始まりの黄色い歓声②
「桜子ちゃん今すぐ〇〇大学付属病院にこれる?」
兄のマネージャーである隼人さんにタクシーにのってすぐ呼び出された
病院。
普段から両親も兄も健康な私にとってまったくなじみのない場所。
そこに至急できてほしいという呼び出しなんて受けたことなかったしましてや兄のマネージャーから。
嫌な予感がして冷や汗が止まらなくなった。
そしてその予感は正しいものだった
兄ライブ会場にはいるさい、何者かに突き飛ばされ車に引かれそうになった。
幸いにして車も兄も迅速に回避したため大事には至らなかったが突然無理に動いたため足のふくらはぎが肉離れしてしまった。
全治3週間最低でも10日は安静に
という医者の診断だという。
「今日は入院することになったから、御両親に連絡がとれなくて桜子ちゃんに連絡したんだけど」
「ええ、両親は今海外で仕事をしていてちょうどブラジルからマレーシアに移動してると思います。昨日の電話でそういってましたから。」
「そうか・・・」
隼人さんが注意深く私を見ていた。
観察していたといっても構わない形。
そして手に持っていたバックからウイッグを取り出した。
「ちょっとかぶってみない?」
ちょっと帽子かぶってみたいな感じで言われても、背中まであるストレートロングの髪でウイッグをかぶるというのもなかなか難しい。
「えっと・・・」
「神崎ーちょっと。」
いつの間に入り口から入ってきたのかわからないくらい静かに私の後ろに立っていた男性に声をかける。
神崎さんが動いたことでちょっとびっくりしたのは秘密だ。