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とある王国のとある騎士団  作者: 柘榴石
瑠璃色の弾丸
8/22

 ルリはマスケット銃を構える。そして盗賊に向け、一発撃った。相手は防弾ベストを着ているから、この一撃で倒せるとは思えない。まあ仮にそうなればラッキーだが、主な目的は牽制だ。

 煙が立ち上るのを確認すると、すぐさま走り出す。この狭い遺跡の中では、彼女の武器は本領を発揮できないのだ。

 ルリが遺跡の外へ走り出すのを見たミル達も後を追う。そろそろ援護に入らなければ。いくらなんでも、あの数はキツいだろう。

 ミルはリボルバーを右手でもてあそび、そして背後に向けて撃つ。乾いた音の後、どさりと誰かが倒れた。見てもいないのに、防弾ベスト以外のところを撃ち抜いたらしい。

「処理は後。分かってるね?」

「勿論!」

 ノアが急に立ち止まり、180度向きを変える。そして、大きく跳躍すると一人の上に踵落としを決め、更に気絶したその男を土台にしてもう一人に飛び蹴りを喰らわせた。

 それを何回か続けると、敵の数はどんどん減り、遺跡の外に出たときには1vs1で戦える数だった。とはいえ、アズサとリアは自ら戦うタイプではないから、誰かが少し負担をしなければならない。

 ルリはマスケット銃を握りしめ、振り回す。完全に鈍器扱いされたそれは、盗賊の鳩尾に食い込み、意識を奪った。

「もうさあ……ルリはハンマーとか使ってればいいんじゃないかな」

「失礼ですわ、リレイズさん。私の武器はあくまでマスケットですもの。鈍器扱いもできる、ということで」

 にこりと微笑むルリ。リレイズは苦笑――するわけでもなく、ただ無表情でルリを見ていたかと思うと、不意にレイピアをルリに向かって突き刺した。

「……え?」

 彼女の背後で、どさりと誰かが倒れた。

「油断しないこと。いいね」

 リレイズはそれだけ告げると、敵に向かって走り出す。ルリは笑い、叫んだ。


「勿論ですわ!」 



 いつしかそこには、気を失った盗賊達の山が出来ていた。いったい何人いたのだろうかとリアは数えるが、やがて肩をすくめて諦めた。いったいどれだけいたのだろう。

「アズサの嘘つきー。40人はいたよ?」

「仕方ないじゃん、後から後から出てくるんだもん!」

 口を尖らせすねるリアに、アズサは反論する。それをノアがたしなめている間に、ルリは何やら話をしているリレイズとミルのところへ向かった。


「……だって、コバルタは君達が潰したんだろ。なのにこれは……」

「この文字はソルティーナじゃないね。モニカだ」

「モニカ? ……何やってんのよ、あいつら……」

 リレイズはため息をつく。ミルは手にしている紙を破き、海に捨てた。ヌーヴァ遺跡は海に近いのである。もっとも、そこは崖なのだが。

 ひらひらと紙が舞い、波間にもまれて消えていく。

「もう中身は覚えたの?」

「うん。たいした文章でもなかったし……って、ルリ?」

 ミルが少し離れた場所で様子をうかがっていたルリに気づき、声をかける。するとルリはぱっと顔を明るくして、

「気づいてくださったんですか!? 嬉しいですわ!!」

「あー……うん、落ち着け」

「ミルお姉様! 私、フィオーレ騎士団としてやっていけますか!?」

 その“ミルお姉様”の忠告も耳に入っていない様子で、ルリは興奮気味に叫んだ。ミルは記憶を辿ると、あることに気づいた。

「……あんた、自分で『フィオーレ騎士団』って名乗ってなかった?」

「え? ……あっ、それは……」

 盗賊と対峙したとき。

 身分を明かすとき、確かにルリはこう言っている。


 ――フィオーレ騎士団団員、ルリですわ。


「あの、そのときは……!」

「わかってるってば。第一、断る理由なんてないし」

「で、ですけれども! ……え?」

 きょとんとするルリ。ミルもリレイズも何も言わない。いや、リレイズはくすくすと笑っているが。

「あの、もう一度お伺いしても……」

 おずおずとルリがそう尋ねると、ミルは「仕方ないなー」と呟いて頭を掻いた。


「ようこそ、フィオーレ騎士団へ」


 差し伸べられた手。ルリは嬉々としてそれに飛びつき、そしてミルにまで飛びついた。

「ありがとうございますわー!! ミルお姉様ってば、やっぱり素敵ですわ!」

「わーっ!! 引っ付いてくるのはノアで十分だから!」

「え、呼んだー?」

 背後からノアが飛びついてくる。しかし身長差の為かノアの手はちょうどミルの首の位置にあたり、それが勢いづいていたものだから、ミルは「ぐぇっ」と奇声を発するハメになった。

「ちょ、首、首しまっ……」

「ミル高いよー、しゃがんでくれない?」

「そ、そのま、前に、く……」

「ノアさん! 離してあげてくださいよ、ミルお姉様が苦しんでますわ!」

 ルリがキッとノアをにらみつける。しかしミルにとってはルリも原因のひとつのようで、

「いや、ルリが離してくれたらしゃがめ……ゲホッゲホッ」

「ルリ、離さなくていいよ」

 そこにリレイズのS心が加わり、ミルはしばらく地獄を味わうこととなった。


 その後、アズサにミルが八つ当たりしていたのは言うまでもない。

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