合っていたんだね」
ともくんは、レンズのつつの部分についている輪をまわしてピントを合わせるやりかたを、おしえてもらいました。
ともくんは、お姉さんといっしょに、えいくんの家に行きました。
ともくんはえいくんに、デジタルカメラの写真だけをわたしました。
「ありがとう、ともくん、お姉さん。ぼく、この写真、たからものにするよ!」
えいくんは、きのうの感げきぶりもそのままに、たいそう、よろこんでくれました。
ともくんとお姉さんは、えいくんの家をあとにしました。
ともくんは、また写真で、よろこんでもらえました。
でも、やっぱり、ちがうのです。
ともくんは、ふるーいカメラの写真で、よろこんでもらいたいのです。
ともくんは、ふるーいカメラを、使いこなしてみせたいのです。
ともくんとお姉さんが歩いていると、お姉さんのお友だちの6年生の女の子に会いました。
「ちょうどいいわ。とも、あたしたちふたりの写真をとってよ」
「うん、いいよ」
お姉さんとお友だちは、ふたりならびました。
ともくんは、おしえてもらった通りに、ふるーいカメラのピントを合わせました。
かしゃかしゃかしゃ。
デジタルカメラでも、かしゃかしゃかしゃ。
三人は、海辺へ行きました。
お姉さんとお友だちは、少しきょりをとって、ふたりともマスクをはずしました。
海辺であそぶ、お姉さんとお友だち。ともくんはシャッターをきりました。
フィルムがなくなると、デジタルカメラで、とりつづけました。
たくさん、とりました。
夕方になりました。お友だちは「たのしかった」と言って、お姉さんとわかれて歩いていきました。
お姉さんとともくんも、家にかえりました。
お店で写真ができあがったとき、お姉さんは、ともくんに「ありがとう」と言いました。
お姉さんとお友だちはべつべつの中学校にすすむので、3月ではなればなれになるのだと、ともくんはあとで聞きました。
ふるーいカメラでとった、お姉さんとお友だちの写真は、ともくんの自信作です。
なんどもしっぱいして、くろうして、やっととれたというのもありますが、お姉さんとお友だちの、生き生きとした表情を、うつせたのです。
ともくんは、とっても、ほこらしげです。
「たいした写真だ。じょうずだね」
写真を見せたおじいさんにも、ほめてもらいました。
おじいさんは「ともくん、ぜひそのままカメラを使ってほしい」と言いました。
ふるーいカメラとデジタルカメラは、ともくんのものになりました。
ともくんは学校がはじまったら、みんなに「カメラをもらったんだ」と言おうと思います。
みんなとまちであったとき「写真をとって」とたのまれないかなあ、とわくわくしています。
「ふだんはデジタルカメラでとるけれど、ここぞというときには、ふるーいカメラでとってやるんだ」
そうおもっています。
おしまい
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【発表時の全文かなバージョン】
ともくんは、しょうがく3ねんせいです。おねえさんは、6ねんせいです。
ともくんは、おしょうがつにかぞくで、おじいさんおばあさんのいえに、いきました。
とだなに、いろいろなカメラが10だい、かざってあったのをみて、おじいさんにききました。
「おじいちゃん、これ、どうしたの」
「もう、おじいちゃんがつかわないカメラを、ならべてみたんだ」
おじいさんは、ともくんがカメラにきょうみをもってくれたのが、うれしいようでした。
10だいもあると、けっこうあたらしいのや、だいぶふるいのがあります。
「おじいちゃん、これ、ぜんぶうごくの?」
「ていれしてあるから、うごくよ」
「おじいちゃん、ぼく、どれかつかってみたい」
「じゃあ、おじいちゃんが、さいきんまでつかっていたデジタルカメラをかしてあげる。5ねんまえのもの」
「そういうのは、うちにもある。ぼくは、せっかくだから、ふるくてふるくてふるーいカメラをつかってみたい」
「じゃあ、ふるーいカメラをかしてあげる。60ねんまえのもの。でも、ふるーいカメラでしゃしんをとると、おじいちゃんでも、よくしっぱいしたんだよ」
おじいさんは、しんぱいそうなかおをしました。
ともくんは、かしてもらえないのかな、というかおをしました。
「わかったよ、ともくん、こうしよう。デジタルカメラもかしてあげる。2だいでかわりばんこに、しゃしんをとればいいよ。そうすれば、ふるーいカメラでしっぱいしても、だいじょうぶ」
おじいさんは、あたらしいのとふるーいのと、カメラを2だい、かしてくれました。
ともくんは、いえにかえりました。すぐにふるーいカメラをためしてみたくて、でかけようとしました。
「おうい、とも。ふるーいカメラは、フィルムをいれてつかうんだよ」
「おとうさん、うちにフィルムある?」
「ああ、おとうさんがまえにかって、つかわないでおいたのが、あるはず」
おとうさんは、へやにもどりました。
どたばた、おとがします。
そうとう、さがしているようです。
「あった、あったよ」
おとうさんが、もってきたフィルムは、ちいさいつつに、はいっています。おとうさんはそのつつを、じょうずにカメラに、いれてくれました。
「これでだいじょうぶ」
「ありがとう、おとうさん」
「とも、つかいかたは、わかっているのかい?」
「このガラスまどのところから、のぞいて、シャッターをおすんでしょ?」
「まあ、そうだけど」
ともくんは、「もう、あれこれいわれたくないや」とばかりに、いえをとびだしていきました。
もう1だいのデジタルカメラをもって、おねえさんが、ついていきました。
ともくんは、うつすものを、さがしました。
こうえんで、ともくんは、かずくんにあいました。
「やあ、ともくん。ぼくの、ようちえんのおとうとが、じてんしゃに、のれるようになったんだよ。なにそれ、カメラ? ねえねえ、ぜひとってあげてよ」
かずくんのおとうとくんは、ついさっき、じてんしゃに、のれるようになったばかりのようです。
これは、きねんしゃしんの、とりがいがありますね。
ともくんは、かずくんのおとうとくんに、じてんしゃを、はしらせてもらいました。
しゃーっ。おお、なかなか、さまになっている。さっき、のれるようになったばかりなのに。
ともくんは、ふるーいカメラで、おねえさんは、5ねんまえのデジタルカメラで、しゃしんをとりました。
ともくんが「いいのがとれたんじゃないかな」とおもって、もうやめようとすると、おねえさんが、ともくんとカメラをとりかえて、かずくんのおとうとくんに「もういっかいはしって」と、たのみました。
しゃーっ。おお、こんども、さまになっている。もうすっかり、のれるようになったね。
ともくんがデジタルカメラで、おねえさんがふるーいカメラで、しゃしんをとりました。
「ともくん、どうもありがとう。しゃしんができたら、おしえてね」
ともくんとおねえさんは、かずくんたちと、わかれました。
「ねえ、おねえちゃん。はやくしゃしんを、かずくんと、おとうとくんに、みせてあげたいよ」
「フィルムというのはね、24まいくらいとらないと、おわらないのよ。たしか」
ともくんは、はやくフィルムをおわらせたくて、おねえさんにジャングルジムにのぼるよう、たのみました。
かしゃかしゃかしゃ。
ともくんは、おねえさんにカメラをむけて、やたらにシャッターをきりました。
「こら、とも。フィルムが、もったいないでしょ」
「いいねー、いいよー。じゅうしんを、もうすこしこっちに」
「カメラマンのひとのまね? どこでそんなの、おぼえたのよ」
ともくんは、しゃしんのなかみはともかく、フィルムを、つかいつくしました。
ともくんは、おねえさんといっしょに、えきのちかくのおみせに、いきました。ぶんぼうぐのおみせですが、フィルムを30ぷんで、げんぞう(フィルムからしゃしんをつくるのに、ひつようなしょり)してくれるのです。
いまは、こういうおみせも、すくなくなりました。
ともくんは、しゃしんができるのを、いまかいまかと、まちました。
「はい、おまちどう。デジタルカメラのほうが2まい。ふるーいカメラのほうは、1まいもうつってないよ」
おみせのおじさんが、いいました。
「えーっ! なんでなんだろう。こわれてるの?」
おみせのおじさんは、ともくんのふるーいカメラをみて、きのどくそうなかおを、しました。
「なんでうつらないか、わかったよ。そういうかたちの、ふるーいカメラは、レンズのふたをとらないと、だめなんだ」
「えーっ! ガラスののぞきまどからは、むこうがみえるのに!」
「おじさんも、むかしは、おなじしっぱいを、したものさ」
ともくんは、とぼとぼと、おみせをあとにしました。おねえさんも、ついていきました。
ともくんは、こうえんにもどりました。まだ、かずくんとおとうとくんが、いました。
「しゃしんできたの、うわあ、じょうず! おとうと、かっこよくうつってる! すごい、きねんになるよ! ありがとう、ともくんとおねえさん!」
かずくんは、おおよろこびです。
ともくんのしゃしんも、ほめてくれました。
めでたしめでたし、となるかとおもいきや、ともくんは
「なにかがちがう・・・」
とおもったのです。
「ふるーいカメラでとったしゃしんで、ほめられないと、ほめられたことにならない」
ともくんは、ふるーいカメラで、ちゃんとしゃしんを、とりたいのです。
とっても、やるきに、ひがついたのです。
おねえさんが、さっきのおみせでかったフィルムを、じょうずに、ふるーいカメラに、いれてくれました。
ともくんは、また、うつすものを、さがしました。
おねえさんといっしょに、あるいていくと、こんどはコンビニのまえで、えいくんにあいました。
「ともくん、これみてよ! コンビニくじで1とうが、あたったんだよ! ぼく、はじめてだよ! もう、ないかもしれないよ!」
「えいくん、ぼくはいま、カメラをもっているんだ」
「だったら、とってとって! いいからとって!」
ともくんは、ゆっくりと、ふるーいカメラのレンズから、ふたをはずしました。
そのそぶりが、おねえさんのわらいのつぼに、はいったらしく、おねえさんは、わらいだしました。
ともくんは、ふるーいカメラで、しゃしんをとりました。
おねえさんは、デジタルカメラでとりました。
ふたりはカメラをとりかえました。コンビニくじの1とうしょうひんを、だいじそうにかかえたえいくんの、しゃしんをとりつづけました。
「ありがとう! ともくんとおねえさん! いやー、このかんどうよ、えいえんに」
ともくんは、えいくんとわかれて、まちをあるきました。
いつものとしとおなじような、いつものとしとちがうような、ふうけいでした。
ともくんとおねえさんは、うみのちかくまできました。
なみのうちよせるさま、うみどりがちゅうをまうさま、かいがんにうちよせられた、き。
ともくんとおねえさんは、カメラをとりかえながら、しゃしんをとりました。
ともくんがおねえさんといっしょに、おみせにフィルムをもっていったのは、つぎのひでした。
おみせのおじさんは、しゃしんができるとすぐに、ともくんにみせてくれました。
こんどは、ふるーいカメラのしゃしんも、うつっていました。
「あ、やったあ、うつってる! ねえ、おねえちゃん」
「とも、この、うみのしゃしん、よくとれてる」
「うわあい!」
ともくんは、おおよろこび。
ともくんは、もともと、なんのしゃしんをたのまれていたか、わすれかけていました。
ともかく、ふるーいカメラで、しゃしんがとれました。ともくんは、やりとげたのです。
めでたしめでたし、となるところだったのですが。
ともくんはおもいだしたように、えいくんのしゃしんに、めをやりました。
「ええー?」
ともくんは、がっかりしました。
えいくんのしゃしんは、ぼけぼけ。えいくんはかろうじて、だれだかわかりますが、1とうしょうひんは、なにがなにやら、わかりません。
ともくんは、なにがあったのだろう、とおもいました。
おみせのおじさんが、いいました。
「ふるーいカメラは、とおくをうつすときと、ちかくをうつすときで、レンズをちょうせつしないと、いけないんだ。ピントっていうんだけど」
「じゃあ、うみがちゃんととれて、えいくんがぼけぼけなのは」
「ピントが、とおくにあっていたんだね」
ともくんは、レンズのつつのぶぶんについている、わをまわしてピントをあわせるやりかたを、おしえてもらいました。
ともくんは、おねえさんといっしょに、えいくんのいえに、いきました。
ともくんはえいくんに、デジタルカメラのしゃしんだけを、わたしました。
「ありがとう、ともくん、おねえさん、ぼく、このしゃしん、たからものにするよ!」
えいくんは、きのうのかんげきぶりも、そのままに、たいそう、よろこんでくれました。
ともくんとおねえさんは、えいくんのいえを、あとにしました。
ともくんは、また、しゃしんで、よろこんでもらえました。
でも、やっぱり、ちがうのです。
ともくんは、ふるーいカメラのしゃしんで、よろこんでもらいたいのです。
ともくんは、ふるーいカメラを、つかいこなしてみせたいのです。
ともくんとおねえさんがあるいていると、おねえさんのおともだちの、6ねんせいのおんなのこに、あいました。
「ちょうどいいわ。とも、あたしたちふたりの、しゃしんをとってよ」
「うん、いいよ」
おねえさんとおともだちは、ふたりならびました。
ともくんは、おしえてもらったとおりに、ふるーいカメラのピントをあわせました。
かしゃかしゃかしゃ。
デジタルカメラでも、かしゃかしゃかしゃ。
さんにんは、うみべへ、いきました。
おねえさんとおともだちは、すこしきょりをとって、ふたりともマスクを、はずしました。
うみべであそぶ、おねえさんとおともだち。ともくんはシャッターをきりました。
フィルムがなくなると、デジタルカメラで、とりつづけました。
たくさん、とりました。
ゆうがたになりました。おともだちは「たのしかった」といって、おねえさんとわかれて、あるいていきました。
おねえさんとともくんも、いえにかえりました。
おみせでしゃしんが、できあがったとき、おねえさんは、ともくんに「ありがとう」といいました。
おねえさんとおともだちは、べつべつのちゅうがっこうにすすむので、3がつではなればなれになるのだと、ともくんはあとでききました。
ふるーいカメラでとった、おねえさんとおともだちのしゃしんは、ともくんのじしんさくです。
なんどもしっぱいして、くろうして、やっととれたというのもありますが、おねえさんとおともだちの、いきいきとしたひょうじょうを、うつせたのです。
ともくんは、とっても、ほこらしげです。
「たいしたしゃしんだ。じょうずだね」
しゃしんをみせたおじいさんにも、ほめてもらいました。
おじいさんは「ともくん、ぜひそのままカメラをつかってほしい」と、いいました。
ふるーいカメラとデジタルカメラは、ともくんのものになりました。
ともくんは、がっこうがはじまったら、みんなに「カメラをもらったんだ」といおうとおもいます。
みんなとまちであったとき「しゃしんをとって」とたのまれないかなあ、とわくわくしています。
「ふだんはデジタルカメラでとるけれど、ここぞというときには、ふるーいカメラでとってやるんだ」
そうおもっています。




