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第31話 ― 送られた者たち

オーレリアン王国の謁見の間の壮麗さの裏で、アルドリック王は目の前の二人の若者を見つめていた。

その胸中には、希望と罪悪感が複雑に混ざり合っていた。

『白銀の騎士』サーシャは拳を強く握りしめ、若き魔道士ミーシャは重くなった魔道ローブの裾を何度も弄っていた。

「貴公らは征服者として行くのではない」

アルドリック王の声が、深い疲労を孕んで響き渡った。

「貴公らは使節だ」

「貴公らが探している存在……あれは単なる怪物ではない」

「人間の強欲によって、その世界を無残に引き裂かれた一人の母親なのだ」

「彼女と話しなさい。すべての人間が家族の敵ではないことを示すのだ」

サーシャは、使い捨ての防御アーティファクトである銀の花のブローチを、震える手で受け取った。

(『歩く災厄』と話をする、ですって?)と、彼女は心の中で自問した。

(王は彼女を母親と呼んだが、ヴァルトラの報告書では彼女を死神と呼んでいる)

(私は一体、どちらを信じればいいの?)

《呪われた森》への旅路は、永遠とも思える三日間を要した。

馬の足取りが文明から遠ざかるにつれ、王宮で集めた勇気は霧散し、息詰まるような静寂へと変わっていった。

三日目、彼女たちは永遠の霧に包まれた森の境界へと辿り着いた。

「サーシャ……道に迷っていないって、言い切れる?」

ミーシャが、霧に飲み込まれそうな細い声で囁いた。

彼女は手元の古い地図を、絶望的な眼差しで見つめていた。

「この木々……見ていない間に、動いているような気がするの」

「私の後ろに下がっていなさい、ミーシャ」

サーシャは短剣を抜いた。

空気の中に奇妙な圧力を感じ、呼吸の一つ一つが重く、苦しくなっていく。

過ちは、一瞬のうちに起きた。

警告もなく、赤い目を光らせた三体のワイバーンが、鬱蒼とした茂みから飛び出してきた。

怪物たちは咆哮を上げず、ただ「シーッ」と鋭い音を立てた。

それは、容易な獲物を見つけたという合図だった。

「ミーシャ、魔法を! 今すぐ!」サーシャが叫んだ。

ミーシャは火炎の呪文を唱えようとしたが、指先の震えがマナの奔流を狂わせた。

放たれた小さな火球は、空中で弱々しく弾けて消えた。

一体目のワイバーンが襲いかかり、その爪がサーシャの肩の鎧を引き裂き、焼けるような痛みが走った。

サーシャは地面に叩きつけられ、温かい鮮血が冷たい森の土を濡らし始めた。

(くそっ、彼女に会う前に終わりだなんて……)

二体目のワイバーンが、恐怖に座り込んだミーシャへ飛びかかろうとするのを見て、サーシャは自分を呪った。

立ち上がろうとしたが、体は鉛のように重い。

彼女はただ目を閉じ、悲劇的な最期を待つことしかできなかった。

――ドクン。

世界が、唐突に静まり返った。

それは穏やかな静寂ではなく、強制的にねじ伏せられた静寂だった。

サーシャは、耳元で自分の心臓が激しく打ち鳴らされるのを感じた。

ドクッ、ドクッ、と、まるで心臓が胸の中から逃げ出そうとしているかのようだった。

視界が霞むのは、傷のせいではなく、突如として数倍に跳ね上がった重力圧のせいだった。

膝が激しく震えて地面を叩き、周囲の酸素が結晶化して肺を切り裂くかのように感じられた。

隣にいたミーシャは口を半開きにし、何かを唱えようとしたが、マナの流れが見えない巨人の手に塞がれたかのように止まっていた。

その場所にある魔法という概念そのものが、屈服を強いられていた。

先ほどまで獰猛だった三体のワイバーンは、外傷もないまま地面に伏していた。

彼らは激しく震え、悲痛なほど低い鳴き声を上げた後、あまりの精神的圧力に耐えきれず失神した。

そして、霧の向こうから、優雅な亡霊のように一人の女性が静かに姿を現した。

長い紫色の髪が森の薄暗がりの中で輝き、風もないのに紫の浴衣が柔らかくたなびいている。

その紫の瞳は淡く光を放ち、見る者を矮小化させるほどの深淵を湛えていた。

その顔に怒りはなく、ただ、致命的なまでの静寂だけがあった。

サーシャは顔を上げようとしたが、首が凝り固まったように動かなかった。

(このオーラ……人間のものじゃない)

サーシャは、自分が崩れ落ちる空を見上げている一匹の蟻になったような気分だった。

女性は、血に染まったサーシャの肩に視線を向けた。

感情の欠片もない、ただ一瞬の視線。

しかしその瞬間、サーシャは傷口に冷たい感覚が走るのを感じた。

鎧を濡らしていた激しい出血が、突如として止まった。

あたかも、体内の細胞がより高次の権威によって「直ちに閉じよ」と命じられたかのようだった。

完全な治癒ではないが、失血死しないことを保証するには十分な処置だった。

(彼女が……私の傷を止めたの?)

サーシャは呆然とした。

痛みよりも強い困惑が、彼女を襲った。

「ここは、人間の来る場所ではないわ」

女性が口を開いた。

その声は淡々としており、威嚇の響きすらなかったが、血の流れさえ止める絶対的な権威が宿っていた。

ミーシャは半歩後ずさり、杖を落としそうになった。

「あ……あなたは……誰……?」

その女性――フロスティーヌは、ただ二人を一瞥した。

サーシャは、自分の存在すべてが最深部までスキャンされているような感覚に陥った。

それ以上の言葉はなく、フロスティーヌは背を向けた。

彼女が歩き出すと、浴衣の裾がカサカサと乾いた落ち葉を撫でた。

「残りの魔物たちは近づかないわ。今のうちに帰りなさい」

サーシャは、遠ざかっていくその後ろ姿を、説明のつかない感情で見つめていた。

凄まじい恐怖と同時に、根源的な本能から湧き上がる敬意があった。

おそらく……あのような存在にとって、自分たちは憎むにすら値しない存在なのだ。

憎しみとは対等な相手に抱く感情であり、自分たちは……ただ風に流される塵に過ぎないのだから。

「彼女……本当に、私たちを逃がしてくれたの?」

ミーシャが、恐怖の涙を頬に伝わせながら囁いた。

サーシャは、今は凍りついたように感じる自分の肩に触れた。

「彼女は私たちを敵だと思っていないのよ、ミーシャ」

脅威ターゲットとしてさえ、見ていないの」

その夜、森の縁に張った間に合わせのテントの中で、サーシャは暗闇をじっと見つめ続けていた。

自分たちの任務が失敗したことは分かっていた。

だがそれ以上に、彼女は何よりも恐ろしい事実に気づいてしまった。

オーレリアン王国は、人間の存在など考慮に値するとすら思っていない強大な力と、交渉しようとしているのだ。


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