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冬の天気予報

 北の大地に住んでいると、時折ひどく季節感に違和感を覚えることが多い。

 というのも、朝のニュースでは「東京ではまだまだ暑い日が続き……」などの天気予報士の言葉を聞くと、こっちでは既に秋用のジャケットを着て肌が冷える風に耐えていたりもするからだ。東京では25度を超えているのに、同日の北海道では15度を下回る。そんなことはよくあるし、本当に同じ日本という国に住んでいるのかさえ怪しくなる。


 北海道は秋が短いとよく言われるが、秋が短いというよりも、気の短い冬が江戸っ子のように駆け足で訪れるという方がイメージに近いと思う。

 そして、とうとう今日は冬の訪れを目にした。ふらふらと宙を舞う雪のように幻想的な雰囲気を持つ虫。そのものずばり、雪虫だ。

 この雪虫を目にすると「あぁ、冬が近いな」と思わず首筋を手でさすってしまう。雪虫は初雪を告げる虫と言われるように、実際1週間から2週間ぐらいの間で初雪が降るからだ。雪が降らないにしても、ひどく冷え込む日が間違いなく訪れる。


 幼心を持っていた頃は純粋に美しいと思える雪虫も、大人になってしまえば最初は綺麗だなと思っても、数秒後には「冬靴を下ろさないと」とか「灯油買いに行かなきゃ」など現実的なことを考えてしまう。

 しかも、この雪虫の厄介なところは白いところだ。自転車で走ろうものならば服にまとわり付き白い点々の模様を描くし、呼吸をすれば鼻や口に入ってしまう。幻想的な虫も、こうなってしまうとつくづく鬱陶しい。



 けれど、何故だろうか。



 毎年鬱陶しいと思いながらも、不思議と雪虫を嫌いになったこともないし、やっぱり毎年目にすれば綺麗だなとも思ってしまう。いなければいないで寂しく思えてしまうのは、なんたる大人の身勝手さなんだろうと思わず苦笑してしまう。


 そして、雪虫が去りかけた頃には寒い日が訪れ初雪が降った。

 やはり冬靴を下ろしていて正解だった。初雪は薄っすらと積りはするがすぐに溶けてしまい、道はビシャビシャに濡れてしまう。これがスニーカーだとジワジワとしみる氷水が足をキンキンに冷やしてしまう。

 そうなると北海道の人は寒さに耐え忍ぶのを早々と諦め、さっさと暖かくなりたいと灯油ストーブのスイッチを入れる。そこから先は、4月ぐらいまでストーブのスイッチが途切れることはない。北海道人は寒さに慣れていても、寒さに強いわけではないのだ。


 11月以降になるとちらほらと雪と雨が交互に降るようになる。ちょうど、雨が雪にバトンタッチをするように、天気予報では雪のマークを見る日が多くなる。雪は降るけど積もらないのが11月ならば、次の日起きたら雪景色になるのが12月だ。

 その頃になると、朝のニュースでも「東京は冷え込んできて……」という言葉を耳にして、こちらは「ようやくか」と灯油ストーブで暖かくした部屋の中から季節がようやく追いついたのを感じる。

 私は寒いのは嫌いであるが、実のところ冬は嫌いではない。


 むしろ、大好きだ。


 寒いという大義名分のもとに温めた部屋の中で、これでもかとグツグツと煮立った海鮮系の寄せ鍋に、寒いと寒いと言っているはずなのにキンキンと冷えたビールをグイッと飲む。

 この瞬間だけは、何度経験しても何とも言い難い幸せな気分になる。

 そういえば明日は根雪になるとニュースでやっていた。

 あまり人に理解されないのだが、誰の足跡もついていない雪の路面よりも、私はついつい葉っぱのない木々を見てしまうのだ。

 なぜなら、根雪になるほどの雪が降ると葉っぱのない淋しげな木々たちが、うっすらと白い花を咲かせているかのように見えるからだ。

 これが本格的な冬になると、雪がサラサラしてしまうのと、雪の重みでで落ちてしまったりして何とも風情がなくなってしまい、意外とこの景色を楽しむ時間というのは少ない。

 さてさて、明日は早起きしてその景色を見に出かけたいところであるが、困ったことに朝が寒いと布団から出るのがとても億劫になってしまい悩ましいところである。



 やはり、私は冬は好きだが寒さが嫌いなようだ。

北海道の冬ってこんな感じです!

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