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VR夏休み ~憧れのあの娘とヴァーチャルサマーデート~

作者: しいたけ

 夢無(ゆめなし)無男(なしお)(38)。職無し、金無し、女無しの自由人がここにいる。


 趣味はアニメ、好きな物は女。好きなタイプは小柄で細くてツインテールで巨乳で金髪で妹属性でウサ耳で巨乳で魔法少女で包容力があって巨乳で自分を愛してくれる女性。部屋は汚部屋となっておりゴミが至る所に落ちている。もしかしたらゴキブリも居るかも知れない……。


 彼が最近ハマっているのは『VR夏休み』と呼ばれる、女の子とヴァーチャルでデート出来る夢の機械だ。


「デュフフ……! 今日もくるみちゃんとデートでおじゃる♪」


 黒いスコープを着ければ、そこはもう常夏の浜辺。セクシー女優の『海原くるみ』に似た女性が際どいビキニでこちらを手招きしている。


「デュフッ!! くるみちゃん今日もエロいでしゅね~♡」


 ポテチをバリバリと貪りコーラを一気に流し込む無男。一日の殆どをヴァーチャルデートしている彼は実に幸せそうな顔をしていた。ゴミの部屋をバタバタとクロールで泳ぎ、くるみちゃんと並んで泳ぐ。


「グフフフフ……そろそろポロリを……」


 コントローラーのボタンを軽快に押すと、彼女の水着の紐が突如として弾けた! 今の今まで楽しみに取って置いたポロリ機能! 無男のポテチを噛む力にも気合いが増す!


 ――続きは有料版でお楽しみ下さい――


 その表示に、一気に現実に戻される無男。スコープを外しトイレへ行くとため息をついた。



「……!」


 外から聞こえてくる祭り囃子の音。どうやら近所で夏祭りがあるようだ。


「俺には関係ねぇよ……」


 一人悪態を突き、居間へ戻ると再びスコープを着けた。


「…………」


 物思いにふけった彼はコントローラーを操作し、舞台を変えて夏祭りデートへと向かった。




「おまたせ♡」


 浴衣姿で現れるくるみちゃん。頭には既にお面が着いており綿飴も持っている。


「デュフッ! 浴衣も可愛いねくるみちゃん♡♡♡」


 あっと言う間にゴキゲンな無男。金魚すくい、焼きそば、射的、型抜き、かき氷、ありとあらゆる出店をくるみちゃんと回り、夏祭りを満喫していた。


 花火が打ち上がると、くるみちゃんは神妙な顔付きでこちらを見つめ始めた。


「……あのね……」


 その憂いを帯びた瞳に無男の期待は一気に高まった!!


「これはもしや!! 告白でござるか!? いやぁ、拙者心に決めたくるみちゃんが―――」


 色鮮やかに上がる花火と、徐々に近付くくるみちゃんの唇。


「む~♡」


 無男は堪らず口を尖らせ就きだした。


  ―――チュッ


 ――続きは有料版でお楽しみ下さい――


「……へ?」


 無男がスコープを外すと、そこには黒々としたゴキブリが羽ばたいていた……。


「はは、初めてのキスがゴキブリか…………はは……」


 無男はスコープを窓から放り投げ、ゴミも放り投げ、家具も放り投げ、最後に自分の身を投じた―――

読んで頂きましてありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「デュフッ!! くるみちゃん今日もエロいでしゅね~♡」 ↑38歳の妖精さん(推定)がこのセリフを自分の部屋でつぶやいてると思うと、なんだか悲しくなりました。 そして有料版には手を出せない…
[一言] つ、辛い……。 ヴァーチャルと言いつつ、女性の心もカネ次第なところが絶妙に現実すぎて辛い(恐れおののく) いっそ飛び降りたことで、邪念や未練を捨て去ったのなら、入院先で心機一転、文字通り生ま…
[良い点] 読み手の脳にも、リアルとバーチャルがバチンと切り替わって、対比が絶妙でした。 いいところで挟まれる表示が、一気に現実に引き戻し、リアルの虚無感がバーチャルへ誘ってきます。 面白かったです…
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