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時計と記憶
投稿忘れてましたが、1月の第198回で朗読されました!
これはね記憶の砂時計なの。
砂が落ちている間、幸せだった記憶を思い出させてくれるのよ。
大切な物だから大事に使ってね!
そう言った3日後におばあちゃんは亡くなった。
突然の訃報に、私は悲しすぎると涙も出ないと初めて知った。
数日が経ち、最後にもらった砂時計を思い出した。
おばあちゃんはお茶目さんなので冗談だとはわかっている。
それでもと砂時計を反対にした瞬間、目の前の景色が変わった。
これは小さい頃、おばあちゃんと遊んだ思い出だ。
両親が共働きでおばあちゃんに預けられて遊んでもらっていた。
ちょっと古臭いお菓子や遊び。
どれもおばあちゃんから教えられたものだ。
そして場面が変わり、私の記憶にないおばあちゃんが見えた。
「びっくりした?この記憶はおばあちゃんのでした!」
「私は一杯の幸せをもらったわ。だから、あなたも幸せ一杯の思い出を作ること。約束よ!」
死んでもおばあちゃんはお茶目で、私はようやく涙が流れた。




