秋を謳う
秋を謳う
もう秋を謳うのは疲れた
うたうたびに流す涙はまだ涸れず
瞬きもしない目から流れ出る
私はここで終止符をうちたい
明日になればもう忘れてしまう今日を
謳うのはなぜ
逝ってしまった日々を忘れないために
きらびやかに散り
けれども何もかも同じように朽ちていく
生まれ変わる大地を夢見て
虚空を仰ぐ
無にあこがれる
自分の目で確かめられるものを信じることだけを教わった
人間の思い込みを
いま私は踏みにじる
それでも秋は謳われる
目の前で魔法のように消えていく美しさがゆえに
蜘蛛の巣に連なるいくつもの朝露を
手のひらにとりすするとき
秋は自分の存在を謳歌する