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ⅩⅠ.装備新調計画

 サウザンシスコ二日目の朝、まず手始めに出かける所と言えば、

「装備を買いに行こう!」

 ホテルでバイキング形式の朝食を取った後、わたし達は《黄金の爪》を売却して得た予算を持って装備を整えることにした。

 ちなみに、はぐれキウイ討伐報酬に関しては、みんなでワリカンしてフリーマネーとした。額も少なかったし、まあ、記念として。

 そこでわたしはお金の使い道として、母にプレゼントを贈ることにした。

 購入したのはホテルのお土産コーナーで売っていた《30万分の一クリスタル・ゲート・ブリッジ》の置物だ。送料もけっこう掛かるので、それぐらいしか選択肢がなかったのだ。

「あのお店みたいですね」

「話に聞いた通り、大きな建物だな」

 三階建てのレンガ造りの建物はホテルから徒歩で数分の場所にあった。豊富な品揃えとリーズナブルな価格で武具を購入できると聞いた《ツヴァイハンダー》というお店だ。クランの人たちもよく利用しているとのこと。ソースはレッドさん。

「とりあえず、自由行動だね」

 女性客を惹きつけるためなのか、一階は女性物の衣類や化粧品が並んでいた。ここって武具屋だよね?

 入り口付近にて四者四様四散する。わたしと戦士は上の階へ、僧侶ちゃんとマホツカはそのまま一階だ。

「剣は二階になるのか」

 わたしが購入するのはモチのロン武器――剣だ。骸骨騎士がドロップしたショーテルにかなーり愛着がわいてきたのだけど、やっぱ扱いづらいんだよね。いくら勇者の特殊能力によって武器の扱い方を体得できているとはいえ、もう一歩が先へ進めない。

 わたしみたいな剣初心者にはオーソドックスな直剣がオススメとの戦士からアドバイスを受けたので、まずは素直に習うことにした。

 階段を上って金属な匂いに満ちた二階へとたどり着く。槍や斧、鎌からボーガンまで様々なラインナップが、広いフロアにびっしりと飾られていた。シンヨークの《リネンキュラッサ》は防具屋だったから、こうして武器だらけのお店に訪れたのは初めてになるのか。

「直剣かぁ、楽しみだな♪」

 まるで新しい傘を買って、雨が降るのを楽しみに待つ子供のような気分になる。

 ここまでナイフ(折れた)、湾曲剣(絶賛活躍中)、そんで槍(砕けた)と入手してきて、やっと普通の剣を装備できる。念願の《銅の剣》を……いや、もうちょい贅沢をして戦士と同じく《鋼の剣》がいいかもな――、

「あれ? 剣のコーナーってどこだ?」

 なぜかどこを探しても剣が見当たらない。気が付けばフロアを一周してしまっていた。

 まさか取り扱っていないなんてことはないだろう。店員さんに場所を聞くしかないな。

「申し訳ありませんお客様。剣類は全て在庫を切らしていまして……」

 へ? 売り切れ!? な、何で?

 畑にできたミステリーサークルのように、ぽかんと何もないスペースで暇そうに佇んでいた店員さんに尋ねたみたところ、何とこの場所が剣コーナーであるという。まじで何にもないんですけど。

「あの、いったいどうして一本もないんですか……?」

「はい、それがですね……」

 店員さんの説明によると、例の謎の男に武器を奪われた人たちがこぞって剣を購入しにきたのが売り切れの原因だった。なるほど、九九九本手に入れたって豪語していたからね。話半分に聞いていたけど、本当にそんなにも奪ったのかよ。店でも開くつもりなのか?

 さらに追い討ちを掛けるように、港のストライキときたものだ。海路からの荷物が届かない状態なので、剣に限らず店全体的に欠品が多いらしい。

 ストライキがどこまでもわたしを苦しめる……。

 文句を言っていても天からは剣も槍も降ってこない。わたしはカタログだけ手に取ると、その場を後にした。

「勇者さん、何も購入しなかったんですか?」

 他店に行くか、まだショーテルで我慢するか、はたまた槍の道へと進もうか考えていると、槍コーナーにて僧侶ちゃんと合流した。えっ、僧侶ちゃんって槍に興味あるの? わたし的には杖とか御幣(ごへい)が似合いそうなんだけどな。

「僧侶ちゃんこそ、何も買わなくていいの?」

「はい。私は今の装備で十分ですから」

 だよね……。

 僧侶ちゃんのは、もはや最強装備と言っても過言ではないはずだ。

 さて、残りの二人はどうしているのだろうか。戦士もマホツカも買い物には時間が掛かりそうなタイプだからね。特に戦士は前科があることだし。

 まずはマホツカの様子から見に行くことにして、再び一階へと下りる。

 明らかに複合店舗(デパート)の一階状態となっているフロア1は、化粧品やジュエリーに(とど)まらず、健康食品やダイエット飲料の棚まであった。やっぱ武具屋じゃねーよ!

 こういう場所は平日でも客が訪れるんだよね。クランや旅とは無縁そうな女性客が混み合う中、二人でマホツカを探すことにした。

「あ、いた」

 相変わらずマホツカはすぐ見つけられるな。人ごみの中でも一際目立つとんがり帽子。ローブのコーナーにてマホツカを発見した。

 左右に目を移らせると様々な色と柄のローブがあるのが分かる。

 マホツカって、派手な事が好きなのに、装備に関しては一貫してシンプルであり古風だよね。もっとカラフルなのにしないのかな?

「マホツカ、何か買ったの?」

「ん? 見れば分かるでしょ、どうよ」

「え、何が?」

「何が、じゃないわよ。新調したローブはどうかって聞いてるのよ」

 と、言われましても、

「いつも着ている黒いローブじゃん」

 マホツカは普段と変わらず無地の黒いローブ姿……って、前にもこんなやり取りをした覚えがあるな。

「ほんと、違いの分からないオンナね……」

「む、そこまで言うのなら、ちょっと失敬」

 わたしはローブの手触りを確認するフリをして、マホツカの情報を見てみた。


 職業   魔法使い

 レベル  19

 武器   なし

 防具   ブラックローブ(防30) 古ぼけたとんがり帽子(防21)

 装飾品  よい香りの腕輪

 所持重量 734


 なるほど、名称が微妙に違うのね。所持重量が増えてる……。

 む? 気が付けば何か数値まで見えるようになっている。おそらく防御力を示すものであろう。とはいえ、基準が分からないから意味がない。

 そんじゃ、僧侶ちゃんも見てみようっと、


 職業  僧侶

 レベル 14

 武器  なし

 防具  蒼天の法衣(防94) 蒼天法帽(防32)

 装飾品 銀のロザリオ 誓いの指輪

 所持金 4,294,967,295 シンヨークセント


 見なきゃよかった…………。

「どうかしましたか勇者さん?」

「ううん、何でもないよ……」

 黄金の爪とかクランの報酬が馬鹿らしくなりそうだ…………忘れろ、今見たことは全て忘れるんだ!!

「参考までに、そのローブいくらしたの?」

「198ドルよ」

 やっすいな…………はっ! たっけ! 高いよ!!

 危ない危ない。危うく価値観の崖を踏み外しそうになってしまった。

「ただの黒いローブじゃないんだ」

「素材が違うのよ、素材が。並みの鎧よりも頑丈なのよ」

 ふーん、マホツカにもこだわりがあるのか。わたしは安ければ何だっていいからね。

 さてと、次は戦士を探す番か。やだな……。

 でも、放っておくと精神疲労で倒れる店員さんが続出してしまうかもしれない。

 わたし達は揃って三階へと上がった。

「わあ、防具ばっかりだ」

 レザー系の軽装から板金の重装備まで、様々な防具がズラリと並んでいた。兜も足具もあるけど、やっぱ鎧の存在感がでかいな。

「いないわね」

「入れ違いになったんでしょうか?」

 鎧コーナーに戦士の姿はなかった。代わりとして、疲れ果てた顔の店員さんを見つけることができた。よかった被害者は一人だけだった。

 店員さんに戦士の行き先を聞きたかったけど、今はそっとしておいてあげよう。しっかり養生してください。

「おーい、こっちだ」

 端然とした声が発せられた方を向くと戦士がいた。けれど鎧は装備していない。

「あれ、戦士も何も買わなかったの?」

「既製品は身体に合わないからな。特注で作ってもらうことにした」

 精霊王に破壊されてしまった鎧も確かそんなこと言っていたね。でもそれって時間が掛かるんじゃないのかな?

「今日の夜までには完成するとのことだ。明日朝一で取りに行く」

 どうやら今まで寸法を測っていたらしい。ひたすらと鎧談議を店員さんとしながら……。

「それと、これを貰ったぞ」

 戦士は手に持っていたペラ紙をわたしに渡してきた。


 勇者は 《福引き券》を戦士から渡された


 福引き券? まじで?

「このフロア内に抽選所が設けられているとのことだ」

 そう言えば階段の付近に紅白幕を垂らした特設コーナーみたいなのがあったっけ。

「でもさ、戦士はやらなくていいの?」

 そう言うと、戦士の目は何処か遠くへと向けられた。なぜか哀愁が感ぜられる。

「私の未熟な運では、残念賞が関の山だからな……」


 職業  戦士

 レベル 33

 武器  鋼の剣(攻33/+10) 青銅のナイフ(攻14)

 防具  鋼のガントレット(防20) 鋼のレガース(防16)

 装飾品 大力の腕輪

 運   6/WORST


 なるほど……分かってらっしゃる。

「それじゃ遠慮なく使わせてもらうよ」

 とはいえ、わたしもこの手のくじにはさほど運がないんだよね。せいぜいハズレなしビンゴくじでキャラモノの目覚まし時計を当てたことがあるぐらいだ。質屋に売ってそこそこなお小遣いにはなったけど。

 四人揃った状態で、福引きコーナーへと移動する。どうやら金属系の装備を購入すれば券を貰うことができるらしい。

「はい、それでは一回ですね」

 福引き券を店員さんへと渡す。チャンスは一回だけ。わたしは台の上にあるガラポンの取っ手を握った。

 一等賞は《ドラゴンメイル》という竜の鱗で作られたレアな鎧、そして残念賞は《ポケットティッシュ》だった。落差ありすぎだろ。

「頼むぞ勇者」

「がんばってください勇者さん」

「しょーもないモン引き当てるんじゃないわよ」

 みんなの声援(?)を受けて、わたしは一層の精神統一をした。

「とりゃあああああぁぁぁ!!」

 全神経を右手に集中させてガラポンを回す。こい、カモーン!

 ジャラジャラと中に入っている玉がはじける。そしてカランコロンと受け皿に一つだけ玉が出てきた。色は――――白だった。

「はい、五等賞になりまーす」

 五等か……。残念賞でなくてよかったけど、おいしくもないな。

「こちらが賞品となります」


 勇者は 《チタンバングル》を手に入れた


「腕輪みたいだね」

「少しは足しになるんじゃないの」

 せっかくなので装備してみた。おそらく装飾品だろう。五等の賞品だから、大きな効果は期待できないかな。

 わたしは腕輪を()めて、自分のステータスを確認する。


 職業  勇者

 レベル 17

 武器  ショーテル(攻70/-57)

 防具  旅立つ人の服(防2) チタンバングル(防14)

 装飾品 なし


 へぇー、装飾品じゃなくって防具なんだ……って、腕輪なのに服より防御力が高いのよ! 旅立つ人の服ぇ……。

 そんなこんなな買い物だった。

 今回は比較的平和だったね。

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