難解魔法
折角ペプラが用意してくれた家なのだから、見て行くか……
俺は早まる気持ちを抑えてゆっくりと階段を登って行った。
しかしその気持ちは二階に着いた途端、綺麗さっぱり消え去った。
「おうっっ」
手をつけなかったとは言え、ここまでする必要はないだろう。
壁紙は全て剥がされ、部屋と部屋の間を分けていた壁は全て取り壊されているではないか。
「やりすぎだろ!!」
とっさに言葉が出たが、これは何かしらの業者に頼むしかない。
さあ電話するか……
って何処に電話すんだよ…………
しかもそもそも電話が無いし……
俺は取り敢えず荒れ果てた俺の部屋を後にし、薬局に置きっ放しになっている荷物を部屋に上げた。
荷物は意外と重く、途中階段にて何かがゴロゴロと落ちて行った。
荷物を全て運び込んだ後落ちている物を取りに行った。
落ちていた物はペプラの言う、魔法の書だった。
「気晴らしに本を読みながら散歩でもするか……」
落ちていた本を手に取り、俺は家という名の薬局を後にした。
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散歩で気晴らしという名目ながらもペプラに貰った本が気になってしょうがなかった。
その本にはまず注意書きとして、
「この本は生まれ持った特性の一つ、“ポーションアビリティ”をお持ちの方しか使用価値の無い本となっております。
特性の無い方は素直に能力が芽生えるのを待ち、この本を本屋に返しましょう。
また、ここに載ってある情報を他世界に漏洩する場合、処罰を用意しております。
最後になりますが、ここに載っている魔法は基本の基本です。出来たからといって調子に乗らず、
レベルアップを目指しましょう。」
この様な簡単な注意書きであったが、毒舌口調でもあった。
魔法の基本ということは始めての俺でも魔法が使えるのかな、と思い魔法のページを開く。
「回復魔法日常基本編1 フェクトを覚える」
「回復魔法は薬草に調合するなり、そのまま使うなりするのだが、まず一番最初に覚えなくてはならないのがこの
フェクトと言われる回復魔法です。
フェクトは心の中で“ザイックス・エラストート”と3回唱えながら集中するだけです。
大怪我の相手を今から回復することはこの呪文では無理です。
この呪文で適しているものは、喉の痛みや腫れです。
頑張りましょう!」
ふーん結構簡単そうかも。
誰か喉が痛い人…………あっ病院に行けばいいか。
でもちょっと入りにくいし、病院から出てきた人で実験しよう。
楽しみだ………………
「ありがとうございました」
おっ出てきた。ちょっと恥ずかしいけど……
「あの〜今病院から出てきましたよね?」
「そうですが、何か?」
「まさか喉の痛みとか……」
「あっあなた何で分かったんですか!?」
しめた!
「ちょっとそこに立っててもらえますか?」
そのお爺さんはそこで立っていてくれた。
ザイックス・エラストート……
ザイックス・エラストート……
ザイックス・エラストート……
よしっ
「????」
え? ダメなの?
「何か変わりましたか? 喉とか」
「はて、何の事だか。もう帰っていいかい?」
「ああ、どうぞお帰り下さい」
おい、待てよちゃんと呪文を唱えたよな……
集中もしてたし…………
しかも本によるとこれ基本の基本とか書いてたし……
しょうがない、いろんな人に片っ端から魔法をかけてみるか……