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 4

「人影だ! 誰かが近づいてくるぞ!」

 組合の誰かの声で、移民は騒然となった。こんな砂漠を、ほかに人間がいるとすれば、砂賊か或いは特殊な事情がある者に違いない。

「アレス……アレス!」

 人々が浮き足立ちかけているのに、指示を出すべきアレスが、茫然と地平線に見える影を見つめている。馬を寄せてロニスは怒鳴った。

「え……あ、ああ」

 不明瞭なアレスの意思に舌打ちしてロニスは部下に指示を下した。護衛の男たちが移民の列の盾になるよう馬を並べ、近づいてくる人影を迎えた。

 カーテーギュウも馬列の端に立って様子を窺った。

 人影は近づくに連れ、十数人の集団であるのが見て取れ、荷造りから隊商であるように思えた。だが、あくまでそう見えるだけである。

―――― こんなところを、隊商が?

 カーテーギュウが脳裏に浮かべた疑問は、荒野を何者よりも先んじて調べてきた組合の者たちにも、無論同じだった。

 しかし、男たちの警戒感は、軽薄に裏切られた。

「これはこれは、こんなところでこれほどの数のお客さまに巡りあえるとは!」

 短い髭をもしゃもしゃと生やした男が、愛嬌たっぷりにロニスに挨拶した。

「この辺を進んでいるということは、あんた方もオアシスに寄るのではないかな?」

 その男の台詞に、組合の護衛たちは左右の者と顔を見合わせた。

「いや、砂漠は身動きの取れる時間が少ない。道行き語り合うと致しましょう!」

 男の一声で、隊商はさっさと列をまとめて動き出した。

「ロニス、オアシスの方向に間違いない」

 部下の耳打ちにロニスは頷いた。オアシスの位置を知るということは、荒野を渡って商売をするのに必須の条件だ。ただ、それが商人であるという根拠にはならないこともロニスにはわかっている。

「やむをえん、行く先が同じでは。厄介な同行者がまた増えた」

 ロニスはカーテーギュウに一瞥(いちべつ)くれてから、出発を合図した。

 いいのだろうか。一方のカーテーギュウは、成り行きを素直に飲み込むのに抵抗を感じていた。

「なあカーテーギュウ、置いていかれちゃうぜ?」

 いつのまにか隣にティオがいる。カーテーギュウは我に返った。

 そうだ、往かねばならない。人々がゆき、そしてアリエルが往く。

 ティオは頭に乗せられた手をこそばゆく思いながら、カーテーギュウの背を追った。


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