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第2話 不滅なる者との出会い

はじめまして、Ascalonfireです。

この作品を見つけてくださってありがとうございます。

この物語は、事故で命を落とした主人公が異世界で目覚め、

**「エクリプス・オリジン」**と呼ばれる存在として生きていく物語です。

本当はただ静かな生活を送りたいだけなのに、

なぜか次々とトラブルに巻き込まれてしまいます。

まだ始まったばかりの物語ですが、

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

もしよろしければ、フォローや★評価をいただけると

執筆の大きな励みになります。

どうぞよろしくお願いします。


山道を下る足取りは軽く、それでいて警戒は解かなかった。肩の上では、ピップが相変わらず体の一部であるかのようにぴたりと寄り添っている。

眼下に広がる《永遠の森》は、かつての記憶にあるどんな森とも違っていた。ここは単なる樹木の集まりではない。森全体がひとつの巨大な生命体として呼吸しているようだ。古木からは微かな魔力が放たれ、巨木の合間ではマナの霧がゆったりと渦を巻き、風に吹かれては消えていく。

麓を流れる小川のほとりで、私は足を止めた。水は驚くほど澄み渡り、陽光を受けて淡い紫色の輝きを映している。だが、その静寂を破るように、ピップが突然激しく震え始めた。

森から音が消えた。鳥のさえずりも、虫の羽音も、風のざわめきさえも、一瞬にして途絶した。

――何かがいる。

敵意はない。だが、周囲の古木よりも遥かに古く、強大な「存在」の気配だった。

私はゆっくりと顔を上げた。数十メートル上の大樹の枝に、一人の女性がこの世のものとは思えない優雅さで座っていた。雪のように白く輝く長い髪が山風に揺れ、腰の下まで流れている。

彼女が纏っているのは、月光を織り上げたような白銀のロングドレス。耳元では青い宝石のイヤリングが陽光を反射し、背後では白銀の竜の尾が、枝にゆったりと巻き付いていた。

琥珀色に近い、深く静かな黄金の瞳。その眼差しが、私を観察するように射抜く。

私は即座に、解析能力を起動した。


> [ 存在解析 ]


名前: ルファス・ドラグニア


種族: 古代白竜エンシェント・ホワイトドラゴン


クラス: 氷の支配者フロスト・ソヴリン


レベル: [ 測定不能 ]


称号: 伝説の白竜





予想通り、この存在のレベルはシステムの計測範囲を超えている。

ルファスはわずかに微笑むと、枝から飛び降りた。墜落ではない。まるで雪のひとひらが舞い落ちるように、優雅な着地。白いハイヒールの踵が、音もなく私の数メートル前に降り立った。

ピップは恐怖で震え続けていたが、私は動かなかった。ただ真っ直ぐに、彼女の瞳を見つめ返す。

「ルファスは気になった……」

彼女の声は冬の風のように澄み、柔らかく響いた。「ルファスの前で、これほど平然と立っていられる存在とは、一体何なのかと」

「私も気になったよ」私は淡々と答えた。「木の枝に鳥のように止まるドラゴンがいるなんてね」

ルファスの口元がわずかに吊り上がった。彼女が一歩歩み寄るたび、透き通った冷気が私の肌をなでる。それは刺すような痛みではなく、どこか心地よい冬の空気のようだった。

「ルファス・ドラグニア」黄金の瞳が、私の目を覗き込む。「……貴女は?」

「フロスティーヌ」一瞬の間を置いて、私は今の自分の名を告げた。「エクリプス・オリジンだ」

ルファスは少し首を傾げ、古い記憶を辿るような仕草を見せた。「フロスティーヌ……エクリプス・オリジン。その名を聞くのは、ずいぶん久しぶりのこと」

彼女は断りもなく手を伸ばし、私の頬に触れた。指先は冷たいが、その動きは驚くほど優しい。「温かい……」彼女は小さく呟いた。「貴女のオーラは温かい。けれど、その奥底には星のない夜空のような、果てしない空虚を感じる」

私は一歩も退かなかった。その不敵さが気に入ったのか、彼女の笑みはさらに深くなる。

「普通の生き物なら震え上がる。けれど、貴女は違う」

「……震えるべきだったかな?」

「さあね」ルファスはくすっと笑った。その笑い声は、驚くほど人間味に溢れていた。「逃げ出しもせず、襲いかかりもしない者と話すのは、いつぶりかしら」

彼女は私の背後にある洞窟の方へと視線を向けた。「ルファス、ここに住んでもいい?」

私は目を瞬かせた。「住む?」

「ええ」ルファスの瞳が少し細まる。「あまりに長く、虚無に近い寒さの中にいすぎたわ。でも貴女のオーラは……少し違う気がする」

ピップが抗議するように短く鳴いたが、ルファスはそのスライムに優しい微笑みを向けた。「勇敢な子。主を想う、忠実なスライムね」

私は少し考えた。伝説の白竜。その瞳の奥には、私と同じ「孤独」が宿っているように見えたからだ。「いいよ、好きにすれば。ただし、私の場所は質素だ。贅沢は期待しないで」

ルファスの表情から険が取れ、ふわりと柔らかくなった。「……それで十分」

彼女は躊躇いなく私の腕を取った。冷たくも軽いその感触。「ルファスはただ……空っぽじゃない場所にいたいだけ」

その夜。ダンジョンの玉座の間は、もう静かではなかった。

ルファスは石の床に腰を下ろし、白銀のドレスを月光のように広げている。ピップは彼女の前でぴょこぴょこと跳ね、既にその冷気に慣れた様子だった。

「エクリプス・オリジンが、何も壊さずに静寂を選んでいるなんて思わなかった」ルファスがぽつりと呟いた。

「破壊には興味がないんだ」私は天井を仰ぎながら答える。

「そう」彼女は微笑んだ。「ルファスも、破壊はもう十分見てきたわ」

彼女は立ち上がると、カツカツとヒールの音を響かせて私の隣まで歩いてきた。そして玉座の横に背を預け、流れるような白い髪を床に広げる。

「ありがとう」

静かな声だった。

外では、星のない夜が広がっている。けれどこの部屋では、ルファスの冷気と、私の温かなオーラが静かに混ざり合っていた。

この世界で目覚めて初めて。

私は――もう、一人ではなかった。

ご来訪ありがとうございます。

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