秘められた花園
「はあっ、はあっ、はあっ」
冷たく鋭い空気が、吐息の度に白く染まる。
女子高の制服を着た、やや背の低い少女が急ぎ足で歩いている。
里美は思いつめたような表情で、白く張りのある足をひたすら前に動かしていた。
たまに少し肉厚の下唇を噛む。何かを我慢するように。
寒さで、いつもは色白の頬がうっすらと桃色に染まっている。普段はよく動いて愛くるしい目も、今はまっすぐに、届かないくらい遠くを見据えている。
「はあっ、はあっ、はあっ」
熱のこもった吐息が、ひび割れそうな大気を白くこじ開けていく。
気温の低さとは裏腹に、里美の額には玉のような汗が噴きだし、顔にいくつもの流れの筋を作ると顎から雫となってこぼれ落ちた。
里美の全身からは、うっすらと熱気が立ち昇る。わずかな蜻蛉が白い息に紛れていく。
遥か彼方を見ていた瞳に、一軒の家が映しだされた。
「はあっ、はあっ、はぁっ、はぁ」
里美の呼吸に少し落ち着きが戻る。固まったように動かなかった目に、喜びの感情が溢れてきた。
「あああ……」
自分でも気付かないうちに、里美の口からは今まで抑えられてきた何かが漏れ出していた。
里美はもどかしいという様子でドアを開くと、身に付けていたスカートを脱ぎ捨ててトイレに駆け込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、ううっ」
閉じられたトイレの中。里美は一人、眉間に皺を寄せ息を荒げていた。
「出そう、もう少しで出そうなのに」
すごい便秘でもう大変。
「くぁっ、があっ、おおおお!」
切れた。