第13話 朝日
――……くくく、キレてる、キレてるぜ……。
今日の俺はこれまでになく、いつにも増してキレてやがるぜ……。
それこそ抜き身の日本刀のようなギラギラ感とともに、触れるもの皆、全てを傷つけちまいそうだ……。
だが、それも致し方のないこと……。
何故ならば、この俺を本気で怒らせちまったんだからなぁっ……‼
くくく、正味の話、ココまで鶏冠にきたのは、いつ以来だっけかな?
だが、こうなっちまった以上は、それこそ誰かの真っ赤な鮮血を見るまでは治まりがつかねーよなぁ?
そうさ、相手の白く輝くシャツを真っ赤な血で染め上げてやるまではなぁっ‼
といった感じで、イイ具合に俺の中にあるもう一人の別人格――。
通称・やさぐれヒナちゃんが顔を覗かせていたこのタイミングでもって、どうやら着替え済ませ戻ってきたのか遂にA級戦犯のご登場ときたもんだ。
「待たせたな、陽太……って、ん? そんな所にしゃがみこんだりして、一体、何をしているんだ?」
そんな俺の胸の内も知らず、こうしてる間も、葵先輩が何やら頻りに話しかけてきていたようだが、そんなことは最早俺の耳には一切届いておらず、ついにその時がやってくる――。
『――オラァアアアアッ、往生せいやぁああああああっ‼』
あくまでも心の中での話だが、そう叫ぶのとほぼ同じく、カッと目を見開き、今まさに牙を剥かんと相手を見上げた時だった。
「――――⁉」
ソレを目の当たりにした瞬間から、まるで金縛りにでもあったかのように体は一瞬で硬直し、瞬きはもとより指一本動かすことができなくなってしまっていた。
「………………」
そう――。
俺の目に飛び込んできたのは、今しがた想像していた通りの目にも鮮やかな赤――。
というわけではなく、正確には若干それよりもややくすみがかったエンジ色? とでもいいった方が正しいか……。
更にいうなら、両サイドにわたって真っ直ぐ縦に伸びた純白の二本線がこれまた完璧なまでの黄金比ってやつを弾き出していて……。
挙句の果てには、それら全てが合わさったモノが葵先輩の形良くも、キュッと引き締まった美尻を優しくもほんの少し喰い込み気味に絶妙なフォルムでもって包み込んでいて……。
「ごくっ……」
そして、ソコから僅かに目線を上へとずらした先には……。
この令和の時代からしたら全くもってそぐわないであろう、首回りと袖の部分にお揃いのエンジ色を添えた野暮ったくも少し厚手の純白の上着……。
そして言わずもがな、その中央にはゼッケンが縫い付けられており、恐らくは油性マジックを使ったと思われる『3-B栗原』の文字がデカデカと書かれていて……。
「………………」
そう、聡い読者諸君なら既にお気づきのこととは思うが、ソレは昨今では、すっかり廃れてしまった文化にして、二十世紀最大の発明……。
そして非常に残念なことにソレをお目にかかる機会はそういったサービスを提供するお店、並びにエロゲー、更には一部の美少女が登場する漫画くらいなもので、養殖モノならいざ知らず天然モノとなると探し出すのは最早ツチノコを見つけることよりも困難とされている代物……。
その名も、女子体操服の姿がそこにはあった――。
しかも、ソレをただ着るだけなら凡人でもできるが、葵先輩に至ってはソレを着用するにあたって、ブルマの中に体操服をキッチリ入れるという通をも唸らせるポイントをしっかりと押さえているあたりが心憎いというかなんというか……。
嗚呼、これこそ正に日本の夜明けぜよ……。
てな具合に、かつての同志、リョーマ先輩も草葉の陰できっとお喜びのことだろう。
と、そんな絶景を目の当たりにしていくうちに、
『ギヤァアアアアアアアアアアアッ!?』
太陽の光が闇を浄化していくかのごとく――。
あれだけ前面へと押し出ていたやさぐれヒナちゃんはもとより、先ほどまでの怒りが嘘のように雲散霧消……。
それこそまるで憑き物が落ちたようにスッキリとした気分の中、改めて、初日の出を拝むがごとくこの貴重な葵先輩のブルマ姿を俺の脳内へ記録するべくこれでもかとガン見していく――。
「……えへら♡」
と、自然とそんな笑みがこぼれてしまう最中、ソレは起こった――。
ビュンッ――。
何やら風切り音のようなものが俺の背後から聞こえてきたかと思えば、
ボゴォッ‼
「――げふぉっ!?」
かつてどこかで味わったような衝撃が再び後頭部を直撃――。
またしても地面へと蹲り、その筆舌に尽くし難い痛みに悶絶していたところ、
ズザッ――。
そんな俺の背後に再び人の気配らしきものが……。
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