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月SS:狐の嫁入り
テーマ「雨の独り言」のショートショートです。
雲ひとつない青空の下、僕の娘が本日結婚をする。
手間がかかる子ほど愛おしいとはよく言ったものだ。
小さな頃から好奇心いっぱいで、いつもこちらはハラハラしっぱなしだった。
生まれる前は褒めて育てるんだ!
なーんて言ってた頃はどこへ行ったのやら。
お小言や叱った言葉の方が多かったんじゃないかな?
それでも娘からは「ごめんなさい」よりも「ありがとう」の言葉の方が多かった気がする。
僕の記憶が確かならね。
お天気雨を狐の嫁入りって言うのを知っているかい?
僕はどうしてそんな例えをするのか不思議だったんだけど、今日ようやくわかったよ。
もちろん狐に化かされたわけじゃないよ。
心はこの青空みたく晴れやかなのに、どうしても雨がこぼれ落ちるんだよ。
幸せで心は太陽に照らされたみたくポカポカしているのに。
不思議だろ?
だから昔の人はごまかすために言ったんじゃないかな。
こんな天気がいいのに雨が降ることを「狐の嫁入り」ってね。




