0.5
「……ふう。さて続き続き」
「おい、218世界に魔王送ったけど、勇者の準備出来たか?」
「……え?」
「……ん?」
「……288じゃなくて?」
「お前なに言ってんだよ。218だろ。288なんてまだ出来てねえだろうが」
「……」
「……おい」
「……えーと、288と思ってただけだからほら、ちゃんと準備出来てるし、ね。ほらこの子。学生で若いし、運動も頭も良い。しかもイケメンで性格も良い! 勇者にピッタリ!」
「……」
「……な、なにかな?」
「……お前、何か隠してないか?」
「な、何がさ! 何も隠してないよ!」
「……嘘が下手すぎる。何その汗。明らかじゃん。何やらかした?」
「えーと……怒らない?」
「場合によるな」
「じ、じゃあ言わない!」
「じゃあって、絶対何かやらかした奴の台詞じゃん! 吐け! さっさと吐けコラァッ!」
「や、やめろ! 私は神ですよ!」
「俺もだよ!」
▽▲▽▲▽
「……ユキヤ」
「はい」
「魔王が誕生したことは、まだ神殿と王城の上層部しか知りません」
「え?」
「誕生したばかりで、魔物が強くなるなどの影響もまだ出ていません。そんな状況で発表してもいたずらに混乱を招くだけ、というのが上層部の判断です」
「ああ、そういう……」
「ええ。ですから、私達の使命、その最善は、魔王の影響が絶望的なものになる前に討伐することです」
「はい」
「それと、魔王が誕生したことはもちろん、ユキヤが勇者であるというのも隠さねばなりません。勇者とは、魔王と対になる存在ですから」
「ああ、そうですね。わかります」
「なのに……」
「ん?」
「なんですかあれは! ギルドで絡んできた者をこてんぱんにするのはまだしも、なんですかあの魔法適正は!」
「ええ!?」
「あんなの、自分勇者ですって言ってるようなものじゃないですか!」
「ええ~……」
「なんとか誤魔化して凄い新人扱いで収めましたけど」
「ありがとうございます、フィーネさん」
「あ、いえ、それはその、当然のことをしたまでですから……」
「いやでも、フィーネさんが居なかったらどうなってたか。いきなりこの世界に召喚されて、周りはいきなり怖そうな人達だらけだし……本当に、あの時フィーネさんが出てきてくれなかったら泣いてたかも知れませんよ」
「な! 泣き顔ですか……ほほう」
「フィーネさん?」
「……なんでもありません……じゅるり」
「フィーネさん!?」