始まりの黄色い歓声⑤
ライブが終わり、気持ちのいい昂揚感に包まれた。
こんなに楽しい、気持ちがいいこととは思わなかった。
いつも兄がこんな気持ちでいる。
兄がライブが終わり家に帰ってくると気持ちの悪いテンションで帰ってくる。
私も今家に帰ったらそんな感じになるだろう。
「聖司なんかちょっと変だね。」
「え?そうかな。」
「うん。なんかいつもよりテンションが高いっていうか。気持ち悪い。」
私の隣にいる「SeTuNaOTo」のリーダー。兄と同じ年の十七歳、築哉。
毒を吐くように事実をズバズバ言ってくる。
でも落ち着いていて、冷静沈着というかあまり感情の起伏が見えない。
兄と一番仲が良かったらしく家にも来たことがある。
メンバーの中で唯一私にあったことがあり、一番ばれる可能性が高い。
「二人とも今日は俺が車に乗せていくから早く来い。」
「はーい。」
「俺も隼人さんの車にですか?」
「ああ、チーフは仕事があるから事務所に戻ったんだ。先に聖司を乗せていくからちょっと遅くなるけどいいか?」
「うん。大丈夫です。」
「なら早く来い。」
だから、先に築哉さんにも説明しておく。
ライブ中に決まったことらしいがあさっての生放送一人で出ることになっていたが一緒に出るらしい。
確かに私もだれかサポートしてくれる人がいたほうがやりやすいが認めてくれるのか、
兄や隼人さんは大丈夫だといっていたが本当にそうなのか。
「聖司。」
「あ、ごめん。今いく。」
考え事をしていたら足が止まっていた。
先に進んでいた二人が不思議そうにこっちを見ているのがわかる。
私は大急ぎで二人に駆け寄った。