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第1話 ― 新世界での初夜

はじめまして、Ascalonfireです。

この作品を見つけてくださってありがとうございます。

この物語は、事故で命を落とした主人公が異世界で目覚め、

**「エクリプス・オリジン」**と呼ばれる存在として生きていく物語です。

本当はただ静かな生活を送りたいだけなのに、

なぜか次々とトラブルに巻き込まれてしまいます。

まだ始まったばかりの物語ですが、

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

もしよろしければ、フォローや★評価をいただけると

執筆の大きな励みになります。

どうぞよろしくお願いします。

— Ascalonfire


意識はゆっくりと戻ってきた。静かな洞窟の中に水が染み込んでいくような、そんな感覚。

目が開く。正確には、まず片方の目だけが開いた。右目がこれまでとは違う。重く、熱く、まるで何かが中で脈動しているかのようだ。

フロスティーヌはゆっくりと瞬きをした。視界を覆っていた霧が晴れていき、目の前に新しい世界が形作られる。高い岩の天井、見慣れない異質な彫刻、そして壁に埋め込まれた魔石の淡い光。フロスティーヌは冷たいはずの石の床に横たわっていたが、その身に寒さを感じることは微塵もなかった。

ゆっくりと身を起こし、ふと動きを止める。

手が勝手に上がり、自分の体に起きた変化を確認しようとする。それは記憶にある手ではなかった。より細く、しなやかで、薄暗い光の下で淡い紫色を帯びた白い肌。拳を握りしめると、すべての関節が異質なほど完璧に動くのを感じた。

事故の記憶、クラクションの音、そして激しい衝撃が脳裏をよぎり、すぐに消えていった。死はすでに過去のものとなり、説明も、神も、使命を告げる天使もいないまま、新しい人生が始まった。あるのは虚無と意識、そしてこの石の部屋だけだ。

フロスティーヌは立ち上がった。体は軽く、まるでずっと前からこの体だったかのようにバランスが取れている。背中に違和感があった。振り返ると、漆黒の翼が影の外套のように折り畳まれていた。動かそうと念じると、翼は従順に、そして自然に羽ばたいた。

部屋の隅、岩のくぼみに小さな水たまりがあった。フロスティーヌは歩み寄り、覗き込む。水面から見知らぬ顔がこちらを見返していた。肩まで流れる長い紫の髪は、沈みゆく夕焼け空のような深い色。輝く紫の瞳が視線を返し、特に右目は地上に落ちた星のように強く光っている。頭からは二本の黒い角が伸び、優雅な曲線を描いていた。

(……俺は、目を閉じた。)

新しい体の中を流れる「マナ」の奔流を感じる。何かが違う。完全には噛み合っていない。システムはほぼ完璧に作動しているが、わずかなアノマリー(異常)が残っている。

この生物学的な構造は、あまりにも「完成」されていた。

この体は女だ。完全に、固定されている。変えることはできない。

だが、この世界の転生システムは、以前の俺の痕跡を完全には消し去れなかったらしい。

俺は試しに、あることをしてみた。

わずかなマナを操り、本来見えるはずのない「一部」を消失させる。隠す。まるで最初から存在しなかったかのように。

だが、それは本当に消えたわけではない。

内側へと引き戻され、俺自身の意志によって封印されただけだ。マナの制御を少し緩めれば、いつでもそれを取り戻せる。

自分自身に対する絶対的なコントロール。

私は再び目を開いた。

パニックはない。

嫌悪感もない。

葛藤さえない。

ただ、理解があった。

「俺は男だ」

私は静かにつぶやいた。

「でも、この体は女……そして、私はそれを受け入れる」

それは愚痴ではない。

一つの決断だった。

その瞬間、目の前に半透明のスクリーンが現れた。

> [ 魂の同期率:98% ]

> [ 部分的なアノマリーを検出 ]

> [ 安定化に成功 ]

> [ 識別名:フロスティーヌ ]

> [ 登録称号:エクリプス・オリジン ]

>

エクリプス・オリジン。

その名は重く響いた。

水面の影は答えなかったが、輝く瞳に拒絶の色はなかった。フロスティーヌは石の床に結跏趺坐で座る。許可なく新しい知識が流れ込み、この場所についての情報が頭を満たしていく。石の玉座の後ろには、ボールほどの大きさの球体――「コア」があった。

このダンジョンはただの洞窟ではない。膨大なマナから生まれた生命体であり、自らを守る守護者を求めていた。その守護者こそがフロスティーヌ。魔王、あるいはそれ以上に古き存在、「エクリプス・オリジン」。この世界の歴史に刻まれた、恐るべき「ラスボス(最終的な悪役)」だ。

フロスティーヌの中に、エネルギーが拍動する。《深淵の根源たるオーラ(アビス・オリジン・オーラ)》。敵を窒息させるほど圧迫することもできれば、守るべき者を冬の毛布のように温めることもできる力だ。フロスティーヌは目を閉じ、オーラの圧を下げて平穏をイメージした。

壁の岩の隙間から、一匹の小さな水色のスライムが恐る恐るこちらを伺っていた。その魔物は恐怖に震えていたが、フロスティーヌがオーラを和らげると、震えを止めた。ゆっくりと、その弾力のある体で近づいてき、フロスティーヌの爪先に触れた。

フロスティーヌの唇に小さな微笑が浮かんだ。

「ねえ、怖がらなくていいのよ」

フロスティーヌは優しく声をかけた。

スライムは嬉しそうに揺れると、ぴょんと跳ねてフロスティーヌのふくらはぎにしがみついた。温かくて、少し粘り気がある。フロスティーヌは小さく笑った。この世界に来て、初めての笑い声だった。

「可愛いわね。あなたのことは『ピップ』って呼ぶわ」

ピップは新しい名前をもらい、満足げに身体を揺らした。石壁の向こう側には、膨大なマナと魔物が溢れる禁忌の地、《永遠の森》が広がっているのをフロスティーヌは感じていた。彼女はピップを持ち上げ、肩に乗せた。ピップは居心地よさそうにそこに収まった。

「世界は私をラスボスと呼ぶかもしれない。けれど、私は別の計画があるの」

フロスティーヌは、ゆっくりと開き始めた石の扉へと歩み出した。

涼しい風が頬をなでる。外には、水晶の鍾乳石が輝く巨大な空洞が広がっていた。新世界の太陽の光が隙間から差し込み、空気中でキラキラと反射している。フロスティーヌは外へ踏み出し、山の斜面の下に広がる《永遠の森》を見渡した。巨大な大樹たちが、静寂の中で待ち構えるようにそびえ立っている。

「何が待ち受けているかは分からない。でも、一緒に行きましょう、ピップ」

フロスティーヌは山を下り始めた。

新世界での最初の一日が、今、始まったのだ。


作者として、この物語の世界観や登場人物を少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。 これからもゆっくり更新を続けていこうと思っています。 もし気に入っていただけたら、フォローや応援をしていただけると嬉しいです。 また、登場人物のビジュアルをご覧になりたい方は、 Twitter(X): ascalonfire までお越しください。

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