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魔王の娘とその執事   作者: 紅茉莉
3/4

最前線の国

「久しぶりのベッドだ~。」


宿の部屋に入るなりルーはベッドに飛び込んだ。


「お疲れ様です。ですがそのまま寝ないで下さいね、夕食まだなんですから。」


コナルは言いながら荷物を下ろし備え付けの椅子に腰掛けた。


二人が取った部屋はベッドが二つ、テーブル一つに椅子が二つとよくある相部屋。ベッドは決して上等なものでは無かったが数日野宿だったルーにとっては今までで一番のベッドに思えた。


「大丈夫大丈夫。それより兄さん、明日からどうするの?」


人間の国に入るにあたり魔族であることを隠すのは当然。そして二人の関係、どこかのご子息と執事では面倒ごとを起こしかねないので兄妹ということにした。


「何か適当に仕事を探してそれをする、と言ったところですね。ルーさんは…部屋で大人しくしているか観光でもしますか?」


「いやいや、せっかく兄妹二人で旅をしてるんだから一緒に仕事探すよ。僕だけ観光なんてしてられない。」


「…」


旅をすると決めた時からコナルの方は二十歳程度の青年に化けている。しかし人間とそう見た目変わらないルーは姿を変えずにいるが、中身はともかく見かけは十歳程度の少女だ。果たしてまともな仕事なんて回してもらえるだろうか?


「そもそも路銀はまだまだあるんだろう?明日ぐらい仕事じゃなくて二人で観光でもしようよ兄さん。」


その路銀はこの国来るまでに見かけた小規模の商隊から獲ったものだ。豪遊しなければ数年暮らせるぐらいはある。


「そうですね、明日はそれでいきましょうか。」


「やった!兄さんとデートだ!」


本当に嬉しそうに、ルーは笑った。





翌日、朝食を済ませた二人はさっそく宿から近い市場に向かった。


この国-ムコロは先の魔王討伐時に討伐隊の本部が置かれた人間の国の中で最も魔王城に近かった国である。近いといってもルー達のように徒歩では数日掛かる距離だし、馬を継ぎながら飛ばして一日半~二日といったところだ。この国と魔王城の間にも人間が住んでいる場所はあるが精々村と呼ばれる程度の規模でしかない。そんな辺境の国であるムコロは魔王討伐成功のおかげで建国以来最もにぎわっている。これから始まるであろう開拓作業に向けて様々な土地から仕事を求め多くの人が集まってきており、同じように様々な食糧品、工芸品なども集まってきて市場の活気は最高潮といったところだ。


「これがいわゆる祭りってやつなのかな?」


そんなあながち間違いでもないことをコナルに肩車をしてもらい普段より倍以上高い視線を右に左にとせわしなく巡らせながらルーは楽しそうに、


「色々と思うところもありますが確かに祭り、と言っても間違いではないでしょう」


人ごみにもみくちゃにされながら、それでもルーのいる肩から上の揺れは最小限に抑え歩きながらコナルは淡々と答えた。


「見た事の無い物がい〜っぱいで、…全部食べたり使ってみたりしたなぁ」


「お金足りませんよ。食べ物だけでもルーさんが全部食べ切る前にこの国の王様代わりますね」


「それなら僕が一口味見して残りを兄さんが食べればいい。とりあえず僕は食欲じゃなくて知識欲を満たしたい」


「立派なことを言ってるようで唯々我儘を言っているだけですよそれ」


「そりゃぁお祭りの時ぐらい我儘を言わないと。普段言ってないんだからこれぐらい良いだろう?」


不意に逆さまになったルーの顔が目の前にきてもコナルは歩みを止めずに、


「本気で言ってるんですか?」


「本気だよ」


「私少し前に朝食を取ったばかりなんですよ」


「僕もだよ。一緒だね」


「景気が良いのかそれなりの量がありましたよね」


「あったねー、お腹いっぱいだもん」


「それが分かっていて言ってるんですね?」


ルーは答えずにただニコッと笑って、体を起こしさて、どれから行こうかと周りを見始めた。開けた視界の先に市場の端が見えたコナルはルーがもう一周と言わないことを願いつつ、ルーの指差す店に進んで行った。






「う〜…思っていたよりしんどい…」


十種類程食べてもう無理と言い出したルーに頭の上で吐かれる前にコナルは宿屋に戻った。最初は一口で良いと言っていたが気に入ったものはほとんど自分で食べてしまい、結局市場の端までも行けずに限界がきてしまったようだ。ベッドに仰向けに倒れ込んでいるルーに対して、


「まぁこれも良い経験ですよ。しばらくゆっくりしましょう」


コナルはそう言ったあとに歩きながら食べ切れなかったものを食べ始めた。


「兄さん、それ全部食べきれそうなの?」


「この程度なら大丈夫ですよ」


「それなら良かった…。あぁ〜キツイ…」


ルーはチラッと机に並べている食べ物見た後、今は見たくないと言うように反対方向に体を向けた。コナルは少し心配しつつ、それほど時間を掛けず全て食べ終えた。


「食べ終わったので水を貰いに行きますけれどルーさんも行きますか?」


「えっ⁉︎もう食べちゃったの?」


「ええ、どれも美味しかったです」


「本当に食べ終わってるよ…、僕まだ動けなさそうだから兄さんだけで行ってきて。」


怠そうに顔だけ向け、すぐに元の体制に戻ったルーに分かりましたと声かけて、コナルは店主に水を貰いに向かった。





太陽が一番高いところから降り始めたころ、のそりとルーが起き上がってきた。


「兄さん、今何やってるの?」


「この国について調べてました。体調はもう大丈夫ですか?」


「うん。あ~でも昼食はいらないかな…」


机の上にある水差しから直接水を飲み、


「…食べ過ぎなんて城に居たときじゃできなかったからね。ただこれは別に経験しなくてもよかったかもしれない」


あとこんなはしたないこともねと水差しを机に置いた。


「それはそうと兄さん、人間の国ではなるべく魔法は使わないんじゃなかった?なるべく目立たないためにって言ってたよね」


ルーとコナルは当たり前のように使えるが、人間にとって魔法とはそうそう使えるものではないため魔法が使えるというだけで目立ってしまうのだ。


「市場に行ったときに気が付いたんですが、人間の国にしては相当な数の魔法使いの人間がいますよ」


もちろんコナルだけでなくルーも魔法が使える人間には気が付いてはいたが、それが多いのか少ないのかは分からなかった。ただ人間でもないのに分かるコナルが凄いようだ。


「確か十人に一人程度だっけ魔法が使える人間は?」


「そうですね。ただ王族や貴族と呼ばれる方々は使えることの方が多いようです」


「人間が多すぎて割合が分からなかったけれどそんなにいたかなぁ…」


「旅を続けていけば段々分かるようになりますよ」


「兄さんはよく分かったね。前にも旅みたいなことしたことあったの?」


「ありますよ。詳しい内容はそのうち…旅の道中にでも」


「へぇ~、僕と会うまでの話は全然知らないから楽しみだよ」


「確かにあまり話して無かったですね。…それでこの国には魔法使いが多いことが分かったので少し使った程度ではあまり目立たないと判断し、魔法を使って調べていたわけです」


「それで、何か面白いこととかあったの?」


「そうですね…魔法を傍受している方が何人かいましたね」


「それは国として当たり前じゃないのか?兄さんみたいに諜報みたいなマネをする…」


ルーはそこで口を止め少し考え、


「僕は何があっても兄さんのこと信じてるからね」



ありがとうございました

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