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 これより少し前のこと。

ユウが邪神のいる箱庭世界に消えて間もなく、サキも異世界にいる男女神の元に呼び出された。

「そなたが、かの者の縁者か?」

「まあまあ、何とかわいらしい」

 この世界を創造したという男女神は、他に類を見ないほどの美男美女だった。

 きらびやかな玉座にゆったりと二人で座り、サキが目のやり場に困るほど仲睦まじかった。

 サキは男女神からユウが消えた事情を説明された。

 ユウが邪神の戯れとして、終わりのない転生と死を繰り返していることを聞かされた。

 それを聞いて、サキは抑えられない怒りが腹の底から沸いて出た。

 どうしてあんな優しいユウが、そんな理不尽な目に合わなくてはならないのかと、強く邪神を憎んだ。

「我々の力を、そなたに貸そう」

「どうか、あの哀れな少年を救ってやって下さい」

 男女神の力を受け取り、サキは早速邪神のいる箱庭世界へとやってきた。

 ユウを救うために、邪神を懲らしめるために。

 サキはオオカミに囲まれたユウを見つけ、助けに入った。




『ふははは、我を倒せば、あの小僧も死ぬぞ』

 異世界から引きずり出され、挙句に何度も男女神の聖なる力をくらった邪神は、息も絶え絶えになりながらそう訴えた。

 邪神の影を足で踏んづけながら、サキは鼻息荒く言う。

「どうしてユウくんが死ぬってのよ。その理由を言いなさいよ」

『ふん、理由など簡単な事よ。あやつは、既にこの世界に引き入れた時に死んでいる。それが生きて動いているのは、我の力があった故のこと。我の力がなくなった途端、あやつの体は元の骸に戻る。今まであやつが生きていたのは、すべては我の力があってこそ、だ。我がそなたにここで倒されれば、あやつは元の世界に戻るどころか、死んでこの世界に永久に捕らわれるだろう』

「ふうん」

 サキは腕組みをして、ぐりぐりと影を踏みにじる。

『ぎゃああああぁぁぁ、痛い痛い痛い!』

 こうなっては邪神も形無しだが、サキは小指の爪の先ほども気にした様子もない。

 邪神の声が少しうれしそうに聞こえるのは気のせいだろうか。

「それで、どうしたらユウくんが生き返ることが出来るのか、その方法を教えてもらいましょうか?」

 答えなければ、即殺す、といったするどい目付きで、サキは尋ねる。

『そ、そんな方法は、無いわ! あやつが生きているのは、我あってこそだ』

 影をかろうじて保っている邪神は、蚊の鳴くような声で答える。

「じゃあ、仕方ないわね。ユウくんのことは、男女神様に相談してみましょう。男女神様なら、きっとユウくんが生き返る方法もご存知だわ」

 あっさりとそう言い放ち、サキは片手を上げる。

 サキの長い黒髪が揺れ、風が渦を巻く。

『わあああぁぁぁぁ、嘘です嘘です! 私の力を使えば、彼は生き返ります。だから命だけは助けて下さい!』

 邪神の必死な訴えに、サキは呆れる。

「最初からそう言えばいいのに」

 サキは溜息一つ、手を下げる。

 辺りを渦巻いていた風が止み、集まっていた力も霧散する。

「じゃあ、早くユウくんを生き返しなさい」

 サキは草の上で倒れたままでいるユウの死体を指さす。

 邪神は影のまま、そこに留まっている。

「ほら、早く!」

 サキにうながされて、ようやく動き出す。

『うう、邪神である我が、こんな小娘にこき使われるとは。何たる屈辱』

「何か言った?」

『い、いいえ! 何も言っておりません、サキ様』

「そう、それならいいけど」

 邪神の影はユウの体へと触れる。

 すぐに影は掻き消え、ユウの体の怪我が消え、手足がわずかに動く。

「うぅ」

「ユウくん!」

 サキはすぐさまユウに駆け寄る。

 ユウはうっすらと目を開ける。

 こうしてユウは生き返り、逃れられぬ死の運命から解き放たれた。

 めでたし、めでたし。

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