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焼きたてですよ
第226回の月の音色で朗読されました!
焼きたてですよ!
妻がそう言う度に、私にはもったいないぐらいよくできた妻だとつくづく思う。
新婚ぐらいの時だろうか。
私の好物を聞かれ、私は「たて」料理が好みだと言った。
炊きたて、焼きたて、採れたての「たて」料理だ。
それ以来、妻は「たて」料理を作る度にニコニコと笑って料理を出してくれる。
逆に苦手な料理もある。
お弁当だ。
どうしても時間が経ち冷めると味気なく感じるのだ。
もちろん妻の作る弁当に文句などない。
ないのだが、こればかりはどうしようもない。
冷ましたてなどという言葉はないのだから。
なんてことを妻に言ってしまった。
結婚生活も長くなり、苦手な料理がないかと聞かれたからだ。
すると妻はにんまりと笑って明日の弁当を楽しみにしてくださいと言った。
次の日の弁当を開ける。
そこには米の上にハートが描かれていた。
同封の手紙もあり、それを読んだ。
愛情たっぷり込めたてですよ!
私の妻はどうやらお茶目さんでもあるようだ。




