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「いつ見ても恐ろしいね、魔術っていうのは」

 残った兵は数少ない。リオンは身長の4分の3はあろうかという程の大剣をいとも容易く操りながら、その残兵を倒していった。

 彼女はコクランに匹敵する程の腕力、そして握力を誇る。つまりパワーが凄まじく、また大剣もリオンの為に造られた逸品である。その二つが合わさると、まさに鬼に金棒――鬼神のごとき強さをリオンは発揮する。

 そんな彼女の前では、一度灼熱の太陽に茹でられた兵士達を倒すことなど赤子の手を捻るようなものだった。

「リオン、下がれ!」

「了解っ」

 ミルの指示が飛び、リオンは撤退する。直後、彼女の背後で爆発が起きた。

 小さな規模のものではあるが、兵士を牽制するには充分だった。その隙に、ノアがトドメを刺しにかかる。

 両手で数えられる程になった兵士を、一人ずつ大地に伏せていく。最後の兵に強烈な蹴りが決まると、モニカ帝国軍は完全に沈黙した。



「ば、馬鹿な……!」

 男の口から、そんな言葉が漏れた。

 フィオーレ城の天文台頂上。佇んでいるのは、一人の男と、コクランとアキハ。

 侵入した男を追跡し、二人はここまで追い詰めたのである。

「観念しなよ。君がここで負けを認めるならあたしは君を傷つけない。無傷で国に帰してあげる」

 そういうアキハの手に槍はない。彼女が交渉を持ちかけるとき、武器はいつも持たないのである。

 勿論コクランは持っているが、今は足元に置かれている。

「誰が貴様なんぞに命を乞うものか。今に援軍が来るぞ……モニカ帝国が誇る本隊がな」

「嘘でしょ、それ」

「っ……!?」

 男は不意にアキハが発した言葉にたじろぐ。それを確認すると、アキハはにやりと笑った。

 それを見、コクランは確信する。――事は穏便に収まりそうにない。


「モニカといえば、ソルティーナと並ぶ軍事国家。わざわざフィオーレという軍事面に長けていない小国に何万もの戦力を裂く必要もない。それに幾ら雑魚兵士を集めたとしても、たかが10人程度に負けるような国じゃないでしょ。……前までは、ね」


 アキハが目で合図を送る。

 コクランはすぐさま足元の鎌を掴み、右足を踏み出して鎌を一閃した。

 銀色の弧を描いたそれは、男の喉を掻く直前でピタリと止まる。もしどちらかが動けば、それは確実に頸動脈を切りつける。

「あ……あ、ああ……」

 脅える男に、アキハは追い討ちをかける。


「モニカは、もう崩壊してるんじゃないの?」


 男は項垂れる。

「……正解だ」

「教えてくれない? どうしてモニカ程の大国が……」

 アキハの問いに、男は不敵な笑みを浮かべる。


「ソルティーナは、今に全てを手に入れるぞ」


 今までの動作が嘘だったのかと思わせる程、彼は俊敏だった。

 懐から取り出した拳銃をコクランに向け、一発撃ち込む。コクランはそれを間一髪防ぐが、牽制していた鎌を男から離してしまった。

「ここまできて……まだ反抗するのか!」

 コクランは叫んだ。しかし男は不敵な笑みを浮かべたまま、何も言わない。

 銃口はこちらに向いている。いくら戦闘慣れしているとはいえ、この狭い塔の頂上でそう何度も銃弾を避けられるわけではない。

「……殺るしか、ないか」

 最終手段。モニカが崩壊していると判明した以上、人質としても意味は成さない。

 コクランは、アキハに手をかけさせるつもりはなかった。それは、“あの日”の“彼”との約束だった。


「……ふはっ……はははははははははははははは!」


 天文台から響く高笑い。その声に、二人は不気味さすら覚えた。

 男の手が動く。

「何を――!」


「散るときは潔く散れよ、(フィオーレ)の騎士団共」


 乾いた銃声が、戦場に響いた。

 頭から血を流しながら、男の屍が天文台から落ちていく。屍は、フィオーレ城を取り巻く深い川の流れに揉まれて消えていった。


 モニカ帝国で最後に軍のトップに君臨した男の最期は、追い詰められた末の自害という、あっさりしたものだった。

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