20 いろいろ整理
さて、ソクラテの研究室での収穫を整理しよう。
まずは便利袋、生成系に属する空間魔法で作られる魔道具。
最大容量は術者の腕によってばらつくから検証しなければ分からないが、少なくとも八骸の番人と俺たち二人の荷物を入れても余裕のようだ。
これで場合によっては他のアンデッドも入れおいて人海戦術も視野に入れるが、今のところ召喚で物足りてるし、アンデッド創造は下手すれば命を削るからやめといたほうが良いだろう。
二つ目は収穫にカウントされるか怪しいだが、その八骸の番人のシーちゃんとリアちゃんだ。
ロントにボロボロやられたけど、これは身体自体が俺の魔力で作ったから直すのは簡単、今はもうビンビンしてる。理論上俺が負のエネルギーを流し続けば際限なし戦えるが、例によって出力の問題で大した戦闘力を持っていない、俺たちと戦った時より弱いだろう。
ちなみにこいつらに屍僕強化使っても効果はなかった、何か条件があるかもしれない。
三つ目、波を打つような模様の黒いマント。スーチンの記憶によると《闇夜のマント》と呼ばれているらしい。
このマントは召喚媒介として召喚されたアンデッドを宿らせる、簡単に言えば姉さんがファントムを自分に降ろせるみたいで、俺もアンデッドを身に着けるようになる。ただしこれは実体のあるアンデッドにも有効、試しにゾンビを入れてみたら、俺の意志でマントから手足だけ出させるらしい、これで戦術に幅が出るが、非常にキモいので姉さんがドン引きした。
四つ目、《死配者の指輪》。
これには二通りの機能がある。まず一つ目、これをつけてアンデッドを召喚すると、自動的に屍僕強化の効果がつく。
そして二つ目は任意で一体のアンデッドを選んで自分とリンクさせられる。リンクしたアンデッドは俺の魔術を行使できるようになるけど、倒された時にそのフィードバックで俺もダメージを食らうから良し悪し。
五つ目、《再死の首飾り》。
アンデッドがつけると自己再生の能力を手に入り、徐々にだが怪我が復元する。逆に人間がつけると段々虚弱になる。これで姉さんが傷ついても簡単に治るようになった。
六つ目、《霊装鎧》という魔道具。
外見はただのビー玉だが、体に埋め込むと不可視の力場を身体の表面に浮かべる。力場は鎧のような形で物理攻撃は勿論、実体のない敵からの攻撃もある程度防げる。何より重量が殆どないのが素晴らしい。姉さんは戦闘スタイル上ごつい鎧を着れないからこれを埋め込んで貰った。
最後は、ロントが投げた短剣。
これを鑑定した結果、人間が加工できる最高の硬度を持つ金属アダマンティウムで作られたことが判明した。ミスリルより数段高いその値段に俺も姉さんも口が塞がらん。
売るのも勿体ないけど、生憎俺も姉さんも短剣は専門外なので一旦おいとく。
その他沢山の使えないアイテムや手に余る魔道具は全部売り払うつもりだが、時間が足りないし目立ちたくないのでまず必要の分だけ換金しようか。
他にもソクラテの研究資料とまだ解明できてない魔術を記した魔道書とかも結構あるけど、これらは時間があればじっくりと読み解こう。
さて、こんなところか。
「フィー君、何してるの?」
「うーん、いや研究室から持ってきたものを整理したらね、ソクラテってすごいだなと思った」
「そうだね、怖いアンデッド一杯作ったもの」
「あれは衝撃だったなぁ」
俺たちはしみじみと頷き合った。あのアンデッド・パレードは夢に出そう、今のところ出てないけど。
「それで思ったんだけどさ、ガーリック村のアンデッドってどれも強そうじゃない? なんであんなに強いアンデッドを創造できるのにあんな面倒くさい呪い作ったの?」
「うーん、これは推測だけど、たぶん呪いとか関係なく、ガーリック村の人々は元々そうなる予定だったのじゃないかな、ソクラテ的に」
「どういう意味?」
「あの時、研究室にはたくさんの死体があったでしょう、私はそれが気になったの」
「そういえばあったな……」
ソクラテの研究室には人間とモンスターを含めて大量の死体が残ってた、長い間実験を続けてきたと考えれば、どうやって死体を入手できるのが疑問になる。
そもそもこの世界では人間が死んだら燃やすのが普通だ。モンスターならまたしも、大量な人間の死体を手に入れるのなら、合法的な手段ではとても考えられない。
「恐らくなんだけど、ソクラテは死体の搬送にガーリック村の人を使ってたじゃないかな、出入り口が村の中なのもそのため」
「そうだな、あれだけの死体を村人に知らずに運び込むのは無理だろう」
「それとガーリック村の人の話によると、彼らは呪いのせいで森を出られない。そういう広範囲の結界は一朝一夕では作れないのよ。だからソクラテはきっと元々彼らを閉じ込むつもりだと思うわ」
「口封じにも兼ねて、か」
「たぶん元の計画では完全にアンデッドにして自分の軍隊にするつもりだったのでしょう、でもその前にスーちゃんが死んじゃったから中途半端な呪いになった」
「そこまで用意できていたのに、なぜ自殺したのかな」
「さあ? 本当にスーちゃんのことが大事だったんじゃないのかな?」
一体どういう関係なのだあの二人。
「案外アンデッドを用意しようとしたのもスーちゃんのためかもしれないわ」
「スーチンのため?」
「ソクラテは元お姫様のスーちゃんを攫ったから所謂お尋ね者状態なんでしょう? じゃ防衛戦力が欲しいのも理に適ってるじゃない?」
「過剰戦力だろうあれ……」
「それだけ相手が強大のことでしょう?」
「まあ一国相手ならありえるか」
ガーリック村の人たちとソクラテは結局どっちも自業自得と言えなくもないけど、巻き込まれて死んでしまったスーチンは可哀想としか言えないな。
スーチンも何だかんだでソクラテに良くして貰ってたし、そういう一面は知らないほうがいいだろう。
「そういや姉さん、スーチンは今体の中にいるだろう、この話は……」
「大丈夫よ、今は寝てるから」
「寝てる? 幽霊って寝るの?」
「うーん、普通の降霊術だと寝ることはないけど、それじゃ霊体は長く体にはいられないのよ、結局は異なる霊体なんだからね」
「やっぱりあれは普通の降霊術じゃなかったのか」
「異なる霊体を身体に長時間宿らせるにはある程度の生命力を共有しなければならないわ、だから今のスーちゃんは私が見る、聴く、食べるのも感じられる、そして五感の刺激を受けてる以上、睡眠は必要」
「生命力を共有って、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないかな、スーちゃんが私の身体を乗っ取ろうと思わない限り」
「おいおい……」
それは大丈夫とは言わないぞ。
まあ俺もスーチンが姉さんに害を為すとは思ってないけど。
「そういえば姉さん、ロントの言ったことを覚えてる?」
「欠片とかなんとかの話?」
「うん、あいつやっぱりフォー=モサのこと知ってるよね?」
「少なくともそういう存在が居るってのを知っているでしょうね、でなければ直接欠片を授かったとか言わないはず」
「で、もう一つ」
「うん?」
「実はソクラテって前の死霊秘法の保有者じゃないかと思ってるんだ」
「たしか凄い死霊魔術師ではあったね」
「ああ、それにいくつのオリジナルの魔術も編み出したから、可能性は高いと思う」
欠片の適合者は偉業を成すことが多い、特に魔術の進歩に対しての貢献が大きい、何せ適合者はその魔術の源を掌握しているからだ。そう考えれば、いくつのオリジナル魔術と未知のアンデッドを作り上げたソクラテが適合者である可能性が高い。
「子供も居なさそうだったしね、で、それが?」
「もしかしてロント、ていうかゲゼル教国がソクラテが適合者であるのを知って、彼をスカウトしに来たってことじゃないかな」
「でも目的は黒翡翠って言ってたじゃない?」
「あ」
完全に忘れてしまった。
「まあ実は黒翡翠とソクラテ両方とも欲しいってこともありそうだけどね」
「そ、それだ」
「ゲゼル教国について何か知らないか聞いてみようか、ギルドに」
「そうだな……目を付けられたかもしれないし」
「そろそろ時間だし行きましょうか、ギルドに行く前に換金しておかないと」
「おう、いつでも出かけるぜ」
「寝癖を直したから言ってね」
「うっ」
十分後、姉さんに身嗜みをチェックして貰った後、俺たちは宿を出た。
TRPGやる時、セッションが終わってゲットした宝を点検する時が一番わくわくしますね。




