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不死の姉とネクロマンサー  作者: キリタニ
第六章 残影の都市
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104 過去の真実

 

 男性はゆっくりと顔を上げて、知らない言葉を喋り出した。


「スーチン、わかるか?」

『うん……成功か、と喋りました』


 どうやら始国の言葉らしい。

 男性はスーチンを見て、目を見張ったが、そのまま言葉を継いだ。


「□□□□……□□□□□、□□□□」

『ようこそ、未来の人、俺の願いを聞いてくれないか』






「未来の人って、一体どういうことだ?」


 俺の問いに対して、男は口元を吊り上げて笑おうとしたが、鎖骨が貫かれたせいでうまく笑えなかった。


「あまり時間がないから詳しく説明はできない、まず俺の名はフェイダン、時間を操作する能力を持っている。そしてお前らは、俺が描いた魔術陣を踏んで、未来から召喚されたのだ。どの時代かは知らないけどな」


 男――フェイダンの話をまとめると、彼のような特殊な能力を持つ者は《禍憑き(まがつき)》と呼ばれ、国に管理されている。

 しかし長きに渡る戦争を終らすために、始国の皇帝は邪法に手を出した。

 邪神を呼び出すために、皇帝は彼ら《禍憑き(まがつき)》から生きたままで血を抜き、その血で巨大な魔術陣を描き上げた。


「仲間たちも結構やられてな、今もどれくらい生き残ってるか……」

「それで俺たちを?」

「いや、お前らを呼んだのは、儀式を阻止したいからだ。俺は見たんだ、儀式が成功した後、世界が滅ぶ姿をな」

「世界が滅ぶ? それも時間操作の能力でか?」


 俺はナタボウで作ったペンダントを触れて、男の心臓に紫の光が出てるのを確認した。

 欠片の適合者なら、これくらいのデタラメもありえるか。

 なんだかもう滅多なことじゃ驚かない自分が怖い。


「へ、信じてくれるのかい? まあそのほうが話が早いか。ああ、能力で知ったんだ、儀式が成功したら世界が滅ぶってよ。だからお前らに頼みたい、別に儀式を壊す必要はない、ただここの最上階へ通じる階段に設置された楔を壊せばいい」

「なんでそれで儀式を止めるって知っている?」

「協力者が居るからさ。異国の魔術師で陛下に偉く信用されてな、元々この儀式を提案したのもあいつだがな」

「異国の魔術師って、もしかしてソクラテか!?」

「っ、なぜその名前を知っているんだ?」

「それはいい、なぜソクラテは儀式を止めたいのだ?」

「□□□□□□□、□□□□□□」


 フェイダンが喋った後、一瞬遅れて、スーチンが翻訳した。


『……本当かどうかわからないが、あいつは生贄に情が移ったらしい』


 隣からルナが息を飲んだのを感じた

 生贄に?

 ソクラテはその人を助けたいってことか?

 だとしたら、生贄は――。


 そんな俺たちを余所に、フェイダンは言葉を継いだ。


「あの娘を連れ出せば儀式は不完全に終わる。だが向こうもソクラテを警戒しているようで、あいつだけを弾く結界を組んでいる、だからお前らに頼みたい。結界の楔を壊してくれれば、あとはソクラテがやってくれる」

「ソクラテだけを弾く結界?」

「ああ、効果を限定にすることで結界の力を強めたらしい……そうでもしないとあいつを止めるなんて無理だからな」

「楔を壊せば生贄は助かる、ということだな?」

「そうだ」

「……」


 一見なんともないように翻訳を続けているスーチンだが、その目に宿した悲しみは、ルナのように魂で繋がらなくとも読み取れるほどだ。

 しかしスーチンが頑張って強くあろうとしてる以上、俺たちが気を遣うわけにはいかない。


「……俺が知る限り、不完全な儀式で呼び出した邪神は、この都市の全ての住人をアンデッドにしたぞ」

「ああ、それも見ていた。だがそれでも、もう一つの未来よりは大分マシだ」

「そうか、もう一つ、俺たちはどうやって戻る?」

「俺が送り返すから、任務達成したら戻ってくれ」


 なるほど。俺達は事情を知っているからフェイダンに協力するが、もし事情を知らない人が呼び出されたら、元の時代へ戻ることを餌に協力させるつもりだろうな。

 しかし、


「なあ、俺もお前が言う《禍憑き(まがつき)》だから分かるが、お前もうそんな力残ってないのだろう?」

「……」


 フェイダンの身体はすでに限界に来ている。

 恐らくずっと血を抜かれ続けたせいで、もはやスケルトンと見紛うほど痩せている。


 欠片の力を用いても、大規模な魔術を発動するには自分の血で魔術陣を描かなければならない、そんなことが、今のフェイダンがもう一度できるとは思えない。


「ははは……なんだ仲間か。そうだ、俺はもうあんな大魔術を使えん。だが、お前らを送り返すのは嘘じゃない」

「どうやってだ?」

「俺を殺せば戻れるさ。どうだ、今すぐやるか?」


 血まみれの顔を上げて、フェイダンは挑戦的な目で俺を見る。


「いや、協力するよ、俺たちも世界が滅ぼされたら溜まらんからな」

「そうか、礼を言う」


 鉄格子に近づいて、外の様子を窺った。


「人の声がある、どうやら本当に過去に戻ったみたいだな……」


 地下回廊はさっきのように陰湿で血肉の臭いに溢れてるけど、微かな照明があり、囚人の声も聞こえる。

 生者探索ディテクトリーヴィングを起動して、回廊から二人がこっちに近づいてくるのを確認できた。恐らく牢屋の見張りだろう、


「フェイダン、上まで兵士はどれくらいいる?」

「ここの見張りならそう多くはないが、塔の中にはかなりの数がいるらしい」

「そうか、ルナ、この錠前を斬れるか?」

「え、はい、できると思うの」

「じゃ俺が合図を出したら斬ってくれ」

「はい。蒐窮の仮面(ペルソナ)猛る戦士(ウォリアー)


 俺たちは牢屋の影に隠れてタイミングを計り、見張りがこの牢屋に近付いた時。


「今だっ」

「シっ」


 小さく息を吐いて、ルナは鉄格子ごと錠前を斬り飛ばした。

 俺は見張りが音に反応するより早く牢屋を飛び出し、襲い掛かる。

 まさか奥から侵入者が出てくるとは思わなかったのだろう、二人の兵士は音も出せずに崩れ落ちた。


「あとでな、フェイダン」

「幸運を祈るぜ」





 牢屋を出たら、地下回廊を辿り、地上への階段まで来た。


「地上に出たらいきなり囲まれるかもしれないから、気を付けてくれ」

「はい!」


 ルナは力強く頷いた。


「スーチン……大丈夫か?」


 スーチンを見る。

 やはりさっきのことで、スーチンがどう思ってるのが気になってしょうがない。


『……大丈夫です。父上とは、一回しか会ってたことありません……それに皆が居るから、寂しくありません。でも……ソクラテさんにお礼、言えばよかったと思います』

「そうだな、でもスーチンがそう思っただけで、ソクラテも嬉しいだろうな」

『うん……』







 地上に出たら、「未来」だったらそこにホウセンさんがいるはずだが、「今」は勿論そんなわけもなく、代りに数十人の兵士が居た。


「□□□□!」


 兵士達は怒鳴りながら武器を構えた。


「ちっ、やっぱりか」


 ビャクヤを呼び出し、兵士の群れに突っ込ませた。

 普通の兵士なら、十や二十がいてもこれで突破できたが、どうやら始京の軍人は一味違ったらしい。


「□□□□□!」

「□□□、□□□□!」


 最初に声上げた人の口から、《禍憑き(まがつき)》という言葉を聞こえた。どうやらフェイダンの仲間だと思われたらしい。

 そこから兵士の動きは早かった。

 彼らは階段を重点的に守り、何重もの槍衾を作って俺たちの動きを牽制してきた。

 一方、ビャクヤに対しては正面衝突を避け、むしろあえて攻撃を誘ってビャクヤと俺たちを分断しようとしている。


「くそ、なんだこの慣れた対応は……!」


 練度が申し分ない上で、なにより軍ではなく、明らかに強い「個」への対応に慣れている。まるで探索者だ。恐らくフェイダンみたいな《禍憑き(まがつき)》達への対抗手段として、優れた兵士をさらに対個人戦に鍛え抜いたのだろう。


「はああああ!」


 《強斬》で数本の槍をまとめて切り払って、思いっきり踏み込んだ。

 兵士達を突き飛ばして階段へ走ったが、階段の上からも無数の槍が突き出されて、後退せざるを得なかった。


「汝、氷の女王の酷薄さを知れ、氷の息吹(コールドブレス)!」

「□□□□□□、□□□□□□□、術式破壊(カウンタースペル)!」


 範囲魔術を使おうにも、向こうに対抗呪文を唱えられて、不発に終わった。


 相手の方針は明らかだ、決して攻めてこない、ただ堅牢な槍衾で階段の周りを固めて時間稼ぎだ。

 塔の外から今も新手が来ているはず、できれば早く突破したいが、さすがに高低差があって難しい。ボンバーチルドレンだと階段ごと吹き飛ばそうで簡単に使えない。他のアンデッドだとただでさえ狭い空間がより動きにくくなって突破できなくなる。

 ビャクヤだけなら突破は可能だろうが、そこで分断されたら終わりだ。

 待て、ビャクヤに乗れば行けるか? いや駄目だ、天井が低すぎる、ビャクヤに乗ればまともに動きが取れん。

 それに、楔を壊したら、また地下に戻らねばならないから、ここを守る必要もある。くっそ、どうすれば!


「フィレンさん!」

「ルナ?」

「あたしが行くの!」


 ルナは俺の考えを見抜いて、自分が適任だと言った。

 確かに、ルナの体型ならビャクヤを乗っても突破できるかもしれないが、それはつまりルナ一人を危険に晒すことだ。


「スーちゃんを、助けるの!」


 世界を救う為ではなく、ましてや未来へ戻る為でもない。ただ大事な仲間を助けるため、行動をしなければいけないと、ルナの表情がそう言っていた。


『フィレンさん、私も手伝いますっ!』

「スーチン……よし、二人に任せるぞ」

「うん!」『はい!』

「ビャクヤ!」

『GRRRRRUUUUUUUUUUUUAAAAAAA―――!』


 トカゲの首が生気を奪うブレスを吐きだし、周りの兵士を怯ませた。

 その隙にルナがビャクヤに飛び乗って、ビャクヤが階段へ疾走!

 雄叫びを上げながら、黒白の巨獣は堅牢な槍衾を蹴散らした。

 矢の雨がルナ目掛けて放たれたけど、ほとんどがビャクヤの翼に妨げられ、もしくはルナに切り払らわれた。


「二人とも、行け!」

「任せて!」


 兵士の包囲網を突破して、二人と一体が階段を駆け上がっていく。

 すぐさま追撃に行こうとしてる兵士達だが、


「させるか!」


 ドカーン!

 一階の階段を爆破した。


「さて、これで突破する必要がなくなった。今度は俺が時間を稼いで貰おう、悪いが数勝負なら負ける気がしないぜ?」


 俺の足元から、ぞろぞろと黒い影が蠢く。


※ブクマ200及び総合500越えました、ありがとうございます!これからもあねくろをよろしくお願いします!

※明日と明後日の19時も更新しますので、楽しみにしてください。

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