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不死の姉とネクロマンサー  作者: キリタニ
第二章 ラッケン州長の依頼
32/229

32 行動

 

 命からがらと二層に上がって、フィリオさんに加速魔術掛けて貰ってさらに一時間走った。

 適当な岩陰に隠れてじっと待ってたら、三十分すぎても餓龍の姿が見えない。

 前回のあいつの速度はせいぜい人より少し速いくらいだったから、これで撒いたと信じたい。


「たぶんもう大丈夫だ、蛇龍(リンノルム)は翼がないからそんなに速く動けないと聞いている」


 フィリオさんも同じ意見のようだ。


「ふぅー」


 俺は息を吐いて、腰抜けたように座り込んだ。


「まったく、変な落石が階段を塞いだからこっちからお前らを迎えようとしたら、とんだものが出てきちまったな」

「本当に助かった、ありがとうございます、フィリオさん、フォックスさん、シリウスさん」


 俺は立ち上がり、フィリオさんたちに深々と頭を下げた。

 見れば《デトネイター》の人たちは体中に細い傷がそこかしこにあった。

 俺たちと違って、彼らに広範囲の索敵方法はないはずだ。

 それで俺たちとほぼ同じ時間でもう一つの階段に辿り着いたってことは、かなりの強行軍に違いない。


「貴方達がいなければフィー君も私も死んでいた、本当にありがとうございました」

「ええ、蛇龍(リンノルム)と聞いても助けに来てくれた貴方たちの勇気に敬服します」


 姉さんとリースもそれぞれ礼を言った。


「いいって、戻るまでが依頼って言ったろ? お前らを守るのも依頼の内だ」


 フィリオさんはぶっきらぼうに言った。


「ああ、それに女を逃がして殿をやる坊主は嫌いじゃねぇ、死なせちゃ寝目覚めが悪くなる」


 寡黙のフォックスさんも俺の肩を叩きながら言った。

 蛇龍(リンノルム)の前にも一歩も引かないフォックスさん、マジ痺れる。


「それより、あの落石のことだ。俺たちを狙って来た感じだが、あんたらは心当たりあるのか?」

「それは……」


 リースが事情を説明した。

 それを聞いて、フィリオさんは顎に手をやり言った。


「つまりなんだ、この依頼自体が州長がソラリスさんを消すために出したのか?」

「はい、巻き込んでしまって申し訳ありません……」


 リースさんがまた頭を下げようと、フィリオさんに止められた。


「だからそれはいいって、モンスターから守るのと暗殺者から守るの違いだけだ」


 フィリオさんは頭を掻きながら言葉を継いだ。


「でもなソラリスさん、それじゃ州長がハートショットの黒幕ってことだろ? どうするつもりだ?」

「父を止めます、そのために皆の協力を仰ぎたい」


 リースは自分の計画を話した。

 それを聞いて、フィリオさんはますます眉を顰めた。


「つまり、自分の父を討つのを手伝わせたい、ってことか」

「……はい、あくまで父が実力行使に出たら、の場合ですけど」

「うーん、どうする、お前ら?」


 フィリオさんは仲間の二人を見回った。

 フォックスさんは肩を竦める、シリウスさんは鼻で笑って、フィリオさんの背を叩いた。


「そんなの訊くんじゃねぇよ、お前はもう決めたんだろ? ついていくさ、俺もこいつも」

「はっ、そうだな」


 フィリオさんも拳でシリウスさんとフォックスさんの肩を小突いて笑った。

 そしてリースに振り返ると、


「わかったよお嬢様、俺たちもドラッグの連中にこの都市を好き放題させたくないからな、協力させて貰うぜ」

「本当に、ありがとうございます……!」

「そこの来たばかりの二人もこの話に乗っただろう、俺たちにも意地ってもの見せなきゃな」


 フィリオさんは俺たちを見て笑った。

 俺も笑い返したが、事情が事情なだけに少し後ろめたい。


「しかし、これじゃ戻る道もあの連中に襲われるってことか?」

「それはたぶんないじゃないかな」


 俺が答えた。


「向こうはもう二十人以上失ったからな、しかも今俺たちはフィリオさんたちと合流したし」

「なるほど、まともの相手なら少なくともここじゃ仕掛けられないか」


 フィリオさんが頷いた。


「それじゃ早く移動するか、たとえ追いつかれなくてもここに長居したらあいつと鉢合わせするかもな」

「ええ、わかりました」


 丸一日歩いて、そのあと暗殺者と戦って、それに餓龍から逃げること一時間。

 姉さんもリースも相当疲れが溜まってるはずなんだけど、それでも誰も反対してない。

 俺たちは改めてダンジョンの出口へと出発した。




 四日後、俺たちは地上に戻った。

 俺の予測通りなのか、戻る途中襲撃などなかった。

 しかし帰ってきた俺たちを待っているのはもっと質が悪いものかもしれない。


「ロザミアさんと連絡取れない?」

「はい、いつもはこの魔道具で連絡取ってますけど……」


 リースは鳥状の魔道具を手にして、困ってるように言った。

 さっきから何度もそれを口に近づいて呟いてたけど、どうやらロザミアさんからの返事は来てないみたい。


「もしかしてダンジョンに入ったとか?」

「いいえ、魔道具から魔力が消費されてるのを感じてます。もし相手がダンジョンの中に居たら通信(メッセージ)の魔術は失敗して魔力を消費しないのはずです」

「つまり、返事できない状況ってこと?」

「それは……」


 リースは顔を曇らせる。


「私たちがダンジョンに入ってる時、ロザミアさんは何してたの?」

「協力者と一緒に拠点を監視してるはずです」

「なら、考えられる可能性は」

「捕まえられました、のですか」


 姉さんは頷いた。

 リースの顔が一気に青白くなった。


「その拠点はどこにあるか知ってる?」

「いいえ、ラカーンに戻ってすぐ家の人が迎えに来てましたから、そっちの連絡はロザミアさんに任せました」


 リースは俯いて首を横に振った。


「とりあえず安否確認をしようか、何か手掛かりがあるかもしれん」


 フィリオさんはそう言って、便利袋(ハンディパック)から一枚の鏡を取り出した。


「それは……あっ」

「そうだ、探知(スクライング)だ」




 フィリオさんは適当に開いた場所を見つけて腰を下ろした。

 そして鏡を自分の前に置いて、目を閉じて詠唱を始まった。


「汝、ロザミア・ソーラレイを示すものなり、真実を映すものとなりたまえ、探知(スクライング)


 詠唱が終わった途端、鏡は強く光って、やがて光が収まり、そこにはロザミアさんの姿が映っている。

 俺たちは鏡を囲い、鏡に覗き込んだ。


「すごい、ロザミアさんだ!」

「どうやら意識を失ってるようだわ、鎧と装備は外されてるし手も縛られてる、やはり捕まったのね」

「ここは……だめだ、暗すぎて何も見えません」

「床は木造らしいな」

「しかしそれ以外はわからないな、この都市に木造の建物などどんだけあるか……」


 俺たちのそれぞれの言葉に、リースの表情は段々暗くなっている。

 鏡から得られる情報だけでは、ロザミアさんの居場所を突き詰められない。


「少なくとも、今はまだ無事だとわかっただろう」

「はい……ですが、一刻も早く助けなければ」

「そうだな……あ」


 俺は急に思い出した、ヴァイトさんにハートショットを調べて貰ってることを。


「どうしました?」

「リース、その魔道具貸してくれていい?」

「あ、はい、いいですけど」


 俺はリースの魔道具を使って、ヴァイトさんと連絡を取った。

 通信(メッセージ)で伝わるのは短い言葉だけだから、とりあえず今すぐギルドの前に会うように頼んだ。



 一時間後、ギルドの前に待ってる俺たちの前に、ヴァイトさんたちが現れた。

 リースとフィリオさんには聞かせたくない話だから、先にギルドに入って依頼の報告をしてもらってる。


「久しぶりだね、ヴァイトさん」

「ああ、ここ数日ずっと通信(メッセージ)送ってたけど、お前らずっとダンジョンにいたのか」


 どうやらダンジョンにいる間、ヴァイトさんからの連絡を受けそびれたようだ。

 やはり通信(メッセージ)の魔道具は必要か。

 それはさておき。


「ヴァイトさん、ハートショットの件について何か進展ないか?」

「いきなりだなおい……」

「今は急いでるから」


 ヴァイトさんは怪訝そうに俺を見て、そして口を開いた。


「そうだな、州長との関係はまだわからないが、ドラッグ卸す場所と、売人がよく出入りする所を把握した」

「本当か!?」

「あ、ああ、ていうか向こうはあんま隠したがらないようだ、むしろ今まで捕まってないのが不思議だぜ」


 やはり裏で繋がってるからかな、っとヴァイトさんは呟いた。


「じゃ今すぐその二つの場所を教えてくれ!」

「ああ、そういうと思ったから地図に書いておいた、ほらよ」


 俺はヴァイトさんが渡した地図を見る。

 一つは都市の離れの倉庫街、もう一つは反対側、ヴァイトさんたちと会った酒場の近くにある。


「ありがとう、助かった!」

「お、おい!」


 俺は礼を言うと、ヴァイトさんを残してギルドに飛び込んだ。





「二ヵ所か……」


 フィリオさんが腕を組み、地図を見て何か思索しているようだ。


 あの後、姉さんがヴァイトさんたちに他の情報も聞いた後、続けて調べるようにと指示した後、彼らを見送った。

 俺は地図を持ってリースとフィリオさんたちに見せて、今俺たちはギルドから部屋を借りて、これからの行動について相談している。


「倉庫と裏町か、裏町は人目が付きにくいから、たぶん売人が集まる場所だろ」


 フィリオさんは地図の一点を指して言った。どうやらこの前の酒場のところは裏町と呼ばれ、この都市の無法地帯のようだ。

 俺は頷いて、もう一点を指して、


「で、この倉庫はたぶんハートショットを卸す場所だろう、しかし両方とも木造らしいな」

「そうですね……」

「じゃ、こっちも二手に分かるか」


 フィリオさんは結論を出したようで手を打った。


「そうですね、どれか一つ攻めても、もし外したらロザミアさんの身が危なくなります」


 リースも頷いて賛同した。


「まあ、両方外れってこともありえるけど、今考えても仕方ない」


 今は時間が大事だ、向こうはいつロザミアさんの口を封じるかわからない。

 これ以上情報集める暇はない。

 最悪の場合はそこで人を捕まって他の拠点を吐かせばいい。


「では、フィリオさんたちはどちらに?」

「ふむ、俺たちは倉庫街にいく。あそこはスラムより空いてるから、一般人が近づくと気づかれやすい、俺なら不可視の球体インビジビリティ・スフィアを使えばいい」


 不可視の球体インビジビリティ・スフィアは中にいるものを外から見えないようにする球体を作り出す魔術だ。

 数人も入れるから集団での隠密行動には適している。


「坊主たちとソラリスさんは裏町だ、道は分かるか?」

「ああ、前に行ったことある。ここからだと裏町のほうが近いから、フィリオさんが出発した後数分で動くよ」

「うむ、それがいい」


 行動を決めて、俺たちは十分間だけ休んで、そして準備を済ませてギルドを出た。



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