136/140
落としましたよ
身体が緊張したかのようにピーンとしてしまった。
見なくてもわかる。私の顔はきっと強張っていたに違いない。
でも仕方がないと思うんだ。
180センチ以上ある身長に短い金髪。
見た目が完全に不良だったんだもん。
「あの…これ、落としましたよ?」
2回目の問いかけで、ようやく耳に入ってきた。
どうやら上着のポケットに入れていた手袋が落ちていたようだ。
ぎこちないお礼を言うと「それじゃ」とあっさり去って行った。
それが君との最初の出会い。
同じ駅で何回も君を見かけた。
だって、目立つんだもん。
その度に君は誰かを気遣っていたね。
電車で子供を連れた母親がいたらそっと席を立ったり。
私と同じように落とし物をした人に駆け足で伝えに行ったり。
小さい優しさを見るたび嬉しくなった。
でも君は見た目が怖いから、いつも相手には驚かれていたよね。
だから、私はいつか君に言ってやろうと思ってた言葉があるんだ。
「これ、落としましたよ!」
甘いお話が最近というかずっと好きです。
あまずっぺぇ漫画や小説があったら読みたい!




