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ensembla 夢の始まり  作者: 油羽滝衣
8/8

「これは両極な立場の者たちの物語」

第一高校2日目編です。今回は題名に悩みましたが、いい感じのタイトルを決めれました!地味にタイトル考えるのが難しい。


誤字脱字多々あるやもしれませんがごめんなさい!気長に見ていただけますと幸いです>_<

分厚い雲が空を覆い、どこか息苦しさを感じさせる。気温は昨日よりも涼しいが宏明はシャツのえりもとを指でゆるめてから携帯で時間を確認した。

奏子によるパシ…もといおつかいはないので今日は待ち合わせ時間の5分前に着くことができた。だがまだ沢音は来ていないようだ。

まぁ昨日はだいぶ待たせてしまったのでちょうどいいだろう。とりあえず自販機で飲み物でも買っておくか。

そう思って昨日と同じ自販機へと足を向けると、

「おはよ、ヒロ!」

後ろから声をかけられた。

だが沢音ではない、女子の声である。

思わず振り返ろうとすると首筋に突然ヒヤリとした感触。

「のわぁ!」

我ながら情けない声をあげると声をかけた女子、真琴がクスクスと笑った。ヒヤリとしたものは彼女が手に持っていた缶ジュースのようだ。もう片方の手には菓子や飲み物の入った大きなビニール袋を下げている。察するにクラスへの差し入れなのだろう。

「あ、おは…」

反射的に挨拶をしようとしたのだが、突如まわりの時間が止まったような感覚に陥った。そして昨日の出来事が走馬灯のように宏明の頭を駆け巡る。

なにせ、帰国子女とはいえ真琴は宏明の頰にキキキキキキ…。

男子的思考回路がその言葉を認識しようとするのを拒んでなのか、思わず目を逸らすと真琴はにまっと微笑んだ。

明るくなって、コンタクトにして、大人びて、昔とはすっかり違う雰囲気のはずなのに変わることのない笑顔。それは彼女の本質を感じさせた。

「昨日の『復讐』が効いたのかな?」

小悪魔の如き微笑みで真琴は唇に指を立てた。対抗策を浮かべるも、所詮は全て嘘になる。それに現在、宏明は嘘を連ねられる立場ではない。ここは正直に言うことにした。

「あぁ、しっかり食らったよ。おかげで頭がパンクしそうだ」

「…そっか」

真琴は一度目を閉じてから満面の笑みを浮かべた。昔からだが彼女の思考はなんとも読みにくい。

「それじゃ、一緒に行く?」

すると真琴は宏明の腕を掴んだ。勢いで制服越しに柔らかい何かに当たった気がしたが、全力で考えないことにする。

「…悪いけど今日も沢音と一緒に行く予定だから待ってるんだ」

するとぷくっと頰を膨らませて真琴が小首を傾げた。

「えー!もしかして昨日の?いいじゃない、あんな陰険メガネくんなんて…」

「誰が『陰険メガネくん』だって?」

声に振り返るとすぐ後ろで沢音が満面(・・)の笑みをして立っていた。白いシャツを腕まくりして仁王立ちした姿は『ヤ』のつく自由業の若頭のような迫力だ。

それを見て真琴は小さく舌打ちする。

「せっかくいいところだったのに…」

「どこがいいとこだ?マ・コ・トちゃん?」

そう言いながら沢音は宏明の手を掴んでいた真琴をひっぺがした。

すると真琴は先ほど以上に頰をぷくーっと膨らませ、

「昨日も言ったでしょ?『知らない人に名前呼ばれるのは嫌い』って一言で覚えてくれないかな?」

「何言ってんだよ、知っててやってるに決まってるでしょ?馬鹿にしないでもらえるかな?もしかして君の頭では俺の考えの先は読み取れてなかったのか?それは大変残念な…」

「あなたの頭の中身なんて分からなくて結構!きっとピンクとピンクでできたお花畑が広がっているのでしょうね?それともネジがついていないのかしら?」

「真琴ちゃん気づいてる?今『ピンク』と『ピンク』って同じ色2回言ったよ?直前に言ったことを忘れてるの?老化かもね?」

「あなたの脳内を表すために1つでは足りないから2つにしてあげたのよ!相乗効果でしょ?もう!低俗なお話に付き合ってもらってあげてるんだからありがたく思ったら?」

お互い顔は笑ってるのにさっきから目は敵対心に満ち満ちている…。

間に挟まれた宏明は思わず頭を抑えた。これを止めるのはかなりの労力を使いそうだ。

しかし、その労力は使わずに済んだ。

というのも真琴の携帯電話が突然鳴り出したのだ。慌てて画面を確認すると、真琴は頰を引きつらせた。

そして、

「やっほー!ヤッシー!どうし…」

『どうしたのじゃない!』

電話から離れていても聞こえてくる音量で八嶋の声が聞こえた。その後の2人の会話から真琴がクラスのお使いに出ていたのに帰りが遅く八嶋が電話をかけたという事がわかった。

つまりは、

「「サボりか…」」

「うるさい!」

シンクロした宏明と沢音を指差しながら真琴が吠えた。

やがて電話を切ると真琴は眉間に皺を寄せ、

「むぅ、一緒に行こうと思ったのにぃ」

「残念だね、安心しなよ。ヒロは俺としーっかり君たちの学園祭を楽しませてもらうから」

隣でにやにやする沢音を一度睨みつけ、そして大きくため息を吐いた。

「まぁ仕方ない。ここはメガネくんにヒロを貸してあげましょう」

「あのさ、俺はいつから真琴の所有物になったんだ?」

「知らない。でも昔から『ヒロくん』は『ヒロくん』だと思うの」

「なんじゃそりゃ」

真琴はふふっと笑うと、

「ん」

手に持っていた缶ジュースを宏明に差し出した。

「さっきジュース買いに行こうとしてたでしょ?ちょっと多く買い過ぎちゃったからおすそ分けしてあげるね」

そういえば飲み物を買おうとしていたのを思い出した。

「あ、ありがと」

宏明はプルタブを開けて口をつけた。

すると、

「昨日は食べかけのクレープ取っちゃったし、これでおあいこだね」

またも走馬灯がフル回転し盛大にむせ込む。

見ると、目の前では真琴が必死に笑いを抑えている。

こいつ、わざとか…!

「おまえ、また変なちょっかい、を!?」

沢音が噛みつくと、真琴はポリ袋からもう一つ缶を取り出し、沢音めがけて投げつけた。…飲み物はアンダースローで投げるのが一般的なのになんで上からのオーバースロー!?

絶妙なスナップによって回転がかけられた缶を沢音はすんでのところでキャッチした。顔からは安堵の表情がうかがえる。

そりゃ、ビビるよな…。

「君にもあげる。私の優しさをありがたくいただいときなさい、それじゃ」

そして真琴はそのまま校門へと足を向けた。

って、

「重いだろ?運ぶのくらいなら手伝うよ」

「いいよ、これくらい!私は強いからね!それよりも学祭楽しんで。私のクラスのお化け屋敷にも来ないと許さないんだから!」

そう言って真琴は手を振りながら走って行った。

昔の真琴とは別人のようだ。でも真琴のままのところもあって…。なんというか明るくなったな、本当に。というよりも、思ってる事をしっかり言えるようになったのか…。

宏明は手を振り返した。なんだか懐かしい感覚に頰が緩む。

お化け屋敷、時間あったら見に行くか…。

「なぁ、沢音」

ブバシュッ!

振り返ると沢音が目を丸くして立っていた、顔や服から雫を垂らしながら。

「ええ!?」

どうやら缶の中身の()()()を盛大に吹きこぼしたらしい。

ん?そういえばこの缶、さっき真琴が沢音に渡し…もとい投げた缶だ。オーバースローで回転を加えて…。

「まさか…」

あぁ、舌を出して笑う真琴の顔が頭に浮かぶ。

「あんの女ぁぁぁぁぁ!」

憤怒の表情を浮かべる沢音に宏明は笑いを堪えながらティッシュを差し出した。


まだ沢音のシャツは湿っているが残りは自然乾燥に任せる事にして宏明達は第一高校へと向かった。

昨日と同じ坂を上り、昨日と同じ大仰な門を抜けて校内へ、全て同じ行動のはずなのに何かが違う気がする。

なぜかはよくわからないのだが…。

とりあえず午前中は目星をつけていたイベントブースを巡る事となった。

そして、

「二日目中盤になりましたがいかがでしょうか?瑞瀬宏明選手?」

休憩がてら寄った出店のイートインスペースにて沢音が尋ねてきた。

なぜリポーター口調?

しかし返答に悩み、目をそらしてソーダフロートを啜った。

昨日色々ありすぎて、若干頭が疲れているのか、ソーダの炭酸が染み渡っていく。

ソーダフロートはやはりメロンソーダに限るな。この炭酸とクリームが混ざった絶妙なしゅわしゅわ加減がたまらない。

「お前なぁ…」

そう言うと沢音はコーラフロートのクリームにスプーンを突きさした。

「ごめん…」

「いーよ。わかって言ってるから」

そして今度はフライドポテトに手を伸ばす。

「沢音…。後でたこ焼き奢るわ」

「あと唐揚げも買ってもらえると嬉しいんだけど♡」

「一個だけにしてくれ、小遣い日前なんだ…」

そして追加で購入したたこ焼きをつまみながらふと気がついた。

「そういえば…奏子、今日の午後からのイベントとは言ってたけど何するか言ってなかったな」

考えるとチケットをもらった日からずっと学園祭のクラスイベントについては本人から聞いていない。

昨夜も奏子の家に向かったものの秀二に『明日の練習でたぶんピリピリしてると思うから』と言われたため本人には会っていなかった。奏子は機嫌が悪くなると面倒くさいので遠慮したいし、目的は柊親子に残り物のおすそ分けしに行く事だったので秀二に渡した時点で目的は果たせたとして特に気にしていなかったのだが。

「現代音楽学科だから、ステージ発表かミュージカルとかか?」

そう言って沢音がパンフレットを広げた。

3日間ある学園祭のうち、2日間各々クラスがイベントを行い、空き日にクラブやゼミのイベントへ出るようにスケジュールが組まされているらしい。

様々な活動を見れるようにとはいえ合理的なんだかややこしいんだか…さすが第一高校?

「えっと。ヒイちゃんのクラス発表は…っとこれじゃね?」

沢音が見つけたのは昨日真琴のクラスが劇をしていた小音楽ホールのタイムテーブルだった。

見ると午後二つ目の演目のようだ。

名前は、『2-F2 創作歌劇 ロミオとジュリア』。

ジュリアって誰だ…?


☆☆☆☆☆


震えが、止まらない。

2-F2の教室には昨日の男女逆転カフェの荷物が乱雑にまとめられていた。磨りガラス窓越しに生徒らの楽しそうな声が響くが、教室の中には静寂な緊張感をまとっている。

その教室の中に生徒が一人。

出番まであと少しなの!頑張って私!信じてるよ私!

奏子は手の平に書いた人の字を凝視していた。胸元に抱いている仕立てられた衣装の香りが脈打つ鼓動を速めていく。

「う…」

座っていたパイプ椅子の上で三角座りをし、膝の間に頭を入れる。ただでさえ小さい体がさらに小さくなる。

このまま消えてしまえたらどんなに楽か…。

セリフ間違えたらどうしよう。

低音で話さないと…。

歌詞間違えないかな?

リズムズレたら…。

声裏返ったらどうしよう。

不安が言い方を変え、言葉を変えて頭の中をリフレインする。

「わ、たしは!」

手を呑み込まん勢いで人の字をのむ。今までもステージ発表はあったが、これほどまでに緊張しているのは初めてだ。

大丈夫。信じよう。何度も練習したんだから。このぐらいのステージいつも大丈夫だったじゃない…。

「私は!」

奏子は一気に椅子から飛び降りた。着地した途端、一瞬ふらつくがなんとか持ち直す。

あーガチガチだ。手に血液が流れていないみたい。

奏子は大きく伸びをした。そして息を吸い込み、ゆっくりと吐く。

「もう、大丈夫だよ!」

自己暗示はもう済ませた。後はなるようになるしかない。

だから、

「あぁ…小鳥になりたい」

劇中にあるセリフを呟いた。

「小鳥になりたい。翼に風を受けてあなたのもとへ飛んで行ってしまいたい。この名が、この身が、二人を別つのならばいっそ…」

そこで奏子はペットボトルの水を一気に飲み干した。緊張すると水分補給を忘れがちになってしまう。気をつけないと…。

一息ついて携帯で時間を確認する。準備の集合時間まであと20分ほどである。

先ほどの心臓の鼓動がようやく落ち着いてきた。覚悟決まったかな?

すると、突如携帯が鳴り出した。マナーモードにし忘れていたようで慌てて画面を見ると、SNSの通知で差出人は幼馴染の真琴である。

『カナ歌劇だよね?頑張って!時間行けそうだから見に行くよ』

思わず頰が緩んだ。

どのスタンプを返信しようか悩んでいると、真琴からまたメッセージが届いた。

そこには、

『そうそう昨日ヒロに会えたの!劇を見にきててね、ドッキリ成功♡』

そっか…。

奏子は返事として『よかったね!』と書かれたウサギのスタンプを送信することにした。

…驚いただろうな。二人は仲良しだったからきっと驚いただろうな。

もともと真琴には技術があったが、今やキーボードの腕前はこの学校で知らない者はいないほどである。宏明が2-F1の劇やステージを見に行っていたならば今の彼女の実力も知ることになっただろう。

それが何かのきっかけになってればいいけど…。

そこへ今度はメールが届いた。差出人は今度は宏明だ。

『劇どんなものか楽しみにしてる』

相変わらず要点しか書いてない…。全く。

だが思わず吹き出してしまった。

そっか…見に来たのか。なら私も頑張らないと。マコほど実力はないけど、私だってこの学校で頑張ってるんだから。

見せたげる!私の覚悟を!

すると突然、大きな音を立てて教室の扉が開かれた。

そして、

「カナー?ここに居たの?」

「もう!探してたんだからね、主役なしにはできないでしょ!」

「あ!ごめんごめん!」

クラスメイトに呼ばれ、時間に気がついた。集合時間まであと5分。

もう大丈夫。きっとできる。私を信じろ。

奏子は宏明に返信を送り、教室を後にした。


☆☆☆☆☆


こいつ…。

奏子に一応メールを送ろうと思い、先ほど送ったのだがその返信は、

『ヒロのバーカ!覚悟!』

だった。

わけわからん。

「お前、何を書いたらそんな返事が来るんだよ…」

隣から覗き込んでいた沢音が笑いを抑えながら聞いてきた。

「いや、知るか。俺はさっきメールを送っただけだ」

そう言って先ほど送ったメールを沢音に見せると、

「…なにこれ、業務連絡?」

「簡潔だろ?」

「ヒロ、クールとぶっきらぼうと真面目と単純と業務連絡は違うんだぞ?」

「は?」

「そこらへんをもうちょっとしっかりしてたらな…」

「何が言いたいんだよ」

「いや、そこはもうそのままの方がヒロだな」

勝手に考えられて、否定されて、解釈された…。

宏明は先ほど手に入れたパンフレットを丸めて沢音の脳天へと振り下ろした。

が、

「真剣白刃取り!」

間一髪のところで沢音によって止められる。勘が鋭い奴め…。

「宏明は単純なんだよ」

そう言って沢音が頭をわしゃわしゃと撫でた。

「やめろ!気持ち悪い!」

「ごめん、ヒロを見てると可愛くて…。家のラッキーに似ててつい…」

「ラッキーって犬じゃねーか!」

腹部を狙ったボディーブローは予想以上にしっかりと決まった。

「おま…、ツッコミ…バイオレンっ」

宏明は何もなかったように先ほど丸めたパンフレットを開いた。

『三輪学園第一高等部学園祭2日目小音楽ホール パンフレット』と書かれたそれにはこれから見る2-F2の劇についても書かれていた。

内容は言ってしまえば現代版ロミオとジュリエットで有名企業の御曹司とライバル企業のご令嬢の恋のようだ。(創作文学部が書いた作品の割にはなんともありきたりな設定だな)

「ヒイちゃんは何役かなぁ?」

先ほどのボディブローがまだ効いているのか、腹を押さえながら沢音が尋ねてきた。

「木の役だったりしてな」

小柄なあいつが何か主要な役をしているイメージはないし、歌劇…ミュージカル仕立てならば木が歌っててもおかしくない。

「ざーんねーん、カナは主役だよ」

声の主を見ると、真琴である。だが朝に見た制服姿ではなく浴衣を着ていた。

浴衣?

すると真琴は頰をぷくーっと膨らませ、

「なんでヒロお化け屋敷来てくれなかったの?待ってたのに…」

「ご、ごめん」

思わず手を合わせる。そういえば真琴のクラスのお化け屋敷に誘われていたんだった。

まぁ行けなかった理由は…。

「仕方なかったんだよ、どっかのバカ女のせいで俺の服がビショビショになってね。午前中はろくに室内発表行けてなかったんだ」

隣から()()()()()の沢音が話し出した。『バカ女』って…。

「よかったんじゃない?最近暑いでしょ?それにあなた馬鹿みたいだから頭冷やした方が良さそうだし」

頼むから俺を挟んで火花を散らすのやめてもらえないだろうか。

しかし、今回の決着は早めについた。

「真琴、座席埋まる。早く探さないと」

一緒に来ていたのか後ろにいた八嶋に指摘され、

「そうだったね、じゃまたねヒロ」

そう言って真琴はヒロ達よりも前の席へと向かった。見ると何人かの女子がまとまって座っている。友達なのかな?

…そしてこちらをちらちら見てくる。

なぜだ。

すると、なぜかその女子に手を振りながら沢音が尋ねてきた。

「さっきの葉月ちゃんの言葉聞いたか?『主役』って」

そういえば思わず聞き返し損ねたが言っていた。まさかあの奏子が主役とは…。

「なら…ジュリアか」

「いや、ロミオかもしれない」

そう沢音がチェシャ猫笑いをすると、舞台の緞帳がゆっくりと上がり始めた。

そして現れたのは紺のシックなスーツに身を包んだ…奏子だった。


☆☆☆☆☆


なんとか無事に過ごせている。セリフも歌も今のところ問題はない。

奏子は息を細く吐き、両手を合わせた。

今はジュリアが街の教会で二人の幸せのためにどうすればいいかを神父に尋ねるシーン。

この後は教会で自殺をしようとするジュリアを止めて、二人で狂言自殺をし、そのまま違う街へと逃げる。というストーリーの予定だ。

あと少し、あと少しで終わる。

「カナ…もうすぐだよ」

「うん」

奏子は緊張に乾く唇を舐めて舞台へと歩き出した。


☆☆☆☆☆


「なんだろう」

「どうした?」

「いや、気のせいか…?」


☆☆☆☆☆


もうすぐだ、もうすぐ。

家族達が狂言自殺を知り、二人の仲を引き裂いたことを後悔するシーン。神父が遺体を墓に入れたと嘘をついたという事にしているので奏子とジュリア役は舞台袖から様子を見ていた。

「次でラストシーンだね!カナ大丈夫?手が冷たいよ」

言われて気がついた。今になって緊張してきたのかもしれない。

「大丈夫だよ!可愛いお嬢様と一緒に逃げるから緊張しちゃったのかも!」

奏子は微笑んだ。

「嬉しい事言っちゃって…よし、行くよ!カナ!」

「うん!」

奏子は笑顔を向けて舞台へと向かった。

おかしいな。まるで足まで冷えたみたい。

踏みしめるたびに冷たい何かが奏子の身体中を走っていた。


☆☆☆☆☆


「なんだか…」

「どうかしたの?」

「いえ、何か…」


☆☆☆☆☆


終わった。エンディングソングも無事。

セリフも間違えてない。歌も…。

やっと、…やっと。

「最後に2-F2にもう一度盛大な拍手を!」

ナレーターを務めていたクラスメイトの声が聞こえてくる。

隣ではジュリア役の女子が笑いかけている。

舞台上のみんなと観客の拍手がホール中に響いている。

そしてゆっくりと緞帳が下りていく。

やっと、やっと…終わったんだ。

身体に乗っていたあらゆる重荷が一斉に落ちたようだ。

歩いているはずなのにふわふわと宙に浮いているような感覚がある。

じんわりと熱を帯びているような紅潮がある。

どうだったかな…私。

ヒロにはどう見えた?

カタやんも見てたよね、マコも他にもみんな…。

私、どうだったかな。

息を吐くと、自分が思っていた以上の速さで脈を打っていることに気がついた。

直後身体の芯がブレたみたいにふらつき、足がもつれた。

そして奏子の意識は…フェードアウトした。

おひさしぶりです。投稿遅く申し訳ありません…。今回で一気にこの物語のエンディングへと繋がります。

でも次のお話はまだ下書きすらしてない真っ白でさらにラストを私の頭が勝手に付け加えた感じなので…どうなることやら。

でもどのように話が繋がるかは決まっています!

至らぬ点がまた出てくると思われますがどうか暖かく見守っていただけますと幸いです(´∀`)

これからもよろしくお願いいたします

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