第30話 ― 芽生え始めたもの
フロスティーヌはその朝、胸の中にこれまで感じたことのないような、不思議な温もりを感じながら目を覚ました。
彼女はベッドの端に腰を下ろした。
白いしなやかな指先で、鏡の前で長い紫の髪を梳いていく。
彼女は右目を覆う前髪を脇に避け、鏡に映る自分をじっと見つめた。
この肉体――狐の耳を持ち、浴衣の下で女性らしい曲線を描く今の姿。
それは今や非常に馴染み深く、それでいて常に神秘的な輝きを秘めている。
(私はもう、今の自分に完全に慣れてしまったのね)
彼女は心の中で呟いた。
かつての「アキラ」が見れば、鏡の中のフロスティーヌを見て気絶したかもしれない。
だが、今朝感じている温もりは肉体的なものではなく、もっと深い場所にある何かだった。
玉座の間では、ルファスがすでに起きていた。
古代龍である彼女は、フロスティーヌの玉座に座り、フロスティーヌのぬいぐるみを抱きしめていた。
その瞳は、まだ眠たげに霞んでいる。
彼女は一杯の紅茶を差し出した。
そこからは、柔らかな湯気が立ち上っている。
フロスティーヌは小さく微笑んだ。
少し濃すぎるその紅茶を啜ると、温かさが心の奥底まで染み渡っていく。
(最高位の龍が、私のために紅茶を淹れてくれるなんて)
フロスティーヌはおかしくなって心の中で笑った。
やがて、ルファスはフロスティーヌの手を取り、指を強く絡ませた。
「あの森でアンタからチョコレートをもらった時から、アンタが特別だって分かってたわ」
ルファスが黄金の瞳でじっと見つめながら呟いた。
「アンタは私を伝説としてではなく、一人の存在として見てくれたわね、フロスティーヌ」
「アンタと一緒にいると……自分が満たされていくのを感じるの」
その心地よい静寂は、夜が更け、アリスが部屋で眠りにつくまで続いた。
小さくなった焚き火の光が、二人を親密な空気で包み込む。
いつもは冷淡で気だるげなルファスが、今は落ち着かない様子だった。
微かな火影の下で、彼女の顔は真っ赤に染まっている。
「フロスティーヌ……一つ、試してみたいことがあるの」
「一種の……実験、かしら?」
彼女は躊躇いがちに囁いた。
返事を待つことなく、ルファスはゆっくりと顔を近づけた。
フロスティーヌは、バニラの香りがする温かな吐息を感じた。
そしてついに、二人の唇が重なった。
その口づけは、初めて帰るべき場所を見つけた二つの魂のように、優しく、純粋だった。
フロスティーヌはそれに応えた。
彼女の手がルファスの敏感な角の付け根に触れる。
伝説の龍は、彼女の腕の中で微かに身を震わせた。
二人が空気を求めて唇を離したとき、互いの顔は林檎のように赤くなっていた。
ルファスの目から、一粒の透き通った涙がこぼれ落ちた。
それは滅多に見ることのできない、希少な「龍の涙」だった。
悲しいからではない。
数千年にわたる孤独の重荷が、ようやく下ろされたからだ。
フロスティーヌは何も言わず、彼女を強く抱きしめた。
伝説の龍が、自分の肩に安らぎを求めて寄りかかるのを許した。
だが、そのロマンチックな平穏は、夜明けとともに唐突に破られた。
アリスがいつもの元気よさで、玉座の間へ突撃してきたのだ。
そして、暖炉の前で抱き合って眠るフロスティーヌとルファスの姿を見て、その場で凍りついた。
「お姉様! 二人、付き合ってるの!?」
アリスが歓喜の声を上げて叫んだ。
フロスティーヌは跳ね起きた。
その顔はトマトのように真っ赤だった。
ルファスはパニックになりながら、乱れた髪を整えようと必死だった。
朝食の時間は、アリスによる愉快な尋問大会へと変わった。
彼女は、ルファスが正式に「義理のお姉ちゃん」になったのかどうかを問い詰め続けた。
扉の陰から覗いていたリルは、結末を予感していたかのように、ただ尻尾を振っていた。
その夜、人工の星空を眺めながら、縁側に座っていた。
ルファスは再び、フロスティーヌの肩に頭を預けた。
「愛しているわ、フロスティーヌ」
彼女は静かに囁いた。
フロスティーヌは愛おしそうに、龍の額にキスをした。
(昔の私は、狭いアパートにいた孤独な男だったのに)
フロスティーヌはダンジョンの空を見上げながら思った。
(今、私には世界で一番奇妙で、一番愛している家族がいる)
外の世界では、《永遠の森》は相変わらず静まり返り、危険に満ちているかもしれない。
だが、この場所では、愛が美しく花開いていた。




