魔王討伐
勇者一行が魔王の一人であるプロフディを見事打倒した。仲間の斥候を失った他、残った一行も疲弊しきっており戦いの凄まじさを物語っている。一行と共に魔王討伐に参加してた各地から集められた軍隊が残党狩り、各国への伝令等後処理を行っているがそう時間のかからぬうちに城を燃やし引き上げていった。
人間たちが立ち去って三日後、生きている魔物の姿は一つも無くもぬけの殻と化した城だけが残った。使える部位は採取して残りはそのまま打ち捨てられた亡骸や金目の物にならないものなどまとめて灰と化していた。死体は蘇生や死霊術などで別の魔王に再利用されることもあるため死体を残さないように処理するのがこの世界の常識である。
「話には聞いていたけれど本当に全部燃やしちゃうんだね。」
そんな何もないはずの城を二人の魔物が見物しに来た。一人は齢十前後の褐色の肌に長い銀髪と緋色の瞳の少女。もう一人は筋肉質で緋色の瞳を除き全身が闇のように真っ黒な大男。
「ルー様、分かってはいましたが生き残りはいません。逃げ隠れられたものもいないかと。」
「そりゃあれだけの軍隊から逃げられるわけがないだろう。そもそもあの城に敵前逃亡するような輩は残っていなかったさ。」
ルーと呼ばれた少女はケラケラ笑いながら「私達以外はな」と付け足した。
「しかしお前は良かったのかコナル。僕一人を助けるためにとはいえ生き残ってしまって。本当は戦って死にたかったのではないのか?」
「私への命令はルー様をお守りすることです。そして私はまだ死にたくありません。」
コナルと呼ばれた大男は詫びれもなくそう言った。
「ハッハッハ、お前は昔からそうだったな。まぁ僕もそうだけどね、まだ死にたくない。だからさ、お前には感謝してるよ。」
「そう言って頂ければ幸いです。」
「もうここの魔王であった父上もいないんだ、そうかしこまらなくてもいいと言っているのに・・・」
「この話し方はもう癖みたいなものでして。徐々に直していきますのでどうかご容赦を。」
「確かにすぐには難しいか・・・。それはそうと僕はこれから自由気ままな旅をするつもりなんだけど」
ルーはコナルの方を向き顔を見ながら言った。
「もちろんお前は僕についてくるんだよな?」
「もちろんです。」
コナルはそうであるのが当たり前のことだと、
「ついてくるなと言われても付いて行きますので」
にやりと笑いながらそう言った。