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はじめての
春色に季節が染まった頃、ミルクの匂いがする妹がやってきた。
仲良くしてねと言われ、わかったと伝える。
妹は一日中、泣くか寝るかしかしない。
その度にあやしに行ったし、寝ない時は寝かしつけに苦労した。
赤ん坊は力一杯つかむから痛い。
夕暮れの色が好きだ。
この時間は妹もいない僕だけの時間だ。
雨上がりの土の匂い。
茂みの奥に何かあるかもと冒険する。
いつか妹と一緒に出掛ける日が来るのだろう。
世界は面白いと教えてやろう。
妹が大きくなってきた。
なのに、泣き虫は治っていない。
今日もまた力一杯抱きしめられ、頬を舐めて慰める。
この甘え癖は無くなる日が来るのだろうか?
僕よりも妹が大きくなった。
二人で出かける日が多くなり、妹と一緒にお散歩するのが楽しい。
時々、足取りが危ない時はさりげなくフォローする。
いつになっても世話が焼ける妹だ。
変わらない毎日。
毎日変わる匂い。
いつだって僕のはじめては君と共にある。




