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2013年・2014年

魔女8聯

   魔女



かつて

望みをもって

神に祈った時期があった

体をふるわして

娘の手を取って

二つの影は揺れて

何度も泣いて

一緒の夢を見て

それでも

神を信じてた

守れると信じていた

ずっと

ずっと

やがて

望みは絶たれて

きれいなまなこは濁って

目蓋も腫れて

溢れていく黒い涙

ヒトを憎み過ぎて

穢れたたましいは

その内在に

罪と地獄を孕んで

毒を放ち始めた

蝶に呪いを

色彩に呪いを

巡る季節に呪いを

捏ねて世に離した

毎日

闇のように暮らしていた

千年も

ごめんね

と呟いて

這いつくばって

夜ごと

その姿を探している

小鳥たちが避けても

血の馨りを纏いながら

その姿を探し続けている
















   処女喪失



あるロックンローラーを

好きだった

一人の少女は

ヴァージンを散らさないまま

死んだ

まだ幼さを残して

あどけなさを感じさせる

その体はバラバラにはじけ飛んだ

一度も告白しなかったことを

後悔して息を絶えた

死ぬ瞬間に

母の顔を思い浮かんで

その顔は

優しさに溢れていた













  イブの妊娠



概念だけの国で

生きていられれば

哀しくもないのにね

異端の神々に

祈って

願って

陰りも持たず

抑えきれず

溢れだす

何を孕んで

何を破水して

何を産みだした?












 

  勃起



陰茎を勃起させて

おれはきみをけがすつもりだ

おまえの中身を

ぐちゃぐちゃに

混ぜるのだ

そうして

ふたつの思想が

あわさったとき

生まれるのは

いっぴきの

おわりある生命

いとおしい

おわりある生命


















   憎悪の国



私に毒を飲ませて

私にナイフを突き刺して

嫌われたくないから

生温かい中身をぶちまけて

死んでしまいたい

子宮のなかの

彼女とともに

ころしてください











  不整脈



おれが23のころ

まっくろな何かが

はいってきた

それはおれを

しはいして

息苦しくて

だれか

おれの脈をみてくれ

お願いだから

だれか

おれの脈をみてくれないか!













   理想論



無情な理念を抱えて

死んでいった

一人のテロリストがいた

彼女は

何千人も巻き添えにして

自爆した

その姿を見て

美しいと叫んだ人もいれば

なんて馬鹿な事をしたと

怒り狂う人もいた

罪のない少女は

その事件で

死んだ

彼女の遺族は

憎しみの業を

背負った
















  たったひとつの命だから



たったひとつの命だから

生きることは辛くても

錆ついた心を

凍りついた心を

もとに戻すのは難しいけど

あなたがいてくれて

それだけが

わたしの

わたしたちの









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