始まりの黄色い歓声③
「おー。まさかここまでとは思わなかったな。」
神崎さんにウイッグをつけてもらい軽くメイクをしてもらう。
それだけであら不思議。兄にそっくり!!
「あの、どうしてこんなことに?」
「ちょっと政治みたいな声って出せる?気持ち低めにしてもらっていい?」
「・・・だから、なんか考えてるみたいですけどいやですから。」
隼人さんは私の意見は全く聞いていないみたいだ。
「声も完璧。歌はCDをそのまま流すからいいとしてあとはダンスか。」
「だからやりません。何させたいのかわかってきました。絶対に嫌です。ばれたときになんて説明するんですか。」
「メンバーには黙っておくよ。めんどくさいからね。それに今日が終われば残りはソロの仕事だから何とかなる。何とかしろって上から言われてて。いやあ、めんどくさいね。」
中間管理職ってホントにいやだね。
そう続けているけれど、いやなのはこっちだ。
「桜子ちゃんはそうだなアルバイトと思ってくれればかまわない。一日1万円。一応十日アルバイトしてくればこっちは何とかなる。そのあと五日休みが入るからな。最後までやり遂げてくれたら二万円のボーナスを払う。どうだ?」
「やらせてもらいます。」
最後までやり遂げたら十二万。そのあと行われる同人誌即売会でいつもためていたお小遣いと兼ね合いを考えずに買える。
学生の身でそんな贅沢ができると思わなかった。
「ダンスは兄から教えてもらった部分もあるので少し教えてもらえれば何とかなるかもしれないです。」
こうして私の夏休みのアルバイトが始まった。