7/138
月SS:黒猫は不思議
テーマ「猫」のショートショートです。
黒猫というのは何とも不思議な猫だと思う。
幼少時代、私は黒猫と初めて出会った。
月夜の下で光る金の瞳にギョッとしたのを覚えている。
驚く私を気にせず、黒猫は私が持っていた芋をじーっと見つめていて、私もまたじーっと見つめ返し、黒猫に芋をあげたのだ。
それからというもの、黒猫はふらりと夜に私の元を訪れては芋をねだるようになった。
不思議に思うようになったのは大人になってからだ。
黒猫は私の元へ全く変わらぬ姿で訪れるし、それどころか遠くの外国にいても黒猫は現れた。
ここまでくると、不気味を通り越して小気味良くて面白い。
ある日のことだ。
お月見をしていた私の元へ、いつもの黒猫が現れた。
黒猫は何も言わないが、いつも通り芋をあげた。
もぐもぐと食べる黒猫は、食べ終わるまたふらりと闇夜に消える。
まるで夜空に浮かぶ月のように、現れては消える。
きっと黒猫というのは、月と旅をする不思議な猫に違いない。