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視線の先に
いつからだろう?
君の姿を追うようになったのは。
いつの間にか君のことを見ていることに気づいたんだ。
きっかけなんてもう思い出せない。
ただ君の優しさはずっと覚えてる。
私が教科書を忘れたときに笑って見せてくれたこと。
落ち込んで元気がない時に飴をくれたこと。
駐輪場で君が倒したわけじゃないのに、誰かの自転車を戻していたこと。
その全部を覚えているよ。
きっと、君は私だけに優しいわけじゃない。
それでいいんだって思う。
だって、私はその優しさに救われたから。
私だけに優しい君じゃないことが本当にうれしい。
だから、一つだけ決めてることがあるんだ。
君が困ったことがあったら絶対に力になるって。
そんな日があるかわかんないけど、そう決めてる。
そして、この気持ちに私はまだ名前を付けない。
君が私の姿を追うまで。
名前なんか付けてやらない。
視線の先に君がいる。
私は君に「おはよう」って言える今日が嬉しい。




